2011-05-07

ANZA's box at Marz on 1st May (Pt.1)

 

1日に新宿Marzにて行われた、ANZA's boxのレポートをお届けしたい。

ANZAさんのデビュー20周年(実際は21周年/去年開催予定だった)を記念してゲストを迎えつつ、
その経歴をレビューするという企画イベント/ライブで、昼夜二回公演の両方を観てきた。





わたしがAnzaさんを知ったのは、HEAD PHONES PRESIDENT(以下HPP)のヴォーカリストとしてであり、
アイドルとしてのAnzaさん、HPPと並行して活動していたミュージカル女優としてのAnzaさんは知らなかった。


アイドルに興味を持つことのないわたしが、90年代当時にアイドル大山アンザを探し当てることはまずないし、
ミュージカル映画は見るものの劇場には行かないわたしが、新進ミュージカル女優ANZAに気づくこともないから、
知らなかったこと/気づかなかったこと自体に悔しさを感じつつも、それはそれで仕方ないことと納得はした。

ただ、初めて「HPPヴォーカリストAnza」の経歴を知ったとき、不思議な思いがしたものだった。

それだけメジャーな活動をしてきた/しているひとが、どうしてHPPのような「聴く人間を選ぶ」音楽をしているのか、
そういった音楽をせずにはいられないひとが、どうしてアイドル/タレントとして活動でき(あるいはできなくなり)、
どうしてバンド活動と並行してまでもミュージカルで歌っていたのか、ピンとこなかったのだ。

もちろん、日本で「芸能」活動をすることほどストレスフルな仕事もないように察せられるし、
そこから必要となった「捌け口」がHPPやミュージカルなのだろうとわたしにも想像できたけど、
それですべて得心がいくというには程遠いほど、HPPの音楽は特異すぎた。
それゆえの「不思議な思い」だったのである。


今回、その活動を振り返るライブを観れたことで、そのような思いの大半は解消された気がする。
「必然」や「運命」というような言葉はできれば使わずに済ませたいところだが、そういったことを感じたわけだ。


それでは、以下にライブレポートをお届けする。


ちなみに、バンド表記は半角英数大文字(一部例外あり)、アルファベットの個人名は頭文字のみ大文字、
でほぼ統一しているこのブログだが、今回は「バンドのヴォーカリストとしてのAnza」とは一線を画するため、
「表現者ANZA」として、半角英数大文字表記で統一することにした。

文中で昼夜公演の記憶が入り混じったり、あえてそうすることもあるだろう。
その点、ご容赦願いたい。

また、もう二度とないイベントなので覚えていることは可能な限り書くようにした。
長くなったので前半・後半にわけてのライブレポにする。



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開場に着くと、受付にはメッセージが書かれたレモンリーフレットつきの花が飾られていた。




会場となったMarzフロアにはパイプイスが敷き詰められていて、いつもと雰囲気が違う。
指定された席は上手側の2列目、右から2番目で、イスにはお菓子とカードが。


(わたしは二回観たので、お菓子もカードもふたつなのだ)


花もカードもそうだけど、こういったあたたかみのあるやりとりには何度かお目にかかっている。
HPPとANZA、そしてそのファン双方の、敬意と感謝の念があってこその節度ある交流が、わたしにはうれしい。


定刻となった16時、ステージを覆う白い幕に「ANZA」の文字が浮かび、
シングル曲が順番に数十秒ずつ、ジャケットやPVを映し出しつつ流れ、
VITAMIN-Q featuring ANZAからも"The Queen Of Cool"のPVも流れた。

次いでミュージカル「セーラームーン」の一場面(伝説のキメ台詞つき)から、
相方だった森野文子さんのコメント(もしくは90年代当時の思い出話)へ、
ミュージカル「GIFT」の一場面から山川恵理香さんのコメント(及び赤子の泣き声)へ、
ミュージカル「AIDA」の一場面から安蘭けいさんのコメント、
そしてHPPのライブ映像(5人編成が一瞬だけ、あとは2月のクアトロ公演)と、
代表的なキャリアを振り返る映像が次々に映し出される間にバンドメンバーが定位置につく。


映像が終わると同時にTomoさん(key)がコードを鳴らすと、
ステージ後方からのライトをうけたANZAさんのシルエットが、白い幕にうつる。

天上の高いMarzだからできる演出で、4メートル近い影を見上げていると幕がゆっくりと上がっていった。

ANZAさんは白い薄手のカーディガンに白いスカート姿。カジュアルながらも舞台衣裳のようにも見えた。
(夜公演は、ピーコート風デザインの、白に近いベージュのゆったりとした上着で、やはり衣裳のよう)


1曲目は未発表曲で、どうやら正式タイトルはついていないらしい"Song 5"から始まった。

水谷美月さんのヴァイオリン、坂口勝さんのパーカッション、HPPのHiroさんのアコースティック・ギター、
という生楽器メインのアレンジで終始ライブは進められたのだけど、それゆえにワールド・ミュージック的な、
空間的な広がり、牧歌的な郷愁、記憶の古層に何かがふれるような感覚といったものを感じることが多かった。

