2013-03-27

Music 2012: Rock Scene 2012 & My Favorite 15



「MY BEST10」として10枚選んでみたものの、愛聴していた作品がたくさん漏れてしまいました。
しかも、まだまだ聴くことのできていないたくさんの作品があります。

そこで、今回は10選に漏れた「自分が聴いて気に入った」作品だけでなく、
「試聴したけど持ってない」ものや「聴いてないけど評判がいい」ものも、備忘録代わりに紹介します。
紹介するというか、名前だけさっと出すということです。解説できる数ではないですから(笑)

「自分が気に入った」作品については、いくつかジャケ写つきでピックアップしましょう。
そのほとんどは「10選に入れたかった」作品たちで、クオリティ的に劣ると判断したのではありません。
前回の10選で今後とも不動なのは上位4組くらいで、残りは今回のものと交換可能とお考えください。
それだけ、2012年はいい作品がたくさんあったということです。

もの凄い数の名前を出しますが、どのアーティストも一度はどこかで耳にしています。

広い範囲に渡って聴くこと、聴こうとすることを誇るわけでも推奨するわけでもありません。
「自分が好きになりそうなもの」へ向けてアンテナを張っていたら、こうなっただけのことです。

それでは、デビューした世代やジャンルなどに分けて、ざっと紹介していきます。
(ちょっと画面がうるさくなりそうなので、映像はリンクを張ることにします。)



Solo Artist

まずは、ソロ活動をしている方々から。

2012年は「元THE BEATLES」という極めつけの大御所ふたり、ポール・マッカートニーリンゴ・スターがアルバムを出したのを皮切りに、レナード・コーエン、ロバータ・フラック、ドクター・ジョン、ボニー・レイット、パティ・スミス、イアン・ハンター、ドナルド・フェイゲン、リック・スプリングフィールド、ブライアン・イーノ、スコット・ウォーカー、EAGLESのジョー・ウォルシュグレン・フライ、ライ・クーダー、ポール・ウェラー、マーク・ノップラー、トレヴァー・ラビン、ミック・ハックネル、マーク・ラネガン、そしてニール・ヤングボブ・ディランと、こうして書いているだけで平伏したくなるようなレジェンド級のソロイストが次々と新作をリリースしました。
(とても解説しきれないのですが、ほぼ全員超有名アーティストです。知らなかったら調べてね。)

悲しいことに、ジョン・ロードのコンチェルト作は遺作となってしまいましたね…。
そうだ、ジャニス・ジョプリンの発掘ライブ盤も出たのでした。なんて忙しい年…。

ちなみに、上記の方々のなかではロバータとグレンとミックがカバー作でした。ボニーも半分はカバー。
いずれにせよ、未だにオリジナル作を発表する創作力があるのだから凄いです。
しかも、その多くは後続を寄せつけないものが多数あり…。いやはや恐ろしい。
(怖ろしいと言えば、スコット・ウォーカーの新作。怪作の極北とでも言うか…。)

90年代の歌姫、アラニス・モリセットフィオナ・アップルの新作が近い時期に出たのも面白かったですね。
ノラ・ジョーンズラナ・デル・レイテイラー・スウィフトの新作も話題となりました。
リサ・ローブもいきなり新作をリリースして驚きましたね。

00年代組の出世頭、ジャック・ホワイトの新作も評価が高かったですね。(声が苦手で未聴…)
新世紀のアイドル(?)、アダム・ランバートもその人気を定着させた感があります。(渋公完売だし…)
ポップ界期待の星、ブルーノ・マーズは年末に2ndをリリースしましたが、早くも安定感抜群です。
あ、スマパンのジェイムズ・イハや、ひとりQUEEN?ミーカも新作を出しましたね。

では、わたしのお気に入り3枚をご紹介。

Psychedelic Pill (Neil Young & Crazy Horse)

ニール・ヤング御大の、35thかな?(多くてわからない…。)
本作の前には伝統歌のカバー作『Americana』もリリース。
で、これは2枚組。冒頭の曲は27分半。他に17分16分の曲も。
その上、このタイトル…。直球すぎる(笑)
「ちょっと!あんた!飛ばしすぎ!」とでも言いたくなりますな。
本作はゆったりとした大陸的な拡がりのあるロック作です。
21世紀に入ってからベスト作では?「沁みる」ロックです…。


Banga (Patti Smith)

パンク界のゴッド・マザー、パティ・スミスの11thです。
(前作をカバー作としてオミットするなら、10th)
もっとも、パティが「パンク」(それも、プロトタイプの)だったのは3rdまで。個人的には、「女性版ジョン・レノン」みたいなひとだと思ってます。
9th『Trampin'』(2004)の緊張感がやわらぎ、慈愛と力強さに満ちた作品となりました。"Fuji-San"なんて曲もあります。
1月の来日公演も素晴らしかったです。(ブログを書くかも…。)


Blues Feneral (Mark Lanegan Band)

元SCREAMING TREESの隠れ酔いどれ詩人、
マーク・ラネガンの7thです。
名義はバンドとなってますが、実態は20人くらいゲストが参加したものなので、ここは「楽団」とでも訳すべきでしょうか。トム・ウェイツのようなしゃがれた歌声を聴かせる渋い作品ながら、ゴスやデジタリーな感触のあるアレンジが秀逸で、とても面白いブルーズ解釈だと思います。レーベルはあの4ADです。国内盤は増田勇一さんの解説つきなので、そちらを推奨。(わたしのは輸入盤…)



Guitarist

同じソロでも、ギタリストという枠はまた違うかなと思い、別枠にしました。
基本的に、ギタリストがソロで聴かせる曲は「スポーツ・ニュースのBGMになりそうな」キャッチーなものです。
別にそれが悪いと言ってるのではなく、そうした曲を創れる領域に達するのがいかに大変なのか、
あのヌーノ・ベッテンコートすら「僕には無理」と言っていることからも窺えます。(謙遜でしょうけど…)
ですので、わたしはこうしたソロ作を出せるギタリストを全面的に信用し、かつ尊敬しています。
(それだけに、スティーヴ・ヴァイは違うなと感銘を受けてベスト4に選出したわけです。)

さて、2012年にソロ作を出した優良ギタリストたちは以下の通り。(非インスト作を含みます)
ニール・ザザ、ジョー・ボナマッサ、キコ・ルーレイロ、松本孝弘、サンタナ、ジョン5、ジョン・フルシアンテ、フィリップ・セイス、パット・メセニー、リー・リトナー、リッチー・サンボラ、ポール・ギルバート、ジョン・マクラフリン、ニール・ショーン、白井良明、春畑道哉などです。

4人(4作)だけ名前を出しておきましょう。(と言うか、上記のものは買ってないので…。)

元NEVERMOREのジェフ・ルーミスは、一部の曲にゲスト・ヴォーカルを呼んだのが意外でしたが、後はいつも通り。超絶技巧による攻撃的かつメロディアスな作品で、リフもエキサイティング。流石でした。

