2014-10-25

月街のアリス



先日、Twitterの読書用アカウントにこの画像が流れてきた。
「まるの・るうにい」という名の画家による、パステル画だそうだ。



見覚えのある画風で、すぐにピンときた。本棚から稲垣足穂の『彗星問答』を取り出し、装画のクレジットを確認すると予想通り、そこには「まりの・るうにい」とあった。リンク先を確認すると、恵比寿のギャラリーで個展を開くという。それも、約40年ぶりとのこと。また、ギャラリーの個展にしては例外的なことに、作品は販売しないとも。

あらためて検索してみるともうひとつ、気になるものを見つけた。会場となるギャラリーの隣では別に、写真展をやっているという。沢渡朔、「少女アリス」という単語にハッとさせられた。「あの」伝説的な写真集、『少女アリス』になにか動きがあるのかとこれまたリンク先を辿ると、どうやら初版で使用されなかった写真を元に、新たな『少女アリス』が刊行されることを知ったのだった。


このふたつの個展を知ったのはある早朝だったのだけど、すぐさま月明かりに照らされたタルホの小説世界と、やはり日の光ではない明かりに満たされたアリスの世界を思い浮かべた。絵画と写真、タルホとキャロル、少年と少女、模型と人形、鉱物と植物、ヒコーキとボートといった数々の「対」と、両者に通底する論理・夢想・イノセンスといった共通項もまた、即座に思われた。

これはおもしろいに違いないと会場へ行くタイミングをはかっていたのだけど、先日、その機会が訪れた。両個展の感想は、Twitterに短いものを、Facebookに少し長いものをあげていたのだけど、当然のことながら不十分なスケッチにすぎない。後者を元に、加筆した。


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沢渡朔「少女アリス」展(Fmにて)



沢渡朔「少女アリス」展を観てきました。会場はFm(エフマイナー)という新しいギャラリー。

アリスはもちろんルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』から。今回のギャラリー展示は、沢渡氏の同名写真集の復刊ならぬ「新刊」にあわせて開催されたものです。

「旧作とはすべて写真を差し替えた写真集」というのも、めずらしいですね。この沢渡氏の『少女アリス』は伝説的な写真集で、写真史だけでなく広く文化史的(文学・少女論・サブカル等々)にも有名な作品です。わたしは学生時代に、たぶん澁澤龍彦か高橋康也の文章で知ったのでしょう、その名は覚えていました。


簡素な会場に、おそらく正方形の写真が―あれは40枚くらいだったでしょうか―展示されていました。ひとめ見てだれもが「かわいい」「きれい」「お人形さんみたい」「天使のよう」と口にするであろう、絵に描いたような美少女がアリス役をつとめているのですが、その彼女が写真の中で見せている屈託のなさと、写真群全体を覆い尽くす得体のしれない憂愁や蔭りとのアンバランスさもあって、どこか見る者に不安や畏れを感じさせるものとして、この写真たちは眼前に迫ってくるのでした。

会場には刊行予定の見本版が置いてあって、その帯に「ダーク・アリス」なる言葉がありました。たしかに、「ダーク」と呼びたくなるような昏さ(くらさ)、陰鬱さ、妖しさ、沈んだ色調、スタイリッシュなセンスが横溢しています。

そんな「ダーク・アリス」を、以前に見たことがありました。いずれも映画で、ルイ・マルの『ブラック・ムーン』(1975)と、ヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』(1988)です。でも、このアリスは1973年の発表。彼らに先駆けて、こうした「ダーク・アリス」が造形されていたことにまずは驚かされました。

もっとも、写真の分野では先人がいたのかもしれません。とくに、後期ヴィクトリア朝に流行した妖精写真や心霊写真など、それこそ英国の、それもキャロルが生きた時代相にこそ本源は求められるのでしょう。

翻って、この「少女アリス」はまさに往時の『不思議の国のアリス』を、またその精髄を見事に捉えているのだと言えます。それと同時に、写真である限り、これは1973年に写されたものたちのドキュメントでもあります。こうした時代の遠近が壊されることもまた、不安や畏れの底流をなしていたのかもしれません。


