DEAD ENDのギタリスト、Youさんが今年春にリリースしたソロ第3作がすこぶる素晴らしい。
Youさんのソロライブ(3月10日と6月23日)の短い雑感を含め、以下にご紹介したい。
Maniac Love Station
1. Romantic Brain
2. 妖しい夜
3. Bionic Zone
4. 魔王からの招待
5. Crash Man
6. Type B
7. Kiss Kiss
8. Hard Tension
9. Blue Voices
10. Puzzle
11. Dream World
これまでも「~投票日記」などで書いているように、Youさんのギター・スタイルは唯一無二である。
優美で柔らかいトーン、滑らかなフレージング、幽玄にして妖しい(でもキャッチーな)メロディ、奇矯で複雑精緻なリフ、決して失われることのない「ロックらしい」エッジの立ったサウンド、そのすべてが世界最高レベルであり、世界的に認知されるべき国内アーティストのひとりだと確信する。
(ARCH ENEMYのマイケル・アモットは2年ほど前に「発見」したようだ。流石である。)
作品の世界や物語にそった情念や感情を表現するというよりは、前回ブログのスティーヴ・ハケットがそうであったようにどちらかと言うと情景描写的なギターであるように感じている。(もちろん、それはDEAD ENDが表現する世界観に拠るのだが。)
聴いていて心地いいだけでなく、何らかの光景が、それも曖昧模糊とした幽冥境とでも言うほかない彼岸の世界が眼前に迫ってくるかのようなギターソロを、おもにDEAD END(とくに「再臨」後)で弾いているYouさんなのだが、自身のソロでは「ほとんど同じだけど、ほんの少し(でも決定的に)違う」ギターとなっている。
では、何が違う(とわたしをして思わしめる)のだろうか?
まずはYouさんの誕生日である3月10日(日)に行われたソロ公演のセットリストと、
先日のソロ・ツアー最終日6月23日(日)のセットリストを見てみよう。
You at Live Freak on 10th Mar
SET LIST
01. You’s Alien
02. The Thing
03. Bionic Zone (新曲)
04. Romantic Brain (新曲)
05. Ero Erotic
06. PSY-CHO
07. LOVE 9
08. Crush Man (新曲)
09. 妖しい夜 (新曲)
10. Type B (新曲)
11. Kiss Kiss (新曲)
12. Hard Tension (新曲)
13. Dream World (新曲)
Encore
14. 彼女が逆流
15. Pazzle (新曲)
16. 魔王からの招待 (新曲)
Encore2
17. The Thing
(3、4、8~13、15、16が新作からの曲。残りは2ndより。)
You at La.mama on 23rd Jun
SET LIST
01. You's Alien
02. Romantic Brain
03. The Thing
04. Bionic Zone
05. (新曲)
06. Ero Erotic
07. Love 9
08. Crush Man
09. (新曲)
10. Kiss Kiss
11. Hard Tension
12. (新曲)
13. 妖しい夜
14. Type B
15. Pazzle
16. (新曲)
17. Dream World
Encore
18. 彼女が逆流
19. Blue Voices
20. 魔王からの招待
Encore 2
21. The Thing
(5、9、12、16の新曲は詳細不明。タイトルはすべてメモしたけど、一応ふせておく。)
3月のライブは1曲以外すべて、去る日曜のライブは全曲と、ほとんど新作の曲だ。
ライブのメンバーは、3月がベースにIkuoさんドラムに淳士さんのBULL ZEICHEN 88コンビ、
6月のツアーがベースに同じくIkuoさんドラムにshujiさん(Janne Da Arc)のアルバム録音コンビ。
