2013-07-05

庚寅文月水戸日記



マイスペでは前篇と後篇に分けていた「水戸日記」を、ひとつにまとめなおした。
前回、復刻したHPPの水戸公演に前後する出来事を書いただけのものである。

このような条件反射的なブログを書けていたのは、マイスペが居心地のいいところだったからだろう。何かを書けばこたえてくれるだれかが、必ずいたのだから。

さして内容のない、他愛のないブログなのだが、記録として残しておきたかったので復刻する。

なお、一部は思うところがあって削除した。


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常磐線の鈍行で水戸へ向かうべく、上野へ。
ちょっと間に合わないかな、と次の電車を調べたら、
なんと出発は一時間後。アホか、である。

そこで、本を読んで待つことに。

半年以上、ずっと本が読めなくなってしまっていたのが、
こないだ掌編「琥珀」を書いたことで(まあ、失敗作なんだけど…)
なにか変化が訪れたらしく、最近また「読みたい」気持ちが復活、
「とりあえず」入れておいた小説を、成り行き上しかたなく読むことに。

しかしこれがベストタイミングだったようで、スラスラと読んでたら、もう電車が来てた。

ちなみに、読んでたのはマイケル・オンダーチェ『ビリー・ザ・キッド全仕事』である。
日本でこれ知ってるひとは2000人もいないだろうし、
読んでるひとなんて1000人もいないんじゃないだろうか・・・。別にいいけど。


電車に乗り込む。常磐線は乗るの初めて。

本を読んだり車窓の風景を眺めたりアレコレ考えたり。

iPodではひたすらHPPを聴いてた。年代順に。


変わり映えしない町が延々とつづいていたのが、
しばらくすると田んぼや森・林などの緑が多くなってきて、
いま自分が田舎を通過していることが妙にうれしくなる。

しかし、けっこうな距離を来た気がするのに「あと一時間」かかる、
とわかると「水戸、すげえ遠いじゃねぇか…」と独りごちることに(笑)

本は、速攻で読むのが惜しいほどの傑作だったので読むのはやめ、
以後、車内の情景と車窓の風景に集中。

目の前ではギョロ目のおっさんが真っ赤な目でこちら側の風景を見ている。
優先席では中学生がペンケースを窓枠において宿題をしていて、その後就寝。

外には川、橋、土手、森、林、水田など。ごくまれにひとが横切っていく。
フェンスに手をかけて電車をじっと見ていた少年や、写真を撮っている少女がいた。

その他、ぶつぶつと考えていたら水戸に到着。のどかで、都会という感じがしない。


旅の基本は地図、なので改札ヨコの観光局で2枚くらいもらっていく。


ミルクスタンドがあり、反射的に列に加わる。ブルーベリーシェイクをいただく。
ミルクとブルーベリーをミキサーにかけただけなのに、甘い。さすが常陸牛。


今日の宿、のつもりでネット検索したマンガ喫茶を即発見。坂を歩いて古本屋へ。


奇跡のような偶然により、石川淳『文学大概』(中公文庫)を150円で発掘。
ほとんど、これだけで水戸行きが報われたと言っていい(笑)
神保町で2000円で見かけたことはあったけど、ここ6年探していたモノが目の前にあると、
これが現実に起こっているとは思えないのだから、なんというか、めんどくさい(笑)
現実なんて簡単に幻想に接続してしまうもんなのである。
ついでにベンヤミンと三好達治さえ安価で購入、もはや言うことはなし。


駅に戻る。土産物をのぞくと「かりんとう饅頭」なるものに目がとまる。
こどもが試食用の饅頭を背伸びして取っていた。仲間に入れてもらう。
食べながらまわりを歩くつもりが、あまりにうまくて引き返して買うことに(笑)
外側がパリパリしたかりんとう、内側はしっとりしたあんこ、とかなりの糖度。
でも、うまいからなんの問題もないのだ。食べながら南口へ。


だだっ広い空間が開けていて、これが本当に県庁所在地かとさえ思う(笑)