でも、わたしたち鑑賞者の不安をいちばんかきたてるのは、アリスのヌード写真に他なりません。おそらく児童ポルノがらみの議論も出てくる(か、もう出ている)でしょう。ただ、この「アリス」はそんな低俗な目線を遥か彼方に吹き飛ばすような「表現」だということは、上述した通りの完成度が雄弁に物語っています。

そして、こう思ったのです。わたしたちが感じる「不安」は、少女のヌードという現代社会の規範からの逸脱を意識したがゆえの後ろめたさに起因するのではなく、もっと精妙で曖昧で壊れやすいものへの原初的な「おそれ」の感情なのではないか、と。古来より、こどもと老人は成人よりも「死」に近い存在でした。また、当然そこには性の意識も働いていることでしょう。性もまた、死との連関が強いフェイズです。

まだ性的存在ではないこどもが、そのようなものとしてふるまうかのように見えてしまう。性の境界線を撹乱することが、そこに死の相貌を与える。

おそらく、この写真集に満ちている英国的憂愁は、かの地の幽霊譚のエコーを伴いつつ幽冥境の淡いを描く、死神の残り香なのでしょう。峻厳な死が少女の笑顔と裸に反撃を喰らい、誤って天使や妖精を招いてしまったところに漏れた溜息のような…。

「そもそも、美とは不安や畏れをともなうものではなかったか?」

そんなことを思いながら、美しくも蔭りのあるイメージの数々を眺めていたのでした。

とくに印象的だったのが、2メートルをかるく超える大男と少女の写真で、「夢」のような非現実感(いや、現実喪失感、でしょうか?)に打たれました。こうした大男には「フランケンシュタインの怪物」を連想せざるを得ないわけですが、もっとそれ以前に、この組み合わせには何か「魔」的で「魔法」のような雰囲気を強烈に醸す「なにか」があるのだろう、と思ったのでした。
(これが大女と少年だったら、このような詩情は生まれないでしょう)




ちなみにこの子、LED ZEPPELIN『聖なる館』ジャケットの少女でもあるそうです。同作の少年は弟だとか。70年代に活躍した、英国のプロフェッショナルな子供モデルだったそうです。
(ソースはこのブログ 大元は海外のこの記事




まりの・るうにい「月街星物園」展(LIBRAIRIE6にて)



まりの・るうにい「月街星物園」展を観てきました。
会場はLIBRAIRIE6という画廊。同時にシス書店という古本屋兼アンティーク・ショップでもあります。
上述した通り、「少女アリス」展の隣、廊下の奥にあります。とても品のいいところでした。


稲垣足穂の著作を、なにかひとつでも読んだことがおありでしょうか。

大正昭和のモダニズムを、コズミックでシュールレアリスティックなコント(短篇)で切り取ってみせた、日本文学史の特異点的存在。宮沢賢治と同時代人で、その透明で奇妙なお伽噺めいた小説世界には、お互いに通底する「なにか」があるにもかかわらず、賢治とは比較にならないほどマイナーな作家。

大きさと小ささ、遠さと近さ、広さと狭さが同時に共存するという逆説的で神話的な時空を書いたこのふたりの作品には、宇宙を思わせる根源的なノスタルジーがあります。

賢治が「自然・農村・人間(動物)」を書いたとするなら、タルホは「人工・都市・モノ」を書いた、と言っていいでしょう。前者は湿り気をおびた柔らかさがあるのに対して、後者には乾いた硬質さが認められますし、東北の森と貿易都市という、対極的な生活環境の違いもまた、つとに語られています。それでもなお、両者はとても似ている。だからこそ、ぜんぜん違う。

ただ、ダダイズム演劇の書割じみた強烈なデフォルメ、哲学や科学や仏教思想を縦横無尽に横断する博識、飛躍と脱線と諧謔に満ちた論理展開といったケレンの強いタルホの方がマイナーに甘んじてしまったのは、けだし当然と言うべきでしょう。