(念のためにつけ加えておくと、淳士さんは元?SIAM SHADEのドラマーである。)
ライブは両日ともに長丁場で、3月は2時間半、6月は3時間だった。
(いずれもゆるい爆笑トークがトータルで30分前後)
Ikuoさんの縦横無尽なベースには心底驚かされた。音作りはビリー・シーン(MR.BIG, NIACIN, THE WINERY DOGS)に近い印象で、小指まですべて使うフィンガー・ピッキングもやはりビリー的なのだけど、ありとあらゆる技巧を網羅しているかの如き卓越した演奏に度肝を抜かれた次第。まだ若いのに、すでに世界トップクラスの技術を持った末恐ろしい存在だ。
ドラムのふたりは好対照だったかもしれない。
ヒッティングが強くアクションが華やかで、いかにもロックなドラミングの淳士さんと、
地味ながらも的確でスティックさばきがシャープなドラミングのshujiさん、といった具合に。
どちらも非常にテクニカルで、変拍子を多用する曲が大勢を占めるなか見事に立ち回っていた。
(が、ふたりともトークでは「事故寸前」のギリギリな演奏だったと言っていた。余程難しいのだろう。)
リズム隊が盤石なので、Youさんはのびのびとギターを歌わせていた。そのために技巧を買って選ばれたリズム隊なのだ、とも言える。メロディをギターが奏でるとどうしても音が薄くなってしまうところを、Ikuoさんのベースがリズムとメロディの隙間を埋めあわせ、ドラムがすべての基底を支える。トリオ編成のため、そのアンサンブルの妙を堪能するに最適だった。
(そう言えば、ラママは28年ぶりの出演だったらしい。DEAD ENDでデビュー前に出演したのだそうな。)
さて、Youさんのギターだ。
DEAD ENDにおける鬼気迫るギターとは違い、ソロで聴かれるギターはとにかく心地よい。
ギター・インストものは大雑把に言うと「スポーツ・ニュースのBGMでよく使われるような」爽やかでキャッチーなアップテンポの曲や、ムーディでスローな曲、フォーク調のアコースティカルな曲、典雅でクラシカルな曲、民族音楽的な曲などに大別できるが、実はそれほど多くのヴァリエーションはない。その分、各ギタリストの個性(サウンド、フレーズ、アレンジ)にすべてがかかっており、その才能が剥き出しになるという点において、これほど怖い表現活動もないかもしれない。
Youさんのソロは、前作『You's Alien』(2005)がインストものの総覧と言えるヴァリエーションがあったのに対し、本作『Maniac Love Station』はよりロックに特化した、よりアグレッシヴな音像が楽しめる内容となっている。作風が前作以上にDEAD ENDに近く(バンドの曲をアレンジした曲も収録されている)、そしてそれ故に却ってその差異が際立ったように思うのだ。
ややもすると誤解されるかもしれないが、緊張感の質(キャラクター)が違うのである。
DEAD ENDは楽曲以前にその背後/その内奥の世界との緊張関係がある。そこで表現されるはその世界観であって、ギターは欠くべからざる重要な要素であっても部分に留まる。その緊張は楽曲のヴィジョンに由来する。(どことなく「狂気」への道を孕んでいるように感じている。)
一方、ソロは純粋にギターが奏でるメロディこそが主眼であり、内部の緊張は楽曲に奉仕するためのそれで、楽曲の要請次第で伸縮自在なのだ。だから、心地よく聴くことができる。
ギター・インストものは多々あれど、Youさんのソロ作はその完成形を提示したロック・ギタリストに迫るどころか、ほとんど凌駕さえしていると思う。とくに、本作はロックに特化したため一本筋が通っており、ハードロックやメタルを聴くリスナーにとってはジョー・サトリアーニやスティーヴ・ヴァイといった超一流どころを聴くのと同等かそれ以上の喜びを見出すのではないか。
残念ながら公式な音源や映像がないのでビデオ等を貼ることができない。
ぜひとも実際にCDを手に入れて、その耳でこの心地よい緊張を楽しんでもらいたい。
(未聴の場合は、DEAD ENDも聴いていただきたい。年代順か、遡って聴くのを薦める。)
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