若き天才ジョン・メイヤーはレイドバックした歌ものアコースティック作。落ち着いた佳作です。

知る人ぞ知るジェシー・クックは国内盤がリリースされたことがないため、日本ではほぼ無名ですが、クラシック・ギターでルンバやタンゴなどを弾くカナダのギタリストです。新作『The Blue Guitar Sessions』はクラシカルでやや地味でしたけど、味わい深い作品でした。

元EDWIN DARE、現COSMOSQUADのジェフ・コールマンは急逝したゲイリー・ムーアに新作を捧げ、タイトルを『Silence In The Corridor』としていました。ハードロック出身ながらジャズ方面でも活躍できる技巧派ですが、コールマンの美点は技巧以上にセンスですね。もっと人気があっていいと思うのだけど、国内盤も出ないし、地味すぎるのか…。


Rock / Punk / Alternative

ここでは古参、パンク、オルタナ以降、現代のメインストリームなどのバンドを扱います。
大雑把に、「非ハードロック・非メタル」と言ってもいいでしょう(笑)

レジェンド級バンドで驚いたのは、THE BEACH BOYSが新作を出し、ツアーも行ったことですね。
アルバムの評価も高く、70歳目前の「ボーイズ」とは思えないコーラスの美しさに驚嘆しました。

ジャック・ブルースが新バンドSPECTRUM ROADを結成したり、
MEAT LOAFLITTLE FEATLYNYRD SKYNYRDZZ TOPといった大御所が「いつも通りの」作品を出したり、総じて「みんな元気」との印象でした。
(紆余曲折あったことは承知してますけど、結果論的に、ということです。)

旧「ニューウェイヴ」界隈では、ミック・カーンの遺作となったDALIS CARをはじめ、
THE CULTDEAD CAN DANCEのリリースの他、(後者には驚かされました…。)
ようやくDURAN DURANの2011年作国内盤が出てホッとしました。

90年代組ではROXETTEが復活しましたね。(国内盤は見送りですか…)
PET SHOP BOYS、GARBAGE、Spiritualized、DINOSAUR JR.、SMASHING PUMPKINSは順当な出来。
CRANBERRIESは地味すぎたかも。BEN FOLDS FIVEの再結成作もよかったです。
そういや、ROCKET JUICE & THE MOONなる「スーパー・バンド」も結成されましたね。

その他、大きいとこではFEEDER、KEANE、MAROON 5、HOOBASTANKあたりも出してました。
インディーズ系ではOF MONTREAL、BAND OF HORSES、CALEXICO、あとSLEIGH BELLSか。

ポスト・ロック系では、SIGUR ROSGODSPEED YOU! BLACK EMPERORという大物が新作を出しました。とくに、後者の復活は突然で驚かされました。

パンクではPUBLiC iMAGE LTD、REDD KROSS、BAD BRAINS、NOFX、KILLING JOKE、PENNYWISEとか。でも、ここではやはりTHE OFFSPRINGGREEN DAY、とくに3部作を矢継ぎ早にリリースしたGREEN DAYが「ダントツ1位」という感じがします。と言うか、すでに彼らは「パンク・ロック・バンドの人気者」という枠を超えて、「王道アメリカン・ロックの代表選手」みたいになってますよね。大きくなったなぁ…。

あまり多くを聴いてない枠なので、紹介するのは一枚だけにします。

Anastasis (DEAD CAN DANCE)

ブレンダン・ペリーとリサ・ジェラルドによるユニット、
DEAD CAN DANCEの8th。
いつの時代とも知れぬ、悠久の時を感じさせる異郷-異境-異教の音を耳にすると、まるで古代の地中海世界を旅しているかのような幻視に包まれる。セイレーンの如き美しくも妖しい声が朗々と響き渡る異界の情緒に一度でも魅入られたら最後、「あちら側」へと連れ去られてしまう。
彼岸に。




Hard Rock / Heavy Metal

ああ、ここはやりやすいです(笑)
ずざざーっと名前を挙げていきましょう。ここでは王道・正統派の範疇に入るHR/HMを。

まずは大物から。
なんと言ってもVAN HALEN、KISS、AEROSMITHの3巨頭のリリースは大きかったですよね。
しかも、どの作品も大方の予想を覆して出来がよかった、というのが素晴らしいです。

ヴィニー・ムーアが加入してから安定しているUFOは、少々物足りなかったかな。
ASIAも再結成後順当に「求められているもの」を提供してますが、ややテンション下がり気味か。
EUROPEは、ようやく新路線が離陸したというか、受け入れられたという感がありました。
DOKKENは聴くのが怖くて聴いてないんですけど、「けっこういい」との声多数。
国内盤が見送られたMANOWARは…いったいどうしちゃったんでしょうか?冴えない曲ばかり…。

スティーヴ・ハリススラッシュも、ソロ作というより「バンド」のアルバムを作ったのが面白い。
きっと、バンドとして制作する方がはるかに自然なんでしょうね。純然たるソロも期待したいけど。
ソロと言えば、もはや孤高の存在と化しつつあるデヴィン・タウンゼンド。00年代は来日すらありませんでした。このまま日本から遠ざかってしまうのでしょうか…。

ベテラン勢ではACCEPTでしょう。BURRN!誌でもアルバム1位を獲得してました。
ついでにドイツ勢を挙げると、PRIMAL FEAR、RAGE、UNISONIC、GRAVE DIGGERなど。
GOTTHARDはライブも観ました。スティーヴ・リーの急逝という困難を乗り越え、バンド活動の継続を選択した彼ら。スティーヴ在籍時とは違った味が出てくるといいな、と思ってます。

スピード・メタル、パワー・メタル系では、Luca Turilli's RHAPSODY、SONATA ARCTICA、DRAGONFORCEあたりが目玉だったのでしょうか。(聴いてない…。)あ、新生KAMELOTがありましたね。新ヴォーカルのトミーが前任のロイ・カーン流歌唱法を引き継いでいたため、まったく違和感なしでした。

メロディアス系は、クリス・ウーズィーラナ・レーンのアルバムで新年が始まった覚えがあります。
とりあえずソロ的なところから始めましょうか。ティム・クリステンセンが自身のバンドを引き連れてロック然とした作品をリリースしたのも印象的でしたね。最近HAREM SCAREMの再結成が発表されたハリー・ヘスも、あの声を聴くことができてうれしかったです。ジェフ・スコット・ソートジミ・ジェイミソンのソロは「プロジェクト」的な感触が拭えないけど、さすがにあの衰えることなき美声で歌われるとぐうの音も出ません。アンドレ・マトス"氷雨"を歌ってましたね…。

バンドだと、新生H.E.A.T、DYNAZTY、LILLIAN AXE、HARDLINE、TRIXTER、TYKETTO、WIG WAM、ECLIPSE、TEN、PRIDE OF LIONS、LAST AUTUMN'S DREAMとか。総じてレベルが高いのですが、いずれも決定打に欠くというか、過去作を超えきれていない気がします。ライブを観ることができたら、印象も違うのでしょうけどね。