そんなタルホの作品世界にぴったりの装画を手掛けていたのが、まりの・るうにい氏だったわけです。
画集でも見たことがなく、そもそもタルホの本以外では絵を見たこともなく、だいたいその本自体が古書店でたまに見かける程度とあって、今回、ようやく「出会う」ことができたのでした。
(ちなみに、「千夜千冊」で有名な松岡正剛氏の奥さまなのだとか。今回、経歴を調べていて初めて知りました。松岡氏のタルホ『一千一秒物語』論はこちら

月、土星、彗星、天文台、電信柱、ガス燈(街灯)、路面電車、ビルヂングが淡く揺れる、モダニズム独特の「未来の郷愁」とでも呼ぶべき感傷と、形而上学的な覚醒感のある絵の数々。

見たことがないけど懐かしい、むかしから知っていたような気がする光景。なにかに似ている、似ていないというのではなくて、記憶のエッセンスとでも呼ぶべきものが凝縮された世界。ニセモノめいたものをこれみよがしにつきつけておきながら、用が済めばそれまでとばかりにパチンと消えてしまう物語。まさにタルホの世界そのものでした。
(それと、ジョルジョ・デ・キリコの「引用」にとどまらない類似性も感じました)

色画用紙にやわらかく重ねられたパステルがなんとも優しい感触を伝えてきて、そこがまたお伽噺のようでもあるタルホのコント・ファンタスティックに似つかわしいのでした。奇想が奇想に見えない、むしろそれが当然であるかのような確信に満ちた絵は、こどもが描く絵に近いのかもしれません。(「近い」というか、「同じ」でしょう)

これほど作品世界を忠実に、それこそヴァリアントと呼べるほどの再現度で表したものは、めずらしいかもしれません。それだけタルホの「文法」の拘束力が強いのでしょうし、また、まりの氏のタルホへの理解・愛着・敬意が深いということなのでしょう。




どの絵も気に入ったのですが、残念ながらポストカードにはなっていなかった『ある夜の出来事』がとくに気に入りました。あれはタルホの名篇『星を売る店』の一場面を描いた作品だったと思います。ショーウィンドウが怪しく光るあの店にはきっと、色とりどりに輝くコンペイ糖(星)が売られているに違いない…。


それにしても、なんと月の多いこと!
日の光よりも月の影を、青空よりも星空を望んでしまう、わたしのような月光派にはたまらない世界です。
(余談ですが、本邦の異能音楽家集団MOONRIDERSはタルホ作品からバンド名を採っています)

話はやや逸れますが、タルホとやはり同時代人だった小説家、石川淳の『鷹』には、月明かりにかざすと文字が動き出す「明日語」で書かれた新聞が登場します。月とタバコ、革命と少女、運動のエネルギーを象徴的に描いた傑作なのですが、「月」を軸にタルホと交錯するし、シュルレアリスティックなところも同様だから、まりの氏に『鷹』の世界も描いてほしいなと思いました。もっとも、これは叶わぬ夢に終わるでしょうけど。


ところでこのギャラリー、古書やアンティーク的な小物(ルーペ、ナイフ、切手、サンゴ礁など)、またはアート作家による版画やオブジェも売っていて、とくに作家のものは黒い小棚の抽斗に宝物のようにひっそりと収められているものですから、なんだかとても感激してしまいました。

そうそう、ギャラリーではこんなビデオがしずかに上映されていました。



ちなみに、作曲は小林亜星です。ここにも「星」が!

このCM、まりのさんが手がけたのだとか。当然のことながら、これまた実にタルホ的ですね。
(ただ、タルホの月光世界に、はたしてこのモデルさんのような女性が出てきますかどうか…)

会場では、このCMのフィルムを使った、ちょっとしたオブジェが販売されていました。光にかざすと、とても鮮やかにこのCMの一場面が見えるのです。(欲しかったけど、高かったので断念)

こうした「小さきもの」「壊れそうなもの」への愛着が感じられるため、洒落てる場所につきものの作為めいた嫌ったらしさがなく、居心地よく作品を観ることができました。女性の店主もとても感じのいい方でした。いつかまた行きたいと思います。
(注・わたしはめったにこうゆうアート系の店を褒めません)



