2011-01-31

辛卯睦月遠征記

  

去年はHEAD PHONES PRESIDENT(以下HPP)のライブのため、
7月に水戸と大阪、9月に大阪と名古屋、12月に水戸へ赴きました。

年が明けて干支は辛卯(かのと う/しんぼう:西暦を60で割ってあまり31の年)となり、
HPPのワンマン・ツアーが8日から始まり、わたしも後を追って遠征開始と相成りました。


8日(土) 金沢

正月は風邪でひたすら寝ていました。
いま思うと、あんな体調でよくもまあ金沢へ行ったもんだとわれながら驚きます。

実家のある新潟市から特急北越に乗って約3時間40分で金沢へ到着。15年ぶりでした。
車内ではMAROON 5を聴きながら堀江敏幸『ゼラニウム』を読みつつ上機嫌で過ごしていました。

まだ体調は良くなかったものの、雪に埋もれた町や波立つ日本海を眺めたり、
本を読んだりツイートを見たりお茶を飲んだりお菓子を食べたりガイドブックで地図を確認したり、
といった電車旅行のいろは的な醍醐味を楽しめていた程度には、回復していました。


駅、自動改札ないんですね・・・。

これが駅。おもしろい門ですね。


とはいえ本調子からは程遠いので観光はあきらめて、駅を出てからは一直線に宿へ。
予想通りの距離だったけど、思った以上に冷えてしまい、かなり疲れてしまいました。

ぐったりしつつ先に到着していたHPP観戦組の方と連絡を取り、まだ早いのに会場へ。
そうしたら寒くて体調がさらに悪くなってきて、やることがないのでマックへ移動しているときには、
歩いてるうちに3人に置いていかれて結果30メートルは離されてしまったほど弱っていました。
どんどん先へ行くその後ろ姿を見ながら、やっぱり来ちゃいけなかったのだろうか、と思いました。
あと、歩くの遅れていること気づいてくれ、とテレパシーを必死で送っていましたけど、届かず。
置いてかれるのは寂しいけど、気づかれないほど影が薄いのだから仕方ない、と呟いてました。

やっとマックに辿りついたころにはメニューどころではなかったので、宿で寝てますと言って離脱。
さっさと宿に戻ってすぐに着替えて、しばし(2時間半くらいだったかな?)寝てました。

19時開演、なのに19時ちょっと前に宿を出て、会場へ。少し寝たおかげで体が軽くなっていました。
会場に着くと、ちょうど前座のA(c)が演奏を始めたところでした。

ドリンクのペットボトルにはHPPの写真が巻きつけてあって、おもしろい試みだと思いました。
風邪でアタマがどうかしていたようで、壮観なクーラーボックスの写真撮るの忘れてました。
われながらアホすぎます。すいません。なお、巻きつけてあったのはこれです。




すぐにコートなどを脱いで中へ。
入りはそれほど良くないけど、地方はどこもこんなものだ、ということがようやく呑みこめてきました。
ライブハウスに行く習慣のあるひとは、地方ではあまりいないようです。残念なことに。
まさかたった3000円のお金が出せないほどの不況に見舞われているわけではないはずなので。

A(c)は男女女というめずらしいスリーピースバンド。オルタナ系のロックバンドでした。
MCで「ヘッドフォンさんの暗黒オーラが…」うんぬん言っていた覚えがあります。
そんなこと言うとあとで怒られちゃうよ、と思ったのだっけ。


30分弱で演奏は終わり、長いセットチェンジを挟んで本編。ちょうど2時間くらいのライブでした。
水戸公演からさらにアレンジを変えてきて、とくにNarumiさんのベースが更に忙しくなってました。
Hiroさんの弾きまくりもとどまるところを知らず、大阪名古屋と順に音数が増えているほどです。

詳しいことはまだ述べませんが、いつものように素晴らしいライブでした。
妙な言い方かもしれませんけど、なぜか五人時代と何も変わってません。
熾烈で繊細、美麗かつ凶悪、衝動的でいながらどこか冷静で、それでも感情表現が理知を上まわる、という。


終演後、新潟土産の笹だんごをメンバーの方々、マネージャー氏、遠征組の方々に献上しました。
みなさんに喜んでいただいてうれしい限りでした。そして、次もお願い、と言われてしまいました。




23日(日) 大阪

去年の夏から数えて、人生三度目の大阪となります。

日曜、ということでかなり悩みました。月曜は8時半から仕事です。
高速バスで早朝に新宿着、そのまま仕事へ、という流れしかないので、そうしました。
移動も、お金のかかる新幹線はやめて高速バスにしました。4400円。安さには敵いません。
そこまでするか、と言われるかもしれないけど、したのだからもういいでしょう。


前日の22日(土)は13時まで仕事で、一度帰宅するのも億劫だったので、
搭乗時間の24時までヒマつぶしをいろいろしていました。

図書館で堀江敏幸(共著)『菊池伶司 版と言葉』を読んでから出て、
よく知っている少年が近くの公園をフラついていたので少し話し、
渋谷に着いてから美術展の前売り券や中古盤を買ったり、映画のビラを求めたり。
いつもだったらタワレコで試聴しまくるところだったのに、この日は気分がすぐれずやめました。