事前に調べていた洋食屋をさがしに南下すると、川岸に大きな黒い鳥が。


動物が身近にいると近寄ってしまう、という幼稚な習性を遺憾なく発揮し、近寄る。
どうやら黒鳥である。初めて見た。かなりでかい。近寄っても逃げない。
手を伸ばせば届くところまで寄っても、逃げない。大切にされているのだな、と感心。


さらに、つがいのカルガモさえやってきて、セッションでもするかのように川を滑りだす。


この鳥たちとかりんとう饅頭だけで、水戸の株が急騰したのだった(笑)
水戸といえば水戸藩で、水戸藩と言えば幕末の狂信的原理主義テロリストども、なので、
わたしのなかではずっと水戸の印象が悪かったのである。
それが、「鳥と饅頭」であっという間に氷解したのだ。他愛もないことよ。

それにしても、駅からせいぜい200メートルしか離れてないというのに、
こうして黒鳥と戯れることができるとは…。水戸、おそるべし。


時間がなくなりそうだったので、また歩き出す。
洋食屋も見つけ、ライブハウスへ直行しようと思ったら、橋でまた黒鳥を発見。
千波湖行ったら仰山いるかも、とようやく気づいて(遅すぎ)、そちらへ。

そしたらまあ、いるわいるわ鳥どもが。
黒鳥なんぞ、溜まり場でトグロ巻いてる不良どもの如き様相さえ呈しており、
水戸市民が川にいた黒鳥をサラッと無視していたのも当然であった。
こんなにフツーにいるんじゃ、ありがたみ皆無だもの。


さらに、白鳥もたくさんいたのでそちらへフラフラと向かう。


おっちゃんがエサやりをしていて、一切の屈託なく群がる鳥ども、無防備極まりない。
触れるんじゃなかろうか、と思ってポカリと叩いてみたら、ポカリと叩けて驚いた(笑)
オマエら、野生動物としてそれじゃアカンだろ…。


鳥と戯れてすっかり気を良くし、「水戸はよいところだ」とさえ呟きつつ、会場へ。
途中、意図せず藤田東湖の像にブチ当たったり、
ねこを追いかけてみたり、
雨が降ってきたので傘を買ったり、
会場前の「黄門さんおしゃべりパーク」も撮ったり、


と、少々浮かれ気味なほどであった。


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この後、ライブハウス到着後の仲間たちとのやりとりなどが書かれているのだが、省略する。


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さて、ひとりになったわたしはマックへ。
店員が小声で重い話をしていたので(苦笑)やめて、当初の予定通りマンガ喫茶へ。

そしたらコレが、タバコくせぇのなんの…。すぐやめようとしたが行き場所がないので諦める。
実は、マンガ喫茶ってほとんど初めてで勝手がわからず、しばしウロウロゴソゴソ。
タンクの水がないので「かえて」と言ったら「ない」だと。そんなんで客商売すんなよ、と呆れる。
仕方なくキャラメルティーを飲む。(おかしなチョイスではあるな…)

寝ようとしたがタバコ臭さと空調の定期的な直撃による寒波でなかなか眠れず。
でも今日は幸せだったな・・・と一日を思い出してるうちに、寝ていた。


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ここまでが「水戸日記前篇」で、以下が「後篇」となる。


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一畳のマットに寝っ転がってタバコ臭と冷房に耐え、
熟睡はできなかったもののそれなりに体力を回復。

6時間コースをフルに使い切り、入店してから5時間58分後に外へ出る。

服にしみついたタバコ臭があまりにひどくて、落ち込む。
完全分煙化を徹底するか、いっそ国家ぐるみで禁煙にしてほしい…。

なんてことを思いつつ、昨日時間がなくてパスした東照宮へ。


とくに特徴があるわけでもなく、これといった魅力はないが、
高台になっていて、下るときに商店街アーケードの屋根が見えて、
昭和じみた汚さが「こどものころたくさんあった」的感興をもたらす。


