2013-06-09

Music 2012: Domestic Scene & My Favorite 5



以下のブログは、本来は3月31日に投稿したものでした。

しかし、誤操作で書き足した分を消去してしまい、翌々日に再投稿したものの、
今度は嫌がらせコメントの攻撃?に会い(正確には3回でしたが…何だったのだろう)、
投稿を取り下げることにしたのでした。それで、約2ヶ月ほど干していたわけです。

その間、ブログの形式や内容など、いろいろ思い直すことがあり、
最初のものとは大きくかたちを変えたものとして再掲するに至りました。

とりあえず、中座していた「2012年のまとめ~国内編」をお届けします。


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今回は、日本国内の音楽シーンについて、書いてみます。

と言っても、基本線は前回のような、「○○や△△が新作を出した」という「2012年のまとめ」です。
しかも、音楽シーンと言ってもロック中心(それも、ヘヴィなもの)で、
ポップスやアニメソングなど、わたしが不得手とするものはほとんど扱いません。あしからず。
(ビデオは貼りませんが、代わりに別ウィンドウで開くリンクをたくさんつけときます。)


Solo Artist / Guitarist
Pop / Rock / Punk

まずはわたしが不得手としている「メジャーな」シーンからまとめてみましょう。

前回のブログ同様、ソロで活動しているミュージシャンから。だいたいリリース順に。敬称略。

わたしのメモにその名があったのは、神業ドラマー神保彰、たぶんオリジナル17th(凄い!)松田樹利亜、大貫妙子の再来?青葉市子、重鎮は衰えずカルメン・マキ、世界制覇へ第一歩きゃりーぱみゅぱみゅ、カバー作で小休憩?鬼束ちひろ、歌もの作とピアノ作を出した石橋英子、久々のライブ盤をリリース矢野顕子、その娘は愛を歌う坂本美雨、EP2枚とシングル1枚を連続リリース(アルバムは…?)森重樹一、ソロというかトリオものの坂本龍一、マイペース遵守トクマルシューゴ、久々のシングル・コレクション坂本真綾、といったとこですね。
あそうだ、VITAMIN-Q featuring ANZAのライブでバックコーラスをやっていたShantiもアルバムを2枚出してました。(ちなみにこの方はゴダイゴのドラマー、トミー・スナイダーの娘さんです。)

ギタリストは3人だけ。B'zの松本孝弘、TUBEの春畑道哉、ムーンライダーズの白井良明
松本・春畑は順当な正統派作品でしょうけど、異端児白井は何やってるのか気になります…。

バンドでは東京事変の解散に始まった年でしたね。個性・技術・曲の良さと三拍子そろったバンドがシーンのトップにいてくれたことの恩恵は、いかばかりのものだったのでしょうか。

変な言い方かもしれませんが、ポップ(大衆的)な音楽ほど売るのが難しい音楽もありません。
最終的には曲の良さと個性が勝つとはよく言われるものの、あくまでそれは結果論なんですね。
曲も良く個性も技術もセンスもあるバンドなんて、インディーズにはいくらでもいますから。

「ポップである」ことはすなわちジャンル的に細分化しづらいということでもあり、
あれこれとキャッチを張ってラベリングをしても、結局「売れるまでは無名」なのです。
つまり、たいていのひとは「売れてから聴く」のであって、それ以前はなきに等しいのです。

解散したフーバーオーバーはそこまで辿りつくことができなかったけど、決して楽曲的な質が劣るわけではありませんし(むしろ質はとても高い)、現在「上」に向かって健闘中のUNCHAINUNLIMITSも同様です。

その「上」の代表格、いきものがかりはメジャー5枚目(通算8枚目?)をリリース。若いバンドたちの希望の星として、まわりの大人たちに惑わされず活動をつづけてほしいところです。UVERworldもあっと言う間に大きくなったバンドですね。ドキュメンタリー映画の公開もしてました。(全国ロードショーしたのですよね、たしか。)

他にもOBLIVION DUST、THE BACK HORN、10-FEETあたりは順当に活動しています。変わったところでは菊地成孔率いるDCPRGがかの有名?な『アイアンマウンテン報告』に材を採った新作を発表。もはや古豪の貫録すらあるeastern youthは、ひたすらこつこつと活動中…。敬服しております。