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ふたつの個展の感想は、ざっとこんなところだろうか。

いずれも月のリズムに支配された、静謐な個展だった。はっきりと相互作用を感じたわけではないけど、上述したような多くの「対」を超えてなお、同じトーンでささやきかけてくるような趣きがあったように思う。アリスのロンドンとタルホの月街が相互浸透するかに見えて、ギリギリのところで退けあう。タルホの世界に少女アリスはいないし、アリスの世界にタルホ贔屓のオブジェはいらない。それでも両者は月の眷属である、というような…。

だからこそ、あの月街をアリスが歩いたらどうなるか、また星物園のオブジェたちがロンドンに繰り出したらどうなるのか、そこではどんな古今東西の月光派が肩を貸してくれるだろうか…と、そんなことが気になるのだった。雨のなか帰路についたとき、アタマのなかには月が浮かんでいたかもしれない。







ところで恵比寿、やっぱり小洒落てる。未だにちょっと、苦手な街…。



2014-10-11

30年30曲



BURRN!誌が先月号の「30年30枚」企画に引きつづき、
今月号で「30年30曲」なる企画をやっています。

無茶もいいところのこの企画(もちろん、そこが面白いのですよね)、
またもわたしのまわりでやってるひとがいたので、わたしもやってみました。
ただし、完全にHM/HRに限定しました。もっと言うと、BURRN!に載ったもの、ですね。

もちろん、あまりテキトーなことのできないわたしですので、
「30年30枚」に選んだバンド/アーティストはすべて除外いたしました。
ヴォーカルやギタリストなども、かぶらないようにしました。
あと、これまでブログで取り上げたことのある曲も外しました。なんとなく。
(「30年30枚」、非メタル編はこちら。メタル編はこちらです。)


で、思いついた曲をずざーっと並べようとしたんですけど、
→せっかくだからビデオを貼ろう
→あんまりいいビデオないから他の曲にしよう
→そもそもビデオないから他のバンドにしよう
みたいな感じで書きながら変化していった結果が、以下の30曲です。

そうゆうわけで、「うは~、MVだっせぇ…」みたいな曲は外してしまいました(笑)
中には奇をてらったように思われる曲があるかもしれませんけど、いずれも大好きな曲です。

90年代の曲が多い?まあ、そうゆう世代なのでご容赦願います。
ヘヴィロック系がない?そう、KORNとかDEFTONESとかTOOLとかは、アルバム単位で聴いてるから、曲を抜き出すのがためらわれたのです。日本のバンドもない?そう、なんか中途半端にひとつふたつあるだけだったので、泣きながらバッサリ切り捨てました。デスメタル系も少ない?はい、あまりいいビデオがなかったので、ひとつまたひとつと減っていったのです。

結果的に「30年30枚」を補完するかたちになりましたけど、もちろんこれとて不十分なわけで…。
まあ、昨日今日の気分と言うことで、さらっと見てください。
よき出会いや幸福な再発見がありますように。

ちなみに、ビデオ貼りつけの方針は、公式MV→なかったら発表時に近いライブ映像にする、です。


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ANGRA "Heroes Of Sand"
from Rebirth (2001)



え?そこ?と思われるかもしれませんが、本当に『Rebirth』でいちばん好きな曲なのです。
穏やかなヴァース、力強いブリッジ、歌いあげるコーラスという劇的な展開もさることながら、
優美な悲哀に満ちたメロディがとにかく美しく感動的で、いつも泣きそうになります。
エドゥ・ファラスキの歌いっぷり、キコ・ルーレイロのギターともに申し分ない素晴らしさです。



THE BLACK CROWES "Wiser Time"
from Amorica (1994)


黒烏でいちばん好きな曲です。いや本当に。また、思い出深いMVでもあります。
ゆったりとした心地よい進行なのに、サビで緊張感が亀裂のように走るのが面白い。
また、どっぷりとサザン・テイストではなく、どこか乾いた味のあるところが黒烏印。
幸福な記憶と不可分のこの曲、いつかライブで体験したいものです…。