テキトーにてくてく歩きつづける。


このマッサージ怪しすぎ。

牛。畜産会館にて。こだわりのディテールが、かえってイヤである。

うす曇りだけど、とにかく暑い。

おしゃべりパークに辿りつく。Light House外観はこれ。

その対岸では父子が遊びつつ移動中。

Dさんにより伝説のラーメン屋となったのはこちら。

対岸には芸術館のシンボルタワーが。

これは間近に見ねばならない、と接近していく。かなり大きい。

広場では何やら撮影中だった。見学者2名。和やかである。暑いけど。


メインの大通りを外れると、東照宮横商店街のような古い建物が目立ちだした。
そういった「昭和残照」(と、わたしは勝手に呼んでいる)がしばしつづく。



なにやら朽ち果てた石像。もともとはライオン?溶けすぎだろ。

ガラスは割れ、布は破れ、と散々。

雷神様に寄る。

カエル・・・。


千波湖へ到着。でもそのまま進んで偕楽園へ行く。

が、正直言って期待はずれもいいとこであった。
とくに見どころはなく、兼六園とは比べるべくもない。
梅の花が満開だったらさぞ美しいのだろうが、
今の季節は梅がボトボト落ちていて、その匂いが強烈なだけ。

単に道が整備されただけの庭園で、好文亭にも入らなかった。たぶんもう来ない(笑)

これは付属?の常盤神社。


千波湖へ引き返すと、白鳥が子連れで毛繕いをしていた。


湖を、鳥と戯れつつぐるっとまわる。



対岸にいろいろあったのだけど、すべてパス。
佐藤純弥監督作の『桜田門外の変』オープンセットがあったけど、パス。
でも、映画がどうなるかは見物。佐藤監督はアクションが巧いので。
当時の狂信的なテロリズムをどう描くのだろう・・・。


やっとのことで昨日の黒鳥スポットまで辿りついた。


ぐるっと見てわかったが、昨日、川で最初に出会った黒鳥はもっとも大きいほうで、
必ずしも出会えるたぐいのお方ではなかったようである。


何キロも歩いて、首に巻いていたタオルもびしゃびしゃ。
昨日リサーチしていた洋食屋へ。

オムライスをいただく。水、久しぶりに飲んだ気がした(笑)


ゆっくりしているはずが、常磐線の時刻表を見たらまたしてもニアミスしそうだったので、
ダッシュで駅まで戻る。せっかく引っ込んだ汗が噴き出てきて不愉快。
もうちと路線ダイヤなんとかしてくれんかね、と愚痴りながらも、
南口の納豆像を撮り、さらにかりんとう饅頭も買って、駅ホームへ。間に合った。



あっ、藁納豆買い忘れた、と気づくも遅し。ミルクスタンドでも何か買うはずだった。
それでも今日の水戸散歩に概ね満足していたので、あとはボサーっとするだけ。
iPodで何も聴かず。聴く気になれない。何を聴いたらいいのかわからない。


土浦で快速に乗り換え後は、乗客が多くて耳を塞ぐためにメアリー・ブラックを聴く。
エンヤと並び称される、アイルランドの国民的シンガー。
シンフォなエンヤと逆に、アコースティックなのがメアリー。


By The Time It Gets Dark (1987)


心地よく聴いていたら、当然のごとく寝ていた。幸せなことである。



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そう、わたしはほとんどなにもせず、ただ歩いていただけで幸せを感じていたのだ。

ありがたいことである。



2 件のコメント:

  1. そうだ。
    この記事で黒鳥を初めて見たのを思い出しました!
    集合写真があったのもこの記事でしたっけ?
    (記憶違いでしたらすみません・・・)

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    1. 黒鳥、初めて見たときは本当にたまげました(笑)
      ひたすら歩いていただけだったのですけど、いい思い出です。

      集合写真は、ブログには貼ってないです。
      マイスペでタグ付けされたものをご覧になったのでしょう。

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