ベテラン勢では、JUN SKY WALKER(S)の復活とTHE PRODIGAL SONSの活動休止と明暗が…。

つらつら書いてきたわりには、Shantiの『Lotus Flower』くらいしか買って聴いてないのでした。
ジャジーなポップなのでさらりと聴けます。ただ、さらりすぎるかも。もっとアクを出してもいいかと。


V-Rock

この節を「Visual Rock」にしようとしてふと、「視覚的ロック」って音楽の内容を一切表してないよねと思い、でもシーンが確立されて幾星霜、ええいままよと某フェスの呼称をいただきました。

本来ならここよりも前の節で紹介すべきビッグなバンドもいますが、まあ問題ないでしょう。

彼らは作品のセールスや媒体への露出率などは打っ棄っておいて、もっと「音楽的に」取り上げられなければならないと思っています。その出自はほぼ例外なくHR/HMであり、技術的にも非常に高い技巧を持っている方が多いです。なんと言ってもライブの本数が多く、またグッズ開発などバンドのイメージ戦略に秀で、かつその演奏だけでなく「エンターテインメント」としてのパフォーマンスを磨かなければならないという、実に何重苦とも言えそうな研鑽を重ねている、尊敬すべきミュージシャンたちなのですから。(その分、ある程度の集客やセールスは見込めるのですが、それも「そのレベル」にまで達しない限りは苦しいわけです。)

考えようによっては、もっとも現代的かつ質の高いメタル/ハードロックをやっている一群と言えるかもしれません。ただ、ヴォーカルの線の細さや粗さ、中性的な印象を受ける節回しへの拒絶反応が(とくにメタル系リスナーの間で)あることは否めません。しかし、それを補って余りある個性を放っておく手はないですし、とくにC級以下のメタル(60点以下メタルとでも言いましょうか…)を聴くよりはもっとずっと得るところの多い一大山脈だと思います。

もっとも、彼らが世間的には永遠に「色モノ」であることに変わりはないでしょう。男の化粧が、それこそ官僚や公務員でさえするのが普通にでもならない限りは。(しかしそれは御免蒙りたい。)
でも、せめて音楽界くらいは真っ当な評価をしてほしいところ。ルックスがいいからとか、最近売れてるからとか、海外でも評価されてるからとか、そうゆう外付けの理由で取り上げるのはやめてほしいですね。もっと音楽の実相に迫ってほしいものです。

では、わたしがチェックしたものだけ名前を挙げていきます。

2012年も活動が活発だったのがLUNA SEAです。シングル2枚、DVD3枚を発表。メンバーも多忙で、河村隆一はカバー作を、SUGIZOは舞台を手掛け、JINORANはソロ作を、INORANはさらにMuddy Apesを結成してアルバム発表とツアーという超多忙っぷり。(真矢?知らぬ。)

ラルクことL'Arc~en~Cielも久々にアルバムを出しました。12枚目。ニューヨーク公演は会場があのマディソン・スクエア・ガーデンでしたが、これには驚かされました。横須賀では美術展(と言うのはやや抵抗がありますが…)も行われましたね。

黒夢の清春人時はそれぞれのソロ作を同日(11月21日)にリリースしました。
まだ聴いてないのですが、人時さんのベース・インスト作はかなり面白そうです。

さて、上記3大物バンドに絶大な影響(元ネタとも言う)を与えたDEAD ENDは6thとライブDVDを、
やはり強大な霊感源でありつづけるBUCK-TICKは不動の5人のまま25周年を迎え17thをリリース。
(いずれもわたしの「Music 2012: MY BEST10」に入れましたのでご覧あれ。)

それと、「知る人ぞ知る」原初の伝説的V系バンド、Der Zibetが二部作を出していました。
気づかなかった…。これはかなり気になります。B-TやMorrieソロのファンは必聴でしょう。
(なお、ヴォーカルのIssayは土屋昌巳先生のソロに参加中。ソロは年内リリースか?)