BLACK SABBATH "Headless Cross"
from Headless Cross (1989)



このMV見たさにビデオを買ったほど大好きな曲。(高2だったので、ビデオ買うのは大変でした)
トニー・マーティン在籍時の様式美サバスは唯一無二。峻厳にして高貴、重厚にして壮麗。
それにしても、コージー・パウエル先生のこのドラミング、すべてがかっこよすぎる…。
この時代のサバスは、一刻も早い再発が待たれます。(シャロンの仕業なのかな…)



BLACKMORE'S NIGHT "Shadow Of The Moon"
from Shadow Of The Moon (1997)


(曲本編は1:00から。ソロはオリジナルと全然違います。キャンディスはまだ素人同然ですね…)

初めてラジオでBLACKMORE'S NIGHTの曲を聴いたとき、あまりの美しさに驚嘆したものです。
アルバムは2ndがいちばん好きなのですが、当時の衝撃の大きさをとってこちらにしました。
本作を期に、アコースティックものや女性ヴォーカルものを探すようになったのでした。
ただ、いつしか「虹の障害」として語られることが増えてしまいました。実に残念です。



BON JOVI "These Days"
from These Days (1995)



"Livin' On A Prayer"で洋楽を聴きはじめたわたしですので、BJは外せません。
で、"Livin'~"は「何を今更」すぎたので、2番目に好きなこの曲にしました。
とても思い入れの強いアルバム/曲です。聴くたびに遠い目をしてしまいます。
実は、サビの歌詞がこのブログタイトルの出所なのです。「The star seems out of reach...」



BUCKCHERRY "Related"
from Buckcherry (1999)



BUCKCHERRYは1stがいちばん好きです。曲のクオリティは再結成後の方が高いけど。
この曲は、わたしがいちばん辛かったときを支えてくれた、とても大切な曲なのです。
本当に、あの頃は音楽がなかったら死んでいたと思います。(今も似たようなもんか)
初期は荒々しくて未熟なところもありますが、だからこその魅力にいまでも惹かれます。



CONCEPTION "Cardinal Sin"
from Flow (1997)


(曲は1:00あたりから始まります。音も映像も粗いけど、どうしても選びたかったのです)

は?なにそのチョイス?と思われたかもしれません。もしくはCONCEPTIONを知らないか…。
後にKAMELOTに加入して一時代を築いた、ロイ・カーンが在籍したノルウェーのバンドです。
『Flow』は「メタルが別の方向へ行く可能性」を示(そうとして失敗)した裏名盤だと思ってます。
この曲はとくにサビが鮮烈で、いつ聴いてもゾクっとします。再結成、お願いします…。



DEEP PURPLE "Sometimes I Feel Like Screaming"
from Purpendicular (1996)


(実ははじめて動画を見たのですけど、こんな弾き方をしていたとは…!)

これは問答無用の名曲ですよ。アルバムも、再評価が待たれる名作と言いたいです。
「ときどき叫びたくなるんよね」というバカみたいなタイトルからは想像もつかない、美しい曲。
スティーヴ・モーズ、一世一代の名演であります。(もちろん、これだけではありませんが)
このような成熟した叙情美は、それまでの深紫にはなかったものです。わたしは大好きです。



FAIR WARNING "Hang On"
from Fair Warning (1993)



"Angels Of Heaven"にするつもりが、百年の恋も冷めるような超絶ダサイMVだったのでやめて、
"Burning Heart"はふつうすぎるかなーと思っていたら、このビデオを発見したのでこの曲に。
いや、要するに、初期FWならどの曲でもよかった、てことです。それこそ30曲選べます(笑)
アンディ・マレツェクのギターは、もっと評価されるべきだと思いますし、これでいきましょう。



Gary Moore "Wild Frontier"
from Wild Frontier (1987)