プログレ系だと、CIRCUS MAXIMUSPERIPHERYでしょうね。(なぜか未購入……。)
シンフォニック系はNIGHTWISHTHE MURDER OF MY SWEETが力作を発表しました。
残念ながら、前者はヴォーカル交代劇がありました。EPICAも評判よかったけど、未聴…。

ロックンロール系は、アンディ・マッコイ先輩のGREASE HELMET、ニッケ・ロイヤル先輩のIMPERIAL STATE ELECTRIC、ホーキンス兄弟のTHE DARKNESSあたり。THE DATSUNSTHE 69 EYESも出しましたね。古ロック系出身者による女性ヴォーカルを擁したSPIDERSなんてゆう変種の新登場が、とても興味深かったです。

わたしのお気に入りを3枚ほど。

El Dorado Hotel (Lana Lane)

シンフォニック・プログレ・ハードの旗手、ラナ・レーンの9thです。
わたしは本作が彼女の最高傑作だと思います。
メロディの質、アレンジの妙ともにとてもレベルが高く、それでいて過去に陥りがちだった過剰な「力み」による暑苦しさのようなものがなく、とても聴きやすいのです。
プログレ的な奥行きのある音作りも気持ち良くて、ラナのしっとりとした歌唱の映える曲も多く、聴きごたえ十分です。ハードロック的なものを求めるのでないのなら、気に入ることでしょう。

Pop War (IMPERIAL STATE ELECTRIC)

ニッケ・ロイヤル率いるIMPERIAL STATE ELECTRICの2nd。
1stは実質的には「ニッケのソロ」作でしたが、ちゃんとバンドを組んで制作された本作は、溌剌とした勢いのあるポップでメロディアスなロックンロールの快作となりました。哀愁をたっぷりと含んだメロディが素晴らしく、それがどこか60年代のファッショナブルな映画を思わせてお洒落です。もちろん、ロケンローな快活さにも溢れてます。
トータル32分。国内盤はカバーEPも収録。足しても51分。この潔さ。
ライブもまことに最高でした。ビバ!電撃帝国!

Unisonic (UNISONIC)

マイケル・キスクの帰還。デニス・ワード主導のプロジェクトにカイ・ハンセンが加わり、バンドとなったUNISONICのデビュー作。
何がうれしいって、「キスクがとてもいい曲を歌っている」ことに尽きます。所謂「キーパー・サウンド」的なパワー・メタルではなく、どちらかと言うとメロディアス・ハード的な音像であることに不満を抱く古いファンもいるようですが、わたしは素晴らしいと思います。透明感のあるメロディを、キスクが伸びやかでマイルドな声を活かして存分に歌う…。ライブでもその歌唱力は健在でした。
ボーナスの"The Morning Aftar"が最高な、国内盤推奨です。



Extreme Metal (Thrash/Death/Black/Doom/Gothic/Grindcore, etc.)

ここではメタルの「激しいやつ」、スラッシュ・メタル、デス・メタル、ブラック・メタルなどを。

わたしはそれほど頻繁にここら辺の激しいメタルを聴いているわけではないと思うのですが、
まあそれでも一般のメタル系リスナーよりは聴いているでしょうね。(どっちやねんな。)

この手のバンドには近年、腹の底から感心させられることが多いです。
と言うのは、そのほとんどが佳作・秀作で、傑作も少なくはない。質が高いんですね。

その理由としては、
①ジャンル的枠組みが狭いがゆえに、「期待されていること」が明確。
②経歴の長いバンドが多く、様々な実験を経ているためアレンジの幅が広い。
③筋金入りのライブ・バンドが多く、その一体感・統一感が作品に反映されやすい。
といったことが考えられます。

では、ザクザクと名前を挙げていきますが、わたしはこの手のマニアではないので、
そのほとんどは国内盤の出ている、「この筋の」メジャーどころです。数も少なめ。あしからず。

スラッシュ系では、OVERKILL、KREATOR、TESTAMENT、TANKARD、MEKONG DELTA、DESTRUCTION、PARADOXなど、粒揃いでした。ベテラン勢強し!
ベスト10にしたVEKTORもスラッシュ・メタルでしたね。若手という点も考慮して、期待値と驚きを加味して10位とした次第です。注目すべき他の若手はMUNICIPAL WATSE、WARBRINGER、そして日本のTYRANT OF MARYあたりでしょう。

デス系(含むメロディック系)では、MESHUGGAH、ELVEITIE、CANNIBAL CORPSE、BARREN EARTH、NILE、DYING FETUS、MORS PRINCIPIUM ESTなど。いずれも秀作でした。
CRYPTOPSYは前作の変な?印象を払拭する会心作でしたね。

ブラック系では、NAGLFAR、IHSAHN、THE WRETCHED END、CRADLE OF FILTHなど。
驚いたのはENSLAVEDの国内盤リリース。これは快挙だったのではないでしょうか。
一方、日本のSIGHは輸入盤のみのリリースでした。この逆転現象…。

ドゥーム系(含む古ロック系)はWITCHCRAFT、GRAVEYARD、ASTRA、ORANGE GOBLIN、SAINT VITUS、GRAND MAGUSなど。「古いロックをやる若手」が増えてきました。
重鎮CANDLEMASSは解散が決定しています。最期に気合いの入った作品を仕上げてきました。

ゴシック系はPARADISE LOST、THE GATHERING、MY DYING BRIDE、KATATONIAなど。
国内盤が出なくなって久しいですね。ライブも難しい。女性ヴォーカルものなら少しは出るけど…。

グラインド・コア~ケオティック・ハードコアはNAPALM DEATH、TERRORIZER、GOATWHORE、SWANS、UNSANE、OLD MAN GLOOM、CONVERGE、PIG DESTROYERなど。
突然のVISION OF DISORDER再結成には驚きました。(国内盤はなしですか…。)
堅気になったNEUROSISも音沙汰がなかったので、まさかの新作でしたね。(国内盤は…。)

なんだかもうジャンルがわからない系(笑)はHIGH ON FIRE、GOJIRA、BARONESSあたり。

お気に入りをいくつかご紹介。順番は適当です。


Phantom Antichrist (KREATOR)

ジャーマン・スラッシュの特攻隊長、KREATORの13thです。
かつての一時的なゴシック路線とは違った意味において、もっともメロディアスな作品となりました。要するに、ふつうに叙情的なメロディを大きく取り入れたのです。
初期のブチキレ路線支持派の古いファンには「否」なのかもしれませんが、わたしは断然「賛」です。このドラマティックなロマンティシズムはメタルならでは。欧州の深い(歴史的な)闇を垣間見ることになるでしょう…。


Dark Roots Of Earth (TESTAMENT)