もはや中堅というよりベテランと呼んだほうがいいかもしれないcali≠gariは11thを、Janne Da ArcのYasu率いるAcid Black Cherryはコンセプト作を、Morrie(DEAD END)+Hiro(La'cryma Christi)+人時(黒夢)らからなるCREATURE CREATUREは先行シングル2枚を出した後に3rdを発表。それぞれ独自色があっておもしろいです。また、DIR EN GREYは2008年の7th『Uroboros』のリマスター&拡張版を出しましたが、このリリースは異彩を放っていましたね。そうそう、元ラルクのSakura率いるZIGZOの復活作もありました。15周年を迎えたMUCCの11thについては、上記MY BEST10のリンクでどうぞ。

あとは力をつけてきた00年代以降の新興勢力たちですね。摩天楼オペラ、lynch.、the GazettEの新作はいずれも野心作だったと言えるのではないでしょうか?一方、順風満帆に見えていたVersaillesは活動休止に入ってしまいました。逆に、活動を再開した元DELUHIの技巧派ギタリストLeda率いるUNDIVIDEがデビュー。今風なヘヴィネスとキャッチーなとこを融合させてます。(ちなみに、Ledaさんは一時期GALNERYUSにベーシストとして在籍していました。)

さて、アルバム10選には漏れたけどご紹介したいものが一枚。こちらです。


PHANTOMS (CREATURE CREATURE)

不穏にして美しいヘヴィロック。実質的にMorrieのソロですが、メンバーの曲を採用するなど、次第にバンド色を強めてきました。が、Sakura(dr)がZIGZOへの出戻りのため外れ、3rdとなる本作ではゲスト・ドラマーが聴きどころとなっています。驚くべきは元?DEAD ENDのMinatoこと湊雅史のプレイで、ほぼ一発録りの「ドラムソロ」が驚異的。天才というか怪物です。作品としては前作のわかりやすさが一歩後退し、その分より哲学的になった深い歌詞と、ファルセットの表現幅を大きく拡げたMorrieの歌唱が堪能できます。



Hard Rock / Heavy Metal / Alternative Metal

ざっくり書くつもりが、メモがたくさんあったのでそこそこ書けそうです。
とりあえず、思いついた順に言葉を並べていきます。

国内メタル・シーンの立ち位置は、それが成立した80年代当時から現代に至るまで(鉤括弧つきカナ表記の)「ビミョー」でありつづけています。要するに、全面的に認められていないのですね。これは「日本人の日本嫌い」のヴァリエーションのひとつで、こうした傾向は社会史/社会誌的に内外から色々と議論されてきた「お馴染みの」テーマであるためここでは触れませんけど、音楽を聴くにあたり固定観念がそれを邪魔するのは、残念な限りです。

もちろん、そもそもメタル自体が世間的には「ビミョー」というか「欄外」なんですよね。なかったことにされてるというか、まあ遠巻きにしているわけです。そんなメタルの中で「ビミョー」な国内メタルの、さらに一段「ビミョー」なとこにポジショニングを強いられているのが、いわゆる「嬢メタル」勢と言えましょう。

女性をフロントに据えたバンドや、メンバー全員が女性というバンドが急増してきたのは2010年以降だったでしょうか。「嬢メタル」なる言葉は2009年ごろにはすでに使われていた覚えがありますが、「嬢メタル」と言えば国内バンドというほどに新しいバンド名を聞くようになったのは、それくらいだったと思います。

ただ、この呼称をわたしは好みません。蔑称のようなニュアンスがありますし、「ヴィジュアル系」や「アニソン」と同様、ある程度の音楽的な傾向は掴めるものの、音楽それ自体を表しているわけではないので、インチキ臭さを拭えません。とは言え、人口に膾炙した言葉としてすでに定着してきているため、これからはよりふつうに使われていくのでしょうね。

まずは、そんなバンド群からまとめましょう。

このジャンルの存立を決定づけたAldiousはヴォーカルの交代劇がありました。
メジャーデビューを果たしたLIGHT BRINGERexist†traceはそれぞれ新作を発表し、ワンマン公演を収めたライブDVDをリリースと、活動の幅を拡げました。ただ、前者はメンバー2人の脱退などいくらかの犠牲を必要としたようです。

ゴシック系とはやや異なる、LIV MOON、ANCIENT MYTH、CROSS VEINなどシンフォニックなメタルバンドが質の高い作品を(LMは2枚も!)発表してきたのは印象的でした。

ポップなところではアイドル的な?Cyntia、(いい意味で)90年代J-POP的なACTROID、メルヘン風味のPerpetual Dreamer、ガールズ・ハードロック・バンドGANGLION、Gacharic Spin+Fuki(LIGHT BRINGER)という実力派DOLL$BOXXとこれまた質は高く、 色眼鏡をかけてこの手のバンドを眺めているひとの思い込みを払拭するに充分な出来の作品が多かったように思います。

メンバー全員女性というデスメタルバンド、G∀LMETも注目度が高かったですね。

個人的に、試聴して一発で気に入ったのがこのアルバムでした。

Dolls Apartment (DOLL$BOXX)