未発表の曲とはいえ、哀感を伴ったメロディが情景を喚起する美しくも躍動感のある曲で、すぐに引き込まれた。
(ちなみに、歌詞は英語か、英単語で綴られたANZA語だった。両者の共通点/相違点は割愛)


Tomo (key), Norio YOSHIDA (b), Masaru SAKAGUCHI (perc/vo), ANZA, Hiro (g), Mizuki MIZUTANI (v/cho)


「ANZA's boxへようこそ」という挨拶につづいて、
「今日は、みなさんといっしょにタイムスリップをしてみたいと思います」

ソロになってはじめて発表したシングル曲の"Dream"(1998)は、この日はじめて聴いた。
当然のことながら90年代的なJ-Popだけど、上記のとおりワールド・ミュージック的なアレンジが施されている。


「次に《だいじょうぶだいじょうぶ…》ってやつを出しましたけど、今日はやりません(笑)」
(ええーっ、と声が上がるのをうけて)「だってもう歌えないでしょー、アレは」
「え~、もうオトナになりましたので、しっとりと歌いたいと思います」
「この曲の歌詞を書くにあたって、(共作者の)伊藤緑さんに自分の思いをぶつけたことを思い出します」


"彼方へ"(2006)は個人的に思い入れの深い曲なので感無量だった。
広い空をうつした大きな河をゆっくりと漂っていくかのようなスケール感のある曲だけど、
全編にわたって言い知れない哀しみに覆われてもいて、聴いていると焦燥感にちかい痛ましさに胸を打たれる。



同曲のカップリング曲だった"翼"がつづく。伴奏はTomoさんのピアノだけ。Hiroさんはじっと目を瞑っていた。
歌詞の重みをうけて、ANZAさんの歌にも力が入る。とくに夜公演では、ステージに跪いての熱唱となった。
曲の終わり、「I love you,loving you」のくだりは、長い舞台の終わりと錯覚するほど、
歌い手(もしくは、歌詞の中で歌われたひと)の切なさが伝わってきた。


大きな拍手に一礼をすると、「わたしのミュージカルの出発点は…アレなんですよね(笑)」と少し照れながら、
「セーラームーンのミュージカルをやることになったのは…」と当時の経緯を語りだす。

「ゲストを呼びましょう…もう、はやく出たがっててステージ裏は大変なことになってます」
「もうね、20年前とキャラがなんッにも変わってないから!岩名美紗子!」

その岩名さん、登場するや否や「セーラーマーズ参上!」とさっそくポーズをキメ、
(夜公演では「マーズがMarzに参上!」→ANZA「ああ、そうだ…!」なんてのも)
それを見たANZAさんは笑いながらも「やれやれコレだよ…」と首を横にふる、という、
おそらく当時と変わらぬコンビネーションを見せてくれたこの登場だけでその人物像が伝わったのだから恐れ入る。
(岩名さんの経歴についてはこちらを参照


さらに、夜公演では岩名さんが「アレやってよ!例のやつ!」と自らがマイク・スタンドと化し、
半ば強制的に「例のやつ」をやらせようとすると、「ええっ!ヤダヤダ、ホントに!?」とアタフタするANZAさん。
会場からもやんやの喝采をうけて、ハラをくくったのかマイク・スタンド(?)の高ささえ調整し、
20代半ば以上の日本人ならたいてい知っている「あのセリフ」をポーズつきで口にしたのだった。
(言い終わった瞬間、ステージにへたりこんでしまったけど。「まさかこの歳でやるとは…」とのこと)


「でも21周年てスゴイね~」と岩名さん。「わたしも一児の母だし」「ウチの子、もう11才よ」「もう35だもんね…」
「それ言うか!てゆうかまだ34だから!」とANZAさん。しかしフロアからの「35!」コールにいじけるのだった。

なお、ふたりの出会いはドラマ「中学生日記」の撮影時とのこと。
岩名さん、ハーフの人間を見るのが初めてなので「オオーッ!」と驚いたのだそう。
その後、「お互いこんな性格だから」(と岩名さん)すぐに仲良くなってセーラームーンにつながっていったのだとか。


かくして「美少女戦士セーラームーン」suiteが始まったわけだが、ならば主題歌から始めないわけにはいかない。曲はもちろん、もはやアニメソングでもクラシックとして殿堂入りしているであろう"ムーンライト伝説"である。

岩名さんが踊ったりステップを踏んだりしながら歌うのを見て、
顔をしかめたり笑ったりしながら歌うANZAさんではあったが、
見ているこっちは「これが本物か…」と妙に圧倒されてしまっていた。