ベイエリア・スラッシュの猛者、TESTAMENTの10thです。
「スラッシュ四天王以上のスラッシュ・メタル・バンド」と支持されている古参バンドのひとつだけあって、理想的なスラッシュ・メタルを聴かせてくれます。パワー、アグレッション、リフ、スピード、いずれも過不足ないです。もはや「これぞ現代の正統派メタル」と言えるかもしれません。(個人的には、もっと冒険してくれても構わないのですが…。)
ネイティヴ・アメリカンを正面から扱ったこの曲も、彼らならではでした。

Eremita (IHSAHN)

元EMPERORの頭脳、イーサーンのソロともプロジェクト的なバンド?とも言える、IHSAHNの4thです。(やっぱソロかな…。)
ブラック・メタルの完成形を提示したEMPERORの解散以後、イーサーンはプログレッシヴにしてアヴァンギャルドな、真に実験的なメタルの探究に乗り出しました。本作もまた、ブラック・メタルにとどまらない(しかし、その暴虐性と猥雑さは残したまま)前衛的にして格調の高い、構築美に貫かれたエクストリーム・メタルとなっています。
イーサーンという男、やはり「賢帝」に違いありません…。

L'Enfant Sauvage (GOJIRA)

フランス産エクストリーム・メタルという突然変異、GOJIRAの5th。
熾烈なリフと渦巻くグルーヴが超強烈なのに、なぜかとても静的な冷たさを感じます。怜悧な知性の賜物であると同時に、野性のプリミティヴな激情を殺すことなく封じ込めている、という印象も。90年代後半の異常に激しかったNEUROSISが、より尖鋭的なメタルをやっているような…。
おそらく、メタル上級者であればあるほどこの不思議な魅力にはまるのではないでしょうか。謎めいた音楽です…。




Heavy Rock / Alternative Metal (heavy music after 90's)

グランジ、オルタナが流行した90年代以降の「ヘヴィな音楽」の呼称は、未だに決定打に欠きます。

ここ日本では、90年代当時は「モダン・ヘヴィネス」と言ったり、00年代以降は「ラウド・ロック」「ニュー・メタル」などと呼んでたりしますが、あまりパッとしませんね。
米国では総称としての「Alternative Metal」傘下に「Nu Metal」や「Rap Metal」や「Groove Metal」なんてのがありますが、ほとんど誰も使ってません(苦笑)

その上SHADOWS FALLやKILLSWITCH ENGAGE等のボストン出身バンドが「メタルコア」を成功させてからというもの、その下位ジャンルに「マスコア」「デスコア」「エモコア」などが出てきた上、エモ/スクリーモとも混淆して事態はさらにややこしくなるばかり。

一応、「ヘヴィ・メタル的な構築性・整合感とハードロック的なブルーズ解釈・歌もの感、の間」
というかなり広いグレー・ゾーンの総称として、わたしはごく単純に「ヘヴィ・ロック」と呼びます。
(もっとも、メタルコアやスクリーモは、そのままメタルコア等と呼びますが。)

いつぞやのDEFTONESのライブレポでも書いたのですけど、80年代へのカウンターという出自もあるため、「Alternative Metal」というのがいちばん理に適ってるとは思います。でも、この用語が定着することはないでしょうね。何かないかなぁ…。

そんなわけで、ここでは(HR/HMリスナーが言うところの)オルタナ勢やラウド・ロック勢、メタルコア系のバンドを扱います。

まず90年代組から。
BIOHAZARDMINISTRYがまさかの(予想通りの?)復活を果たしました。やや中途半端な編成ながら、FEAR FACTORYは新作を発表し来日公演も行いました。
この枠では最大の出世株、MARILYN MANSONも動きが活発でしたね。ラップ・メタルの申し子(というか鬼子?)KID ROCKも新作を出しました。国内盤は出ませんでしたが、英国のSKUNK ANANSIEも2009年の再結成後はコンスタントに活動しています。ゴシック畑出身ながら、見事にその枠を脱したイタリアのLACUNA COILはもう「ヘヴィ・ロック・バンド」でしょうね。
ソロではSYSTEM OF A DOWNのサージ・タンキアン『ハラキリ(切腹)』なんてびっくりするようなタイトルの作品をだしましたね。(SOADはどうなった…?)
もっとも多くの注目を集めたのが、『恋の予感』という日本語のタイトルで新作を発表したDEFTONESと、再結成後初の作品をリリースしたSOUNDGARDENですね。前者はタイトルを知って大いに脱力しましたし(笑)、後者は期待してなかったのにいい出来で喜びました。

00年代組は、ヴォーカリストが殺人容疑で逮捕(すでに釈放されました)という話題で持ち切りとなってしまった感の強いLAMB OF GODの強力な新作で2012年が始まりました。予想以上に早い段階で新作をリリースしてきたLINKIN PARK、解散が発表されたTHE MARS VOLTA、お久しぶりねのP.O.D.、新作発表の直前に看板ヴォーカルのレイシーが脱退してしまったFLYLEAFなど、残念なニュースが勝り気味だったかも…。

CREEDやNICKELBACKの成功もあって、ポスト・グランジ世代の「歌ものヘヴィ・ロック」は着実に(米国で)浸透しているようです。同時代的な文脈における「ハードロック」は、いまは彼らの音楽のことでしょう。
2012年はSHINEDOWN、HALESTORM、PAPA ROACH、HINDERあたりがアリーナ・ロックの醍醐味を伝える作品をリリースしました。一歩間違えると「ただ大味なだけ」なんですけど、そこはうまいことくぐり抜けてます。(その上手さが面白くないとも言える?)

メタルコア系では、SHADOWS FALLAS I LAY DYINGALL THAT REMAINSといったメタルコアの始祖たちから、この手の女性ヴォーカル・バンドの2トップ、IN THIS MOMENTTHE AGONIST、独自路線をゆくプログレ系のBETWEEN THE BURIED AND MECOHEED AND CAMBRIA、おバカな80年代バンド化を図るも新作でマジメになってしまった?BLESSED BY A BROKEN HEARTなど。
(みんな、バンド名が長すぎる…。)

スクリーモ系では、THE USEDLOSTPROPHETSくらいしかチェックしてないのですが、後者はいま、ヴォーカルのイアン・ワトキンスが性犯罪で逮捕・拘留されたままで、バンド活動が「風前の灯」状態です。いったいどうなってしまうのか…。

ここは2枚だけ、お気に入りをご紹介。

Koi No Yokan (DEFTONES)

ヘヴィ・ロックに官能的な美しさをもたらしたDEFTONESの7th。
なぜこのタイトルなのかはさておき、思い入れを排して虚心に聴くと、もしかしてこれは最高傑作なのではないかと思えてくるほど、そのキャリアの集大成的な傑作となっています。
ジャケも興味深く、5th『Saturday Night Wrist』(2006)と酷似した(というかまったく同じ)ロゴのフォントと配置は何を意味するのか…?
不穏な雰囲気と浮遊感ある官能性に、激情の炸裂が交差する個性的な音楽は、未だに彼らの独壇場です。

New Horizons (FLYLEAF)