直球ど真ん中な選曲ですね。でもまあ、これっきゃないでしょう。
あまりに直球なので他のバンドにしようかと一瞬思いましたが、ゲイリーは絶対に外せません。
郷愁を誘うメロディ、とはこのことでしょう。こころの琴線を鷲掴みにする普遍性があります。
いまとなっては、Ax公演を観ることができて本当によかったと思います。ご冥福を…。



GOTTHARD "Lift U Up"
from Lipservice (2005)



これはいちばん好きなMVのひとつですね。楽団が街を練り歩く、というプロットがまたいい。
楽しげで幸福感に満ちていて、陽気というよりは無邪気、といった印象のある、大好きな1曲。
これまた、大変な日々を支えてくれたアルバム/曲です。(「30年30枚」にも入れたかった…)
スティーヴ・リーは、王者の威厳を備えた本物のシンガーでした。安らかにお眠りください…。



GUNS N' ROSES "Better"
from Chinese Democracy (2008)

(これ、「公式」ではないはずなんですけど、好きなので貼っておきます。ラストに必見のオチあり)

え~?ガンズでそれなのぉ!?と思われるかもしれませんが、これなんですね。
もし、HMV渋谷店でこの曲がかかってなかったら、本作を買って帰ることはなかったかも。
一聴して「あ!やっぱアクセル天才じゃん!すげえ!」とねじ伏せられた、思い出の1曲です。
『Chinese Democracy』は素晴らしい楽曲ばかりが収められた作品。もっと評価されていいです。



IN FLAMES "Versus Terminus"
from Come Clarity (2006)


(初回盤に同梱されていたこの「当てぶり」DVD映像、気軽に見ることができて好きです)

は?なにそれ?意味わからない!と思われたかもしれませんが、これなんですよ。
『Come Clarity』自体、大好きなアルバムで1曲選ぶのが難しいのですけど、これでいきます。
はじめて聴いたとき、この曲のギターメロディに驚かされました。簡潔でいて効果抜群。
獣が疾駆する森林の木陰から、ふと夜空に星辰を認めたかのようなリリシズムに打たれたのでした。



IRON MAIDEN "The Longest Day"
from A Matter Of Life And Death (2006)



これは少しも迷いませんでした。メイデンでいちばん好きな曲かもしれません。
本作発表時、毎日この曲を繰り返し聴くことで勇気づけられた、という「恩」があります。
「How long on this longest day」というサビは、当時の状況とあまりにもピッタリ重なったものでした。
アルバムも名作と呼んで差し支えない出来で、もっと評価すべきだと信じて疑いません。



JUDAS PRIEST "Rock Hard Ride Free"
from Defenders Of The Faith (1984)


(遠めのショットですけど、音がとてもいいのでこれにしました)

これも迷いませんでした。もっとも、これまた直球的な選曲ではありますが。
わたしが初めて聴いたプリーストは、本作『背徳の掟』なのです。中3の冬のこと。
ブリティッシュ・ハードロックとヘヴィメタルをつなぐ、ギターハーモニーが実に素晴らしい…。
(ただ、"Jagulator"にしてもよかったかな、と思うくらい『Jagulator』も大好きです)



LOSTPROPHETS "Can't Catch Tomorrow (Good Shoes Won't Save You This Time)" 
from Liberation Transmission (2006)


ヴォーカルのイアン・ワトキンスの逮捕により解散してしまった、LOSTPROPHETS。
イアンが極悪人であることは今や明白な事実ですが、音楽は音楽です。曲に罪はありません。
これはわが最愛の曲のひとつ。もしこんな曲が高校時代にあったら、毎日踊ってたと思います。
歌詞もMVもシャレてて大好きです。アルバムもポップな傑作で、「30年30枚」候補でした。



METALLICA "Blackened"
from ...And Justice For All (1988)



"Dyers Eve"にしたかったのですけど、ちょうどいいビデオがなかったので次点のこちらに。
このアルバムは誤解されていると思いつづけて幾星霜。多くの可能性を秘めた楽曲ばかりです。
この1曲目は様々な展開を見せるのがとても面白いです。ありそうでなかなかない曲ですよ。
それにしても、ジェイムズの刻みとジェイソンのヘドバンの凄さときたら…。化け物ですね。