Gacharic Spinのライブでヴォーカルのサポートをしたのを機に、LIGHT BRINGERのFukiが合流するかたちで始まったプロジェクト・バンドの第一作。曲の細部や音作りに多少の急造感は否めないし、デス声ならぬ今風な「デスボイス」などやりすぎと思える箇所もありはするけど、勢いある疾走感とポップな躍動感はとても新鮮で魅力的です。全曲PVを作るという気合い(と言う名の資金)の入れようもさることながら、それだけ曲のよさに自信を持っているということでしょう。少なくともあと2枚は作ってほしいです。



なんだかんだでチヤホヤされてもいる「嬢メタル」と比べたら、いわれのない誤解・偏見・罵倒の数々を掻い潜ってきたであろうベテラン勢の苦労たるや相当なものだったに違いありません。が、彼らは未だに現役で活動をつづけ、後続を奮起させているのだから頭が下がります。

浜田麻里は23rdを発表。(世界的に見ても女性ソロ・ヴォーカリストとしては前代未聞の作品数では?)
SHOW-YAも復活後初のアルバムをリリース。全盛時と変わらぬパワフルなハードロックでした。

日本のメタルと言えばこのバンド、LOUDNESSは25thを(この数の凄さ、もっと大きく扱われていいと思うのです。あまりに「いつも通り」新作をリリースしてくるから、だれもがマヒしているのでは?)、ANTHEMは15thを、SABER TIGERは10thを、それぞれ発表。

ヘヴィ系では重鎮UNITEDがセルフ・カバー作を出し、他にもROSEROSE、YOUTHQUAKEが新作を出しました。バイタリティというか、この世代は気合いが違います。

中堅ではSIGH、MAVERICK、BLINDMAN、ALHAMBRAなどが、やはり優れた作品を発表しています。(こうして振り返ってみると、国内バンドのレベルの高さにあらためて感服します。)

さらに新しい世代では、なんと言ってもGALNERYUSの成功が大きいですね。小野正利の加入以降は順調に多くのファンを獲得し、活動規模だけでなく作品の質も高めています。いや、元から高かったのだけど、より広範な支持を得られるような音楽性にマイナーなシフトチェンジを繰り返してきた、と言うべきですね。B!誌の人気投票にその結果が如実にあらわれていました。

玄人界隈で評価が高かったのは、スピードメタル系ではMinstreliX、BALFLARE
スラッシュ/デス系ではMANIPULATED SLAVES、Veiled in Scarlet、TYRANT OF MARY
ハードロック系ではDIABLO GRANDE、REGULUS、Crying Machineあたりですね。
そうそう、「RPGメタル」のDRAGON GUARDIANはEPとベスト盤を出しました。後者は愛聴しています。

わたしがあえてこの枠でご紹介したいのは、変種のこちら。


Cyclo (THE SLUT BANKS)

ZIGGYの戸城がすべての曲を書き、元ZI:KILLのTuskがヘンテコながらも奇妙に生々しい歌詞で歌う、ハードロック/メタル/パンク/ハードコアが一切の違和感なく入り混じったポップでキャッチーなロックンロール・バンドの復活作。しかもギターはかの横関"ジェットフィンガー"敦。なんかもうわけわからんのですが、一度聴いたらハマってしまうことうけあいの毒々しいケミカルな原色の世界。こんなバンド、海外にはどこにもいません。昭和(のヘンなところ)を知る世代はもちろんのこと、若いひとにこそこの世界を感じとってほしいです。



90年代以降、日本でも海外の「ヘヴィロック」的な音楽をやるバンドが出てきました。
ただ、日本人の好みには合わず、どれだけ質の高い音楽/パフォーマンスをしても「上」にいくことがむずかしいためか、80年代デビュー組ほど長続きはできないようです。(むしろ、この世代はそうした「オルタナ」勢への再カウンターとしての正統派組の方が目立っている気がします。)

しかし、21世紀も12年目を迎え、状況はかなり変わっています。
メタルコアやエモ/スクリーモ、サンプリングやエレクトロニカを導入したヘヴィロックなど、多くの若いバンドが「ヘヴィだけど、90年代までのメタルとは何かが違う」音楽をやるようになり、いまでは彼らのようなバンドこそが(メディア上の)主役に見えるほどです。