ポップでキャッチーなヘヴィ・ロックを聴かせるFLYLEAFの3rdです。
看板ヴォーカリスト、レイシーは本作発表直前に脱退してしまいました。レコーディング以前は産休をとっていたのに、どうしてこんなタイミングで辞めてしまったのか…。発表後はツアーというのがわかっていなかったはずはないのに。
40分に満たない作品ながらも、躍動感のあるとても充実した内容で、レイシー独特のやや不安定な歌唱があってこその逸品となっております。




Progressive Rock

プログレッシヴ・ロック、通称「プログレ」はそもそも日本独自の用語でした。
それが海外に波及し、いまでは世界中どこでもプログレと言えばあの音楽、と通じます。

その字義通りに「先進的な、革新的な」ロックを指し示すのではなく、60年代後半から70年代にかけて登場した、ジャズやクラシックなど先行する音楽との融合を図ったり、実験的で長尺な楽曲に特徴があったりするロック、それが「プログレ」です。

面倒なので簡単にまとめると、プログレとは時間の止まった「桃源郷」なんですね。
世界中どこからでもアクセスでき、出入りの自由な、同志の尽きない閉じた世界…。

一度「プログレ」とファンに認知されたが最後、その作品はいかなる時代・地域のものであっても必ずや発見・発掘され、未来永劫探索の的となり、聴かれつづけることになります。作品の質やリスナー数の多寡は、問題とはなりません。無時間的な理想の音世界。耳を傾けさえすれば行くことのできる、絶対的な避難所。それがプログレという桃源郷なのです。
(また、この隠れ里は広大で、各方面の地方色が売りとなっています。)

そうした現代社会に背を向けた逃避的な態度への批判は、70年代からありました。
でも、何を言ったところでむだなんです。だって、「あるべき状態」としての傑作群のライブラリーの充実度と、リスナーのリテラシーが、おそらく全音楽ジャンルのなかでも最高位にあるからです。一度、桃源郷へ行ったが最後、戻ってこれないひとが続出するのもむべなるかな。(高校時代の友人は「あちら側」へ行ったきり…。)

長々と書きましたが、わたしは「戻ってきた」側のリスナーです。桃源郷は確かに心地いいけど、刺激が足りませんからね。たま~に訪れて、かの地の白桃をいただくというのがちょうどいいように思います。

そんな未熟な中級プログレッシャーのわたしなので、チェックしてあるのは限られます。

大物ではオランダのFOCUS、そして超大御所YESのクリス・スクワイアと元GENESISのスティーヴ・ハケットの両御大が組んだSQUACKETTが新作を出しました。スティーヴ・ハケット師匠はソロでGENESIS時代の2枚組セルフ・カバー作も。JETHRO TULLのイアン・アンダーソン翁は、かの名作『Thick As A Brick』(1972)の続篇をソロ作として発表しました。(そろそろ来日しますね。)

英国のMARILLION、カナダのSAGA、オーストラリアのSEBASTIAN HARDIE、スウェーデンのTHE FLOWER KINGS、アメリカのニール・モーズ(元SPOCK'S BEARD)、初のコンセプト作を発表したIT BITES、そして未だに字義通りの「プログレ」であるVAN DER GRAAF GENERATOR(ヴォーカルのピーター・ハミルはソロ作も)と、かなり「派手な」一年だったかもしれません。そういえば、イタリアのI POOHも再録音盤をリリースしてたはず。

また、現代プログレの旗手、PORCUPINE TREEのスティーヴン・ウィルソンが無類のプログレ・マニア、OPETHのミカエル・オーカーフェルトと組んだSTORM CORROSIONもありましたね。

それでは2枚ほどご紹介します。てゆうか、あまり買って聴いてないんですね。プログレは桃源郷なので、急いで聴く必要はないのです。

A Life Within A Day (SQUACKETT)

クリス・スクワイアとスティーヴ・ハケット、40年目の邂逅。まさかこのふたりが組むとは思わなかったSQUACKETTのデビュー作です。
「いかにもハケット」な曲でスクワイアが「あの」ベースをブリブリ弾いてたり、その逆だったりと、総じて「ただ足しただけ」かもしれません。でも、元のレベルが段違いなので、英国的な気品が麗しい作品となっています。
継続的に活動したら、足し算が掛け算に発展するかも…。


Map Of The Past (IT BITES)

ジョン・ミッチェル加入後、再始動した英国のIT BITESの5thです。
そのミッチェル主導による、初のコンセプト作となりました。
「プログレ」と言うには個性の強すぎるバンドです。様々な要素を実にセンスよくさばく手腕は驚異的とさえ言えます。
ただ、前作『The Tall Ships』(2008)があまりに好きすぎたためか、本作はいまひとつのめり込むことができませんでした。カラフルな前作、セピア色の本作、という印象です。おそらく、それがバンドの狙いそのものだったのでしょう。一次大戦の時代がコンセプトですから…。



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えらい固有名詞数になってしまいましたが、どうだったでしょうか。

おそらく、各ジャンルごとにブログを独立させるべきでは、と思われたかもしれません。
もちろん、わたしもそれは考えました。あまりに長いと読んでもらえないのではないか、と。
それに、分割した方が各項目を充実した備忘録として機能させることのできるはずだ、と。

ただ、わたしとしては、ひとりのリスナーが持ち得るキャパシティを提示してみたかったのです。
たぶん、音楽に詳しいリスナーでも、こういろいろと聴いているリスナーはあまりいない気がします。

冒頭で書いたように、なにもそれを誇りたいわけでも、推奨したいわけでもありません。むしろ、わたしはこのブログを書いていて、自分が避けている音楽やバンドが多々あることに、あらためて気づかされました。

ひとはだれしも「好み」を持っています。
それは自らを守ると同時に、外界との交流を閉ざす「壁」でもあるのです。

わたしとしては、できるだけ多くのものを好きになりたいし、その素晴らしさを堪能したい。
でも、こうしてアンテナを張り巡らせても、感受し得るのはごくわずかなんですね。
だからといって、壁の中で「お馴染み」を愛玩するだけでは、自分を貧しくしてしまう。

自分の好きになれそうなもの、それはこちらから出向いて行かなければ出会えません。
そんな自戒を込めた上での、ひろいジャンルを網羅したブログでした。

「お気に入り」はあえて15枚に絞りました。(初めは30枚でした笑)
もしかしたら「ベスト10」よりもわたしの好みが反映されてるかも。



さて、お気づきの方も多いと思いますが、このブログでは国内シーンをバッサリとカットしました。

と言うわけで、次回は国内シーンについて、書いてみたいと思います。



2013-03-24

Music 2012: MY BEST 10



「2011年ベスト」は2011年大晦日と2012年元旦にまたがって書き継ぎましたが、
未聴の作品も多々あり、次回はBURRN!の人気投票と同じ時期、年度末にやろうと思い、
この時期にまで「2012年ベスト」を遅らせることとなりました。
(「2010年ベスト」5部作は削除しちゃったんですよね…もったいないことしました。)