自分が小中学校のときにやっていたアニメの主題歌を、当時本当に歌っていたひとがいま歌っている、という…。
既視感と記憶が現在進行形のステージとごっちゃになって、「超豪華なカラオケ」なる言葉が浮かんできたのだが、それにしても貴重なものが観れたもんである。
(ちなみに、ANZAさん擁するムーンリップス版の主題歌は1994年3月19日~1996年3月2日の放映)


「いや~、懐かしいね」とANZAさん。「あんたも踊りなさいよ」と岩名さん。
「あたし、踊らないから」「えぇ~っ」「みさこっち、汗すごいよ」「ここ、あっついよね?」などなど。



「次の曲は、本当はあたしとみさこっちの曲じゃないんだけど、ずっといっしょに歌いたかった曲で」
「先生にデュエット曲をお願いしてたんだけど、どんどん出演者が増えてって」
(「で、わたしさっさと死ななきゃいけなくなったのよね」と死んだふりする岩名さん)
「やっといっしょに歌えて、うれしく思います」と紹介されたのが、"I Miss You"というバラード。

夜公演は、ANZAさんにしてはめずらしく声に詰まる場面があって「長丁場で疲れたのかな?」と思ったけど、
どうやら何か胸に迫るものが込み上げてきたらしく、涙を堪えてのデュエットとなっていたようだ。

歌い終わったあと、「いや~、なんかねいろいろと思い出しちゃって…」と目頭をおさえるANZAさんに、
岩名さんも「ね、いろいろあったもんね…」と同じ思いだったもよう。


1993年8月に始まった通称「セラミュ」の主役として、
1998年2月までにANZAさんは382回もの本公演を務めている。(詳しくはウィキ参照
この他にもファン感謝イベントや、アイドル/タレントとしての活動もあったことを考えると、
「部活みたいだった」との言葉では汲み取りきれるはずもない忙しさだっただろう。
(重くなっていく衣裳のため背筋がめちゃくちゃ鍛えられた、といったとこは確かに「部活みたい」だが)


この日、多くのセラミュ時代のファンが駆けつけていたことは、公演中の手拍子でも察することができた。
彼らにとっては自明のことではあるけど「セーラームーンミュージカルには、毎回主題歌というものがありまして…」
と解説するANZAさん、「セーラームーン時代を知らないひとも来てるんだからね」と釘をさす。

わたしも「セーラームーン時代を知らない」ひとりなわけだが、当時のファンの方々はANZAさんがHPPというバンドをメインに活動してきたことを、どう受け止めてきたのだろうか。


そうこう思いを巡らしていると、主題歌メドレーが始まった。
アップテンポな"ラ・ソウルジャー""ラ・ムーン"、バラード調の"伝説生誕"が、
それぞれワンコーラスずつ歌われた。独特の手拍子に、往時のステージの華やかさを思う。
もちろん岩名さんは振りつきで踊りながら、ANZAさんも照れ笑いしつつ控えめに踊りながら、のステージだった。

長年ファンに愛されてきたことも納得できる、明るく楽しくも質の高いミュージカル曲だと思った。



「ええー、これでセラミュの曲は終わりまして…(ええーっ!?とフロアから大声)ああっ!その感じ懐かしいっ!」
「いやー、ヘッドホンのライブではこうゆうのって有り得ないから(笑)、なんかいいね」
(夜公演は昼の「ええーっ」ほど大きな声じゃなかったので、率先して言わせていましたが)


「それじゃあみさこっち、せっかく来てくれたんだから、わたしのために1曲お願いね」
とANZAさんがステージを去る。
岩名さんがステージに残り、なんだか妙な気分になったのだが曲が始まったらそんな気分はどこかに消えた。

「超光戦士シャンゼリオン」という特撮ものも、その主題歌"Over The Times"(1996)も知らなかったけど、
のびやかに歌われるメロディはとても気持ちのいいもので、すぐに気に入ってしまった。
(ドラマ自体はかなりの怪作だったようだ。90年代らしいとも言える。ウィキ参照

ギターソロはHiroさんがHPPで弾いている以上の弾きまくりで、あまりの速さに反射的に笑ってしまったほど。
それでもメロディアスな素晴らしいソロで、この日にこの場でしか聴けなかったかと思うと惜しくて仕方ない。


「いや~、今日はありがとね」「うんうん、また呼んでね」「みさこっち、ライブしなさいよ」などなど。

「今度は(セラミュ出演者の)みんなで集まって、感謝祭的なイベントしたいね」とANZAさんが言うと、
フロアからは「おおーっ!」と歓喜の声があがる。やるならわたしも観てみたい。


この後、ステージを去りがたい岩名さんと追い返したい(?)ANZAさんの小競り合いが少しあり、
岩名さんがようやく舞台袖に姿を消して、ああ疲れたとばかりに笑いながら肩を落とすANZAさん。

「…ふぅ~。あのひと変わってないでしょ?(あたしが)大変なのわかるでしょ?」などなど。


気を取り直すように深呼吸をしてから、「ええ~、次にわたしが出会いましたのは…」
とふたたびひとりになって語りだした。



つづく。

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