また、王道路線のロックでもデス声的なヴォーカルを使う例も増えてきました。ボーダーがなくなってクロスオーヴァーが常態化してきたというよりは、「目立つポイントをいくらでも取り入れる」といった風潮に見えなくもない、というのがわたしの印象です。つまり、音楽的な必然性を感じない場合が多いように思うのです。「これが今風」と見栄を張っているだけで、中身がなく内容とリンクしてもいない、というふうに。年寄りの僻目かもしれませんけども。

大雑把に、これらの00年代以降のバンドを「激ロック」系と言っていいのかもしれません。
ただ、激ロックやこの手のバンドを好むファン/オーディエンスの多くは、音楽それ自体よりもライブハウス/ロックフェスにおけるモッシュ、クラウド・サーフ、ウォール・オブ・デスなどの「体感/行為としてのライブ体験」を強調しすぎるきらいがあり、わたしのような「音楽ありき」という古いタイプの人間にとっては、そうした叙述には抵抗があることを告白しておきます。(まあ、簡単に言うと「いけ好かねえ」のです。)

そんなわけで、上述のバンド群には実のところ批判的です。しかし、それだけに個性のあるバンドには賛辞を惜しみません。世界的に「ほとんど同じことやってる」バンドだらけのなかで、いかに自らの内実を音楽的表現として屹立させるか?以下のバンドは、それができている/できかけている貴重な存在と言えましょう。

パンキッシュな歌メロとグルーヴに北欧メロディック・デスとエレクトロニカをブチこむという離れ技をやってのけたFACTは、さらにキャッチーになった新作を発表。HEAD PHONES PRESIDENTは4人編成となって初の作品となる3rdアルバムで新境地を開拓し、元SUNS OWLなどの猛者たちが結成したAWAKEDが強力なデビュー作を投下、沖縄のROACHはEP『Okinamerica』でその出自を明確にし、さらなる音楽的深化を遂げたMEANINGはハードコアとメタルをかつてないレベルで同化させることに成功しました。

また、この界隈では代表格であるfadeNEW BREEDがアルバムを、coldrainCrossfaithがEPを発表しました。仙台の若手、Fake FaceもEP発表とともに積極的な活動を展開してました。
が、狼人間集団MAN WITH A MISSIONがすべてをかっさらっていった気がします。Ozzfest参加など、今年も話題を独占しつづけています。

ベスト盤を出し、一度はキャンセルされたツアーの再準備中にPay money To my PainはヴォーカリストのKを急逝により失ってしまいました。この手のバンド群の「お手本」となっていただけに、残念でなりません。

HEAD PHONES PRESIDENTについてはすでに書いているので、ここではこの一枚を。


Blood (AWAKED)

ハードロック、メタル、ハードコアなどヘヴィ・ミュージックを総覧した精華。メンバーの前歴はあえて無視していいだろう。強力なフックを備えたリフとソロ、ブラックメタル的な暴虐性すら放つファストかつグルーヴィーなドラム、うねりまくるドライヴィンなベース、強靭極まりない歌唱を聴かせる歌心溢れるヴォーカル(フィル・アンセルモ級と断言する)と、そのすべてが強烈無比。楽曲という骨格に肉付けされたこれらの筋肉は、見せかけの美しさではなく実戦に特化したそれである。俊敏にして凶暴な獣の咆哮に、より多くのひとが気づき恐れ震えんことを願う。



Other Genre

「他のジャンル」「ジャンルその他」とは何か?
上記のジャンルに収まらないというより、「意図的にその枠外に出ている」一群と言っていいです。

具体的に言うと、残響レコードkilk recordsVirgin Babylon Recordsの3レーベルを意識しています。
簡単にまとめると、「ポスト~」なる接頭語がつくジャンルの音楽やエレクトロニカ、ミニマル・ミュージックやノイズ・ミュージックなどの現代音楽に通じることをやっているバンド/ミュージシャンを扱っているレーベルです。

バンド/ソロ/レーベルと文字通り「知的」なミュージシャンが多く、音楽だけでなく(クラシックからノイズ系など末端に至るまで、ほぼ全領域を網羅)、文学・映画・美術・現代思想への造詣が深い、ある種の知的選良たち(送り手も受け手も)によって構成されたシーンと言っていいでしょう。(わたしは基本的にここらへんの住人なのです。音楽だけはメジャー?志向ですが。)