基本的にメタル耳のわたしなので、音楽的にはHR/HM方面がメインとなります。
また、今回は「2011年リリースだけど、国内盤が2012年に出た」ものも入れました。
さらに、ジャンルもメタルと非メタルに分けないで、順位もつけることにしました。

気に入ったものすべてを書くと長くなるので、今回は「2012年ベスト10」です。
10位から1位まで、カウントダウン形式でお届けいたします。

次点となった20枚近い作品については次回、シーンを概括しながらあらためて触れることにします。



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No.10  Outer Isolation [2011] (VEKTOR)

若手スラッシャーの突然変異、アメリカはアリゾナ出身のVEKTORの2ndです。
(元のリリースは2011年ですが、国内盤が1月に出たので選考対象としました。)

モロにVOIVODを思わせるSF的な世界観とプログレッシブな音楽性なのですが、
VEKTORはパンキッシュな攻撃性よりもブラック・メタル的な暴虐性の成分の方が濃く、
またテクニカル・メタルとしての側面があるほどにその演奏や楽曲展開は複雑で、
にもかかわらず、「キャッチーなリフの集積」としてもすんなり聴けてしまう逸品です。
もちろん、スラッシュ・メタルだから超攻撃的でファストな「やかましい」音楽であります。

いきなり10分を超える曲からアルバムが始まるのだから驚かされますが、
真に驚くべきはその多彩にして切れ味抜群なリフのクオリティの高さです。
あらためて言うまでもなく、ヘヴィ・メタルの範疇に入る音楽の肝はリフです。
そのリフで楽曲をどう組み立てるか。素材と構成、そのどちらも文句なしの出来でした。

「昨今の若手スラッシュ・メタル勢は、80年代産の古参組と違って何か物足りない。」
そう感じているわたしのような古株リスナーもたくさんいらっしゃると思いますが、
「個性的なスラッシュ・メタル」をすでにして確立してしまったこのアンファン・テリブルたちは、
そうした定型に埋もれてしまうような輩ではありません。ぜひチェックしてほしいところです。
(バンドの来歴などについては、スピリチュアル・ビーストによるバイオグラフィを。)



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No.9  The 2nd Law (MUSE)

現在、世界最高のロック・バンドとして認知されている英国のMUSE、貫録の6thです。

初期のMUSEは「RADIOHEADのフォロワー」ぐらいにしか思っていなかったのですけど、
2006年の『Black Holes And Revelations』でやっとその凄さに気づきました。
ファンの間で賛否両論の「問題作」である本作が、個人的にはいちばん好きです。

MUSEが面白いのは、QUEENのように壮麗さと大衆性をうまく接合できていることでしょう。
マシュー・ベラミーという稀代のヴォーカリストを擁していることを差っ引いて考えても、
そのメロディ・センス、演奏力、楽曲構築術、アレンジ能力、すべて世界最高水準です。

確かに、本作は突き抜けたところのない、なんだかフワフワしたところのある作品です。
終盤もクリスが歌う2曲から謎めいたタイトル曲2曲の連鎖で終わるのが興味深いものの、
それ以前の流れから得られる高揚感が薄れてしまい、なんだか中途半端な感もあります。
ただ、わたしとしてはそこが気に入りました。大仰だけど派手になりきらないところが。

アートワークや熱力学第二法則というコンセプトのためか、
真っ暗な宇宙を浮遊するイメージにとりつかれたまま、
気持よく(しかし不安を抱えつつ)聴くことができます。



鉄拳によるこのPVも素晴らしい出来で、初めて見たときは涙が止まりませんでした。
「痛み」のため剥がれ落ちる肌、「愛」の象徴としての赤子、そして繋がれる手と手…。

一人でも多くのひとに見てもらいたい映像作品です。絶対に見てください。
安い感動や薄い共感とは決定的に異なる、真に「感動的な」表現だと思います。



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No.8  シャングリラ  (MUCC)

いまや日本を代表するロック・バンドの一角を担うにまで成長した、MUCCの11thです。
(表記はMUCC/ムック、作品名もカナ/英語で悩みましたが、上記の記法にしました。)

元々は日本的情念を歌うかなり暗い「ヴィジュアル系」バンドとして出発したMUCCですが、
ロック、メタル、パンク、オルタナ、ミクスチャー、ポップ、昭和歌謡、トランスと、
あらゆるジャンルを咀嚼・吸収し、ついにそのすべてを融合させることに成功しました。

キャッチーでカラフルな「ジャンルの違う」楽曲が次から次へと挑発的に繰り出され、
そうしたジャンルの混淆を違和感なく聴かせることができるほど統一感があるという、
活動15周年を迎えたMUCCの、まさに集大成となる傑作になりました。

初めて聴いたとき、あまりの完成度の高さに度肝を抜かれました。とくにアレンジが凄い。
わたしは熱心なファンではありませんけど、とうとうここまで来たか、と感嘆しました。
日本のバンドにしかできない、日本語ロックの新たな金字塔と言っていいと思います。




ちなみに、本作は通常盤・初回限定盤・完全生産限定盤と3種類あって、
このジャケはライブ盤つきの初回限定盤です。ライブ盤もいい内容でした。
(ただ、ジャケはMUCC史上最低だな、とは思いましたが・・・。)



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No.7  Dream Demon Analyzer (DEAD END)

2009年に復活を果たしたDEAD ENDの、再臨後2作目となる6thです。
残念ながらドラムのMinato(湊雅史)が不参加で、山崎慶がサポートとして叩いています。

仮にこの作品を映画に喩えてみると、
前作『Metamorphosis』(2009)を「黙示録的ヴィジョンが展開される荘厳なモノクロ作品」とするなら、
本作はさしずめ、「逸脱者たちのビザールな饗宴を描いたカラー作品」といったところでしょうか。
(前者はカール・テオ・ドライヤー、後者はフェリーニに監督していただきたいですな。)

前作が長篇小説、本作は短篇小説(の連作)、という印象もあります。
いずれも統一感があることに変わりはないのですが、本作はより多彩なんですね。
とくに、Youさんによるギターワークが素晴らしい。変幻自在なソロは驚異的な完成度です。
Morrieのヴォーカルも妖しさが増し、Joeのベースも前作よりクリアになりました。

その分、わたしにはMinatoの不在が大きかったように感じられました。
山崎慶が「役不足」なのではなく、これはバンドというケミストリーの問題なのです。

Morrie率いるCREATURE CREATUREの新作にMinatoが参加した曲があるのですけど、
その圧倒的な個性に、Minatoの存在ないし不在の大きさを痛感した次第です。

もし、Minatoがレコーディングだけでも本作に参加していたら、まったく別の作品になったでしょう。
そして、わたしにはそれこそが「この作品の真の姿」ではないのか、と思えてならないのです…。
(もっとも、好みの音楽性ゆえにこの順位となるわけですが。)

とは言え、メロディアスで攻撃的なギター、哲学的な歌詞、妖艶なヴォーカルを堪能できる、
超個性的な逸品であることに変わりありません。気に入ったら前作もぜひ。年代順もオススメです。
(ボツにしたDEAD ENDブログ3本、今年こそ何とかしなければ…。)