MR.BIG "Road To Ruin"
from Lean Into It (1991)


(曲は2:20あたりから。そこまでもおもしろいです。それにしても、みんなかっこいいなぁ…)

これまた迷いませんでした。派手な曲も好きだけど、わたしの好きなMR.BIGはこれ。
ブラック・フィーリングをうまいこと取り込んで、キャッチーかつポップに料理してるのに、
華やかなハードロックでもあるというこの絶妙な匙加減は、彼らにしかできません。
技術だけでなく、作曲能力も評価してほしいですね。もっと語られるべき点の多いバンドです。



Nuno Bettencourt (NUNO) "Swollen Princess"
from Schizophonic (1996)


(音が割れてるのですけど、これでいきましょう。スタジオライブですね。ソロも違います)

EXTREME解散後、ヌーノ・ベッテンコートがNUNO名義で発表したソロ第1作目の曲です。
これがもう大好きで、もしわたしがFrom Dusk Till Dawnの「90's Night」でDJをやるとしたら、
お金を払ってでもかけるであろう1曲です。(まあ、そんなことあるわけないのですが)
廃盤ですけど、中古盤はけっこう出回ってますのでぜひ。パワーポップの裏名盤です。



Ozzy Osbourne "Killer Of Giants"
from The Ultimate Sin (1985)


(映像の後半はジェイクのソロ。華麗でトリッキー。ステージングも超かっこいいです)

オジーはジェイク・E・リー在籍時がいちばん好きなのです。ジェイクの完璧なソロが光るこれを。
(てゆうか、オジーのアルバムは「ランディ・ローズ、およびジェイクの作品」とも見做せますよね)
オジーのうつろな歌唱が、なんとも言い難い哀れを誘います。異形/怪物の哀しみというか…。
ジェイク時代は復権されてしかるべきです。ポップすぎるとか、バカみたいなこと言わんといて!



PRAYING MANTIS "Letting Go"
from A Cry For The New World (1993)


(コリン酷い。酷すぎ。つっこみどころしかない。でも、声だけは素晴らしい…)

ヴォーカルのコリン・ピール、あらゆるアクションがダサすぎてぶっ飛ばしてやりたいところですが、
そこはトロイ兄弟がかっこいいので許すとして、素晴らしいメロディが詰まった本作からこの曲を。
あらゆる旋律が叙情的な憂いに浸されているところは、彼らの面目躍如。
哀愁のメロディと言ったら、やはり彼らが最高峰なのではないでしょうか。



SCORPIONS "Wild Child"
from Pure Instinct (1996)



ええ?蠍団でそれくる?ええ、来ますとも。後期蠍団ではこのアルバムがいちばん好きです。
これまた思い出深い一作なのですが、なかでもこの曲は彼らの美点が凝縮されています。
バグパイプの導入もとても効果的で、爽やかなメロディと力強いリフがまことに素晴らしいです。
そして何と言っても、クラウス・マイネの伸びやかで心地よい歌声。早く来日してください。



TESTAMENT "Over The Wall"
from The Legacy (1987)


TESTAMENTはこれですよ。これしかありません。いや他にもあるけど、まずはこれでしょう。
冒頭のリフからして超強烈なんですが、なんと言ってもメタル史上屈指のギターソロに尽きます。
アレックス・スコルニック、当時19歳。恐るべし、としか言いようないですね…。
ちなみに、Wackenなどのフェス中継の際、この曲が始まると必ずサーバーが落ちます(笑)



THERION "Son Of The Staves Of Time"
from Gothic Kabbalah (2007)



THERIONはこのアルバムがいちばん好きです。もっともメロディアスなので。
マッツ・レヴィンのヴォーカルをこよなく愛するわたしですので、曲はこれとなります。
当時のライブDVD『Live Gothic』も散々見ました。実に華やかなパフォーマンス。(このビデオね)
「LOUD PARK 07」で観たときは、感激したものです。(マッツ、いなかったけど…)