そうした、やや上級者向けの音楽は敷居が高く感じられたり、ハイカルチャー/サブカルチャーを問わず知識教養をひけらかすスノビズムに惹かれたり反発したりと、どちらかというと隅に追いやられざるを得ないジャンルかもしれません。というのも、ポップ=大衆は過度に知的なものを拒絶しますから。

しかし、これは難解な文学でも、意味不明な映画でも、わけわからない抽象画でも、読解不可能な現代思想でもないのです。それらとリンクした内容でこそあれ、音楽は聴けばわかります。もし良さがわからなかったら、それはそうしたセンスを欠いているだけです。虚心に聴けば、以下の音楽の美しさや斬新さに打たれることでしょう。

残響は4人組となったハイスイノナサ初のフル・アルバムを、
kilkは夢中夢のハチスノイトを擁するユニットMagdalaデビュー作を、
Virgin BabylonはXINLISUPREMEシングルKASHIWA Daisuke裏ベスト
matryoshka2ndを、それぞれリリース。目を耳を見開かされること必至の音楽たちです。
(とくにXINLIには度肝抜かれました。←音量注意!)

また、国内ポスト・ロック勢のなかで抜きんでた存在であるMONOも6thをリリース。
インストバンドながら海外でも(いや、海外でこそ)評価は高く、さらなる成功が望まれます。

決してたくさんのひとに聴かれる音楽ではありませんが、だからと言って価値的に劣っているわけでも優っているわけでもありません。品質(quality)ではなく性質(character)としての「質」が違うという、ただそれだけのこと。わたし自身、毎日聴くわけではないけど、たまに聴いては鉤括弧つきの「歴史」や「芸術」について、現代思想の文脈で漠然と考えてます。

一枚を選ぶとしたら、いわゆる「歌姫」とは一線を画した歌姫を擁するこの一枚を。


Magdala (Magdala)

眠たそうな、夢そのもののような歌声。ふわふわしたオーガニックな浮遊感のなか、ときに爆ぜる火花にも似た打ち込みの音飾が耳を刺激する。
ポスト・ロック~ポスト・クラシックのどこかに居を置きながら、しかしそのどこにもいない。明晰夢のように冴えた認識と、すべてが分け隔てなく混在する無意識との合一。だが、「胡蝶の夢」のような陶然とした(幸福な?)居心地の良さよりも、そこへ入る亀裂にこそ重きが置かれているような、深遠への裂け目を感じずにいられない…。




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わたしがチェックしたものは以上です。(すべてを試聴してはいませんが、9割はしてます。)

これほど充実したシーンがすぐそばにあるのに、「日本人の音楽なんて」という日本人が後を絶たないのは残念というか馬鹿馬鹿しい限りです。そんな馬鹿どもが自らをさらに貧しくして勝手に自滅するのは一向に構わないのですけど、そのために日本の優秀なミュージシャンが生活に困るのはいただけません。音楽だけで生活できているのはほんの一握りであり、ましてロックという傘の下にいるミュージシャンはなおさらです。

これらのミュージシャンを応援するには音源を買い、ライブに足を運ぶしかないとはいえ、そこまでお金を出しつづけることも困難なわけで、より選択が重要となります。

その選択眼を磨くためにもより広い領域にわたって音楽を狩猟し、できるだけ偏見を取り除いた状態で謙虚に聴き、その感動を丁寧な言葉で綴りたいものです。


あまりにも、あまりにも敬意を欠いた言葉が多すぎますから…。




4 件のコメント:

  1. Cyclo気になります!(実はZI:KILL好きです)
    マチのレコード屋さんことタワレコにあるかしら・・・?


    今後もブログ楽しみにしてます。
    ゆっくりでいいので、また書いてくださいね♪

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    1. おお、スラットに反応されましたか。
      ZI:KILLはファンだったひと多いでしょうね。もう伝説的なバンドなのかも。
      最近、シングルをリリースしたので店頭でも買えるんじゃないかなぁ。
      去年のアルバムだし、地方でもまだ見かけることはあると思いますよ。

      ブログ、あとはアップするだけというのもたくさんあるのですけど、
      しばらくは吟味しつつ地味にアップしていきますね。

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  2. まさかのまさか、ここでフーバーオーバーの名前を聞くとは!
    岩沢正美さんは、天才的メロディーメイカーだと思ってます。
    去年の解散は残念でなりません。

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    1. いろいろチェックしております。
      とくにフーバーオーバーは、Oceanさんが好きだったのを覚えていましたから。
      去年の解散は本当に残念でした…。

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