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No.6  Wrecking Ball (Bruce Springsteen)

「ボス」ことブルース・スプリングスティーンの、21世紀最高傑作となった17thです。

前評判が異様に高かったので警戒していたのですが、聴き始めてすぐに納得しました。
アメリカ人でなければ作り得ない、豊かな音楽的背景と社会性に裏打ちされた傑作だったのです。

労働者階級出身として、アメリカの厳しい現実を見据えた上でのポジティヴな歌声と言葉。
いや、そこには間違いなく苛立ちや焦り、哀しみや失望のようなものも入り混じってます。
それでもなお、前向きな力が静かに湧いてくる素晴らしい楽曲の数々。
この「力」は、アルバムを通して聴くことでぜひ実感してもらいたいです。

ロックンロール、ブルーズ、ゴスペル、アイリッシュ、フォーク、カントリーといった、
強くアメリカを印象付ける音楽の坩堝であるのに、普遍的な郷愁を誘う「懐かしさ」に満ちた本作は、
同時に、彼方にそびえる山脈を仰ぎ見るかのような、自然への畏怖もまた感じさせてくれます。

ボーナス・トラックがまた充実していて、見事に本編の「エピローグ」となっています。
歌詞対訳解説を熟読しながら、何度でも向き合いたくなる作品です。



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No.5  夢見る宇宙 (BUCK-TICK)

デビュー25周年を迎えてなお、不動の5人でありつづけるBUCK-TICKの17thです。

実は、B-Tを「歌も演奏もヘタなバンド」と思ったまま、ずっと聴いてませんでした。
初めて聴いたのは小6、最後に聴いたのは中2で、いい印象がまったくなかったのです。

でも、今回は聴こうと思いました。ジャケがクリムトだったから、という理由それだけで。
(なお、通常盤は全然違うデザインで、『金魚』ジャケはDVDつき初回盤のものです。)

いや、それと「デビュー25周年」という節目も気になったのでした。
「メンバー不動のまま25年」というのが、いかに驚異的かつ称賛すべき事態であるのか、
ロックを聴き始めて18年経ったいまとなっては、その凄さが身に沁みてわかるわけです。
そんな尊敬の念もまた、本作を手に取るきっかけとなりました。

聴き始めて驚いたのは、そのサウンドがとても新鮮で、躍動感に満ちていることでした。
これは「状態のいい現役バンド」にしか封じ込めることのできない、まさに「いまの音」なのです。

しかも、キャッチーな歌メロと個性的な歌詞、ソリッドなリフとタイトなアンサンブル、絶妙なアレンジ、
そのすべてが極めてクオリティが高く、「下手くそ」という偏見を抱いていた己を恥じた次第です。

それにしても、よくもまあ25年もやっていて、こんなフレッシュなサウンドを出せるものです。
「枯れない泉」という言葉がありますけど、彼らの創作術、ケミストリーがそれですね。

経歴の長い国内バンドは、アルバムを遡るのが(経済的に)難しいですけど、
B-Tは少しずつでもいいから聴いていこうと思っています。ライブも観たいです。




いちばん気に入っているこの曲のPVを貼っておきます。
アルバム1曲目の"エリーゼのために"もリフがクールな秀曲ですよ。



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No.4  The Story Of Light (Steve Vai)

言わずと知れた「ギターの魔術師」、スティーヴ・ヴァイの8thです。
(彼のディスコグラフィはやや込み入っているので、カウントはウィキに準じました。)
前作『Real Illusions: Reflections』(2005)の続篇で、3部作を予定している連作の第2作です。

「爽やかでスポーツ・ニュースのBGMになりそうな」ギタリストのソロ作という趣きはもはや皆無で、
当代最高の芸術家による、壮大で精神的な一大コンセプト作となっています。

ヴォーカリストとしてのヴァイの歌唱力は初披露となった1996年以降、上昇する一途なのですが、
歌など一蹴してしまう雄弁を極めたギターの表現力たるや、もう言語を絶した領域に達しています。

とくに驚異的なのが"The Moon And I"におけるギターソロで、
これがライブ前のサウンドチェック音源(!!!)だとは到底信じられません…。


音を詰め込みすぎず、「間」を存分に活かしながら奏でられるこのコズミックなソロには、
ヴァイがさらに一段二段と「先」へ行ってしまったことを思い知らされました。

また、これまで避けていた(苦手としていた?)ブルージーなフィーリングも加味されました。
いよいよ、彼は「完全体」に近づきつつあるようです。この凄みを、ライブで実感できたら…。



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No.3  House Of Gold And Bones Part 1 (STONE SOUR)

コリィ・テイラーの驚くべき創作能力がついに完全開花した、STONE SOURの4thです。
「パート1」とあるように本作はコンセプト作の前篇となってます。(後篇はもうじき発売です。)

SLIPKNOT加入以前から、コリィとジムはこのヘヴィ・ロック・バンドで活動していたわけですが、
ここへきてメタル成分が大量に増強され、とくにギターはリフもソロも正統的にして現代的、
「今日の正統派メタル」像を提示したとさえ言えるほど、その内容に説得力がある傑作です。

キャッチーなメロディは曲によって強弱の振幅が激しく、
ストロングなコーラスから憂いを帯びた繊細な歌唱までバラエティに富んでいます。
しかも、「新しい革袋に入れた古い酒」的な類型とは違った、「新しさ」を感じます。

また、コリィ作による悪夢のようなSF的ストーリーもとても面白く、
(ブックレットが充実しているので、対訳のついている国内盤を薦めます。)
ヴォーカリスト、ソングライター、そして作家という綜合的な表現者として、
コリィはこれからさらに巨大な才能を見せつけてくれそうで、頼もしい限りです。



ところで、古株リスナーとしては、ここにロイ・マヨルガのいるのがなんだか落ち着かないのですよね…。
(SOULFLY脱退~出戻り~また脱退、てのが未だに引っ掛かっているのです…。)



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No.2  Clockwork Angels (RUSH)

プログレという枠を超越したロック界の大御所、史上最高のトリオ・バンド、RUSHの19thです。

ニール・パート御大が妻子との死別というこれ以上ない精神的危機を脱してからというもの、
RUSHはその活動において「第二の黄金時代」を迎えているのは間違いなく、
その絶好調ぶりが創作において過不足なく反映されたのが、本作と言えましょう。

前々作『Vapor Trails』(2002)も前作『Snakes And Arrows』(2007)も秀作でしたが、
久々のコンセプト作となった本作は一分の隙もない、しかし息苦しくならない見事な出来栄えで、
彼ら独特の飛翔感と幻想性が現代的なグルーヴとうまいことマッチングし、
スチーム・パンクの世界観をスリリングに、かつ感動的に描いた傑作に仕上がりました。

大ベテランがこんな新鮮な状態を維持しているのは、並み大抵のことではありません。
40年(!!!)の長きに渡って活動しつづけ、まだこのような傑作をものすことができるのですから、
これはもう奇跡というか、畏怖に近い感情すら覚えてしまいます。