THUNDERHEAD "Young And Useless"
from Killing With Style (1993)



こんなにかっこいい曲はそうありませんよ。血沸き肉躍るとはこのこと。(血も肉も少ないけど)
ヘヴィでメロディアスに爆烈疾走する無頼派のTHUNDERHEAD、ライブ観たかったなぁ…。
ただ、暴走列車のようでいて整合感や構築美があるのは、やっぱりドイツのバンドなんだな、と。
(ヴォーカルのテッド・ブレットのみアメリカンというバンドなのです。念のため)


TNT "Tonight I'm Falling"
from Intuition (1989)


これぞ北欧メタル。初めて聴いたTNTはこれでした。あまりにも曲がよくて笑った覚えがあります。
「イモ臭さ」が愛でられる(?)かのジャンルにあって、この曲の完成度は突出してますよね。
透明感溢れるメロディの、なんと清らかで美しいことか。湖面に映るオーロラが目に浮かびます。
ちなみに、このビデオのライブ音源が、まさに「初めて聴いたTNT」であります。


Uli Jon Roth "Starlight"
from Prologue To The Symphonic Legends (1996)


ウリ・ジョン・ロート仙人の、発表されざる三部作(変わったんだっけ?)の序章からこの曲を。
映像のパフォーマンスは1993年なので、おそらくかなり前からある曲なのでしょうね。
スカイギターの威力もさることながら、マイケル・フレクシグの繊細な歌唱に泣かされる1曲です。
2001年の来日公演ではインストでやってましたが、堪えきれなくて泣きまくった覚えがあります。



VAN HALEN "When It's Love"
from OU812 (1988)



この曲をあげるためにブログを書いたようなもんです。それくらい思い入れのある曲。
名盤として本作があげられることはないでしょう。VHは名作以外は半端なアルバムが多いのです。
でも、曲単位だと素晴らしい曲がゴロゴロ。これはパワーバラードとはちょっと違う、異色の名曲。
わたしの大好きなマイケル・アンソニーのコーラスが最高に映える曲です。(祈・マイケル復帰…)
サミーとマイケルのいるVHのライブ…なんてのは、もう絶対に実現できないでしょうね…。ああ。



WINGER "Rainbow In The Rose"
from In The Heart Of The Young (1990)



「30年30枚」に入れなかったことを後悔しております。WINGERは今いちばん好きなバンドのひとつ。
彼らもまた誤解されてますね。LAメタルの典型などではありません。超高度な音楽家集団です。
あまりに器用すぎたのでそっち方面で目論見通り売れてしまったことが、仇となってしまったのか。
アルバムは再結成後の方が好きなんですけど、1曲だとこれ。彼らのセンスが集約された名曲。



WIG WAM "Gonna Get You Someday"
from Wig Wamania (2006)



この映像をよーく見ると、どこかにわたしが映っております。嘘です。でも、ここにいました。
これは2007年2月26日のO-East公演です。ただひたすら楽しかった覚えしかありません。
ちょうど、心身ともに谷底にいた時期だったのですが、この日を境に色々と好転したのでした。
3rd以降はなぜか疎遠になり、気がついたら解散…。残念でなりません…。



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こんな感じになりました。少し捕捉というか言い訳も。

冒頭にも書いたように、候補にしていたけどビデオがないから外した曲がたくさんあります。リストにして終わらせてもよかったし、映像なしのオーディオだけのビデオを貼ってもよかったけど、
それだともの足りないなーと思ったので、できるだけ映像を貼った次第です。


振り返ってみると、アメリカのバンドが多いですね。たまたまそうなったのですけど。
ヘヴィ系も入れとけばよかったかなーと思わないでもないですが、これはこれでよしとします。

今回も、好きな曲をアレコレ聴きなおしたり惚れなおしたりと楽しかったです。


そうだ、友人たちの30年30曲へのリンクも(勝手に)貼っておきましょう。
ko1さん以外はすべてFacebookなので、アカウントがないと見ることができませんが…。

Koutaさん レイニーさん アニキ Keiさん KKさん ko1さん Oceanさん