未聴の方はぜひとも国内盤を購入して、歌詞・対訳・ニール御大の解説を熟読しつつ、
不思議なアートワークに導かれながら、『時計仕掛けの天使』の世界を彷徨ってほしいものです。

本作はラストの"The Garden"がまた、途轍もなく素晴らしいのですよね…。
以下に、歌詞対訳を一分抜粋します。
ここに辿りついたときの感動は、筆舌に尽くし難いものでした。


「人生の尺度は いくばくかの愛と尊敬
いかに生きるか、人に与える贈り物

未来は記憶の中に消えていく
その間はほんの一瞬
永遠はその一瞬のうちに存在する
あとに残るのは希望だけなのだ」



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No.1  Stand In The World (HEAD PHONES PRESIDENT)

国産ヘヴィ・ロックの雄にして異端児、HEAD PHONES PRESIDENTの3rdです。

ミニ・アルバムなどの音楽的重要性を鑑みると、6thないし7thともカウントできますが、
それぞれ意味があっての作品形態なので、ここはごくふつうに3rdアルバムとすべきでしょう。

わたしが彼らのダイハードなファンだから1位としたのではありません。
純粋に「驚きの大きさ」や「聴いたときの喜び」を絶対値で測ったとしたら、
間違いなく本作が「2012年ベスト1」なのです。
それだけ驚き、そして喜びました。これは会心の傑作ではないか、と。

内から外へ、闇から光へ、ネガティヴからポジティヴへ。

その大きな変化の内実については、わたしなりに歌詞を分析しつつ、すでに書きました
ここでは、当時書きたくても書けなかったことの、そのまた断片をいくつか、晒しておきましょう。
(ところで、わたしのアマゾンのレビューが人気ないので、宜しかったら清き一票を…。)


タイトル曲となった"Stand In The World"からして顕著なのが、
壮大なSF映画の世界に入り込んだかのような、広大な「拡がり」を感じさせる点です。



これまでも、HPPは独自のスケール感を体現してはいたのですが、
それは内向きであるか、もしくは垂直的な「拡がり」といった印象で、
この曲が導いてくれるドーム状のそれとは違いました。

この印象は他の楽曲にも散見されて、とくに"Rainy Stars"において頂点を迎えます。

「SF的質感」は「メタル的」と言い換えることもできそうですが、
案外こうした「拡がり」を感じさせるものは少ないです。

屈強なグルーヴとヘヴィネス、ソリッドかつシャープなリフに固められているのに、
とてもオーガニックで「柔らかい」サウンドになっていることにも注目すべきで、
この「柔らかさ」が本作の「拡がり」に貢献していることは間違いなさそうです。


彼らの能力をもってすれば、「キャッチーでメロディアスな」作品を創ることは造作もないでしょう。

それでも、定型的な表現を注意深く避け、HPPとしての音楽的在り方を深く模索しながらも、
結果的に「キャッチーでメロディアスな」HPPらしい作品を創るに至ったことに、
長年ファンをやってきた者として、得も言われぬ感慨がありました。
文句なしの「2012年ベスト1」です。


さて、2013年もまた、HPPの新作を聴くことができそうです。(夏ごろかな…?)
わたしなりにいくつか予想ないし期待していることもあるのですが、とりあえず今回はここまで。



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うああああ、疲れた。だれか、ご褒美をください(笑)
いや、冗談です。(たぶん)


未聴の作品がありましたら、ぜひとも聴いてほしいです。

次回は、次点となった作品群をご紹介します。


2013-03-23

Goodbye



わたしはふだん、「愛」や「愛する」という言葉を絶対に使わない。

橋本治はその著作のなかで、「愛‐する、というのはおかしな動詞」であり、
「それは状態を意味するため、意志の介在する余地がない」とした上で、
「だから、わたしは《愛する》ではなく、意志のある動詞として《好き》と言う」
といった趣旨の主張をしていたのだが、これにはわたしも強く同意したものだった。

「愛」もその動詞形「愛する」も、単に「使い勝手のいい」言葉にすぎないのではないか。
その意味的な強さ・重さとは裏腹に、あまりに簡単に使えてしまう。
それ故に、弱く、軽い言葉ともなっている。

いちいち例を挙げる必要もないだろう。誰もが目に耳に(そして口に)している。
感動的だがどこか胡散臭く、しかしおいそれとは否定できない言葉。

この言葉が想起させるあらゆるシチュエーションとストーリー、その陳腐な定型への抵抗感と、
こうした言葉を臆面もなく使える人たちの、ある種の鈍感さや言行一致の強度への羨望。


それでも、この言葉を使うことでしか伝えることのできない思いを抱くときを、
この言葉を使わざるを得ない、そんな状況が到来することを、どこか待ち望んでもいたのではないか。



以下に、昨晩、わたしが某SNSに投稿したものを再掲する。

わたしは、生まれて初めて「愛する」という言葉を使った。使わざるを得なかった。
そして、ようやく知ったのだ。この言葉が、どれほどの痛みに貫かれていたのか…。



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きょうは、わたしの勤めている小学校の卒業式でした。
(もっとも、わたしは教員ではないのですが)
この6年間、ずっと見てきたこどもたち80人と別れてきました。
学校の歴史に残る、もはや伝説的と言ってもいいほど手のかかる大変なこどもたちで、入学式から卒業式まで、先生方とは違ったかたちでそうした「伝説的な」所業の数々に驚き、怒り、呆れ、悲しみ、手を焼きながらも、(ときには心身ともに病んだほどでした…)結局、わたしはあの子たちがとても好きだったのだなと、あらためて述懐しています。

もう、彼らと日々をともにすることはありません。
それはそれでかなりホッとするのですけど、(もう酷い場面を見てこころを痛めることはないわけですから…)寂しくなるなと気落ちしてもいます。
転校していった子を含めると、88人。みんな本当に個性豊かな子で、他学年のこどもたちとは「何か」が決定的に違うのでした。(これはわたしの贔屓目ではなく、先生方も同意してくれるでしょう…)
そして、これはわたしが一方的に思っているだけかもしれませんけど、わたしは彼らとの間に「絆」を感じていました。ちょうど20歳、年が離れているにも関わらず、わたしたちはどこか対等な存在として、お互いを認識していたようです。それだけ彼らはこどもらしくなく、かつわたしはこどもだった、ということなのかもしれません。
彼らにとってわたしは友だちのような存在で、またわたしにとっても彼らは友だちのような存在だったのでしょう。また、わたしがときに兄のようなおじさんであり、彼らが弟や妹のようでもある、そうゆう関係でもあったでしょう。
こんな関係をだれかと築くことは、おそらくもう二度とありません。

愛していました。こころから。
いや、いまでも愛しています。

でも、お別れです。

みんな、卒業おめでとう。

さよなら。


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「彼ら」もいつかの日か、この言葉を使うときが来るだろう。それが、善きものであることを切に願う。