カフェ・ド・クリエで三好達治の随筆集を読んでさらに時間をつぶしてから、シアターNへ。
『極悪レミー』を見る、というのがこの強行スケジュールの前半ハイライトです。

先着順に整理番号をもらうシステムになっているので、早めに行きました。30分前。
21:00の回はフィルムがもらえることになっていたので、もらいました。




Blood Thirsty Butchersのドキュメンタリー映画の告知のあと、すぐに本編。
最低でも2000本以上は映画を見ているのでいくつか言いたいことはあるのだけど、
題材がおもしろすぎるから、文句を言わず楽しんで見ていました。

レミーをはじめ、ヘヴィ系の人間は常識的かつ知的であたたかいひとが多いことは周知の事実ですが、
一般的な「イメージ」からすると、「一般の」ひとには意外な点ばかりだったかもしれません。
まあ、コイツどうかしてる、という部分もいくらでもあるのですけど。

見終わってからパンフレットを買って、新宿へ。
途中、何か食べたかったのだけどラーメン屋もファストフード店も混んでいたので断念。
寒い中、バスを待ってやっと乗り込み、寝ました。寝つかれなかったけど。


大阪には7時半ごろに到着。夏にも利用したDELI CAFE(場所変わってた)にて朝食。

悠々と時間をつぶしてました。


寒くてどこも出歩きたくなかったので、10時半過ぎまで読書などで粘り、古書店街のあるほうへ。
こういった店は本の価値がわかっているので、おいそれといい値で発掘できることはなく、
このときも何か見つけては値段を見て断念、というものばかり。もしくは重すぎる、とか。
でも、エリザベス・シューエル『ノンセンスの領域』だけは・・・買っておけばよかったかなぁ。
一番好きな評論のひとつで、いつかちくま学芸文庫になるだろうと思ううちにもう8年経った…。


お昼を食べよう、となんばへ。
織田作之助で有名な自由軒のカレーを食べてみたかったからです。



ただコレ、出てきた瞬間にある程度は察してしまったけど、予想以上にマズイ・・・。
味がおかしいのでソースを大量に注入しましたが、あーあ失敗したと臍を噛みまくりでした。

当時(大正~昭和初期)の味そのまま、という触れこみだけど、あんなもんを喜んで食べていたの?
どこかで味が落ちたか、当時の水準が低かったのか・・・。(後者はあまり考えられないのだけど)


失敗した…、とうなだれつつ辺りをうろうろ。
フラッと入った古本屋で「ユリイカ」2002年4月号(メルヴィル特集)を300円で買って気を取り直し、
さらにフラッと入った古本屋には・・・ねこが鎮座ましましていたのでした。


何か買わなければねこに申し訳が立たぬと思い、安岡章太郎『自叙伝旅行』を500円で購入。
絶版だし、安岡の著作にハズレはないから納得して買って、おばあさんの許可を得てねこ撮影。




カレーのことは忘れたことにして、大丸心斎橋店へ。
「赤塚不二夫展」が開催されているので、観に行ったのです。

藤子不二雄両氏を幼少時から心底尊敬しているわたしにとって、
トキワ荘の盟友たる赤塚氏の原画展を観ないわけにはいきません。

大丸一階にはわたし好みのクラシック・カーが展示されていてさらにうれしくなったのですが、
会場についてあまりの人混みに愕然としました。あれでは、とても観られたもんじゃありません。



仕方なくあきらめて、かわりに図録を熟読してました。立ち読みですいません。
グッズもたくさんあったのだけど、レジも行列がひどくて買う気になれず、断念。


東京での開催を期待することにして、ライブ会場のClub Vijonの方へ。
スタバで一服したかったのだけど、四ツ橋店はえらい混みようでこちらも断念。

会場の近くに何かないかな、と歩いていたら、すぐに見つけました。
オラブリアン(スペル忘れた…oLa Briantだったっけ?)というカフェです。
落ち着いた雰囲気以上に、ソファが空いているのがよかったので即決定。
ケーキ+紅茶で650円、というのもよかった。たっぷり時間をかけて食べました。




なぜか店内では『トランスポーター3』が大きめのテレビに映されていて、
ときにちょっと、いやかなりうるさくなるのが、困ると言えば困りました。
その次は『ラスト・サムライ』でした。なんで?と呟いてしまいました。
洒落た隠れ家的な店なのに、大味な超有名映画をチョイスしているミスマッチぶりが甚だしい…。
まあ、ミニシアター系のものだったらマッチしすぎていて逆に鼻にかかったでしょうけど。
(そもそも映画いらんだろ、と思ったのだけど)

さっき買った「ユリイカ」のリチャード・パワーズへのインタビューや高山宏&巽孝之対談を精読。
そうこうしていたらHPP遠征組隊長(?)がこちらにやってきたので、しばし談笑。
おもに、裏番組の吉祥寺イベントのことやウワサのカブトメタルのことなどを話してました。


やっとこさ、目的のライブになりました。
東京や広島から参加された顔見知りの方々もいて、うれしくなりました。

Vijonは無闇やたらとステージが高く、その上モニターが邪魔で観にくい、というところ。
ほぼ最前列だから問題ないっちゃあないのですけど。でもあのモニターはないなあ~。


前座はSoundWitchでした。
わたしは2008年のADDICT XX以来ずっと観ていなかったので、これで2回目です。
当時もかなり好印象だったのですけど、今回久しぶりにライブを観て彼らは本物だと思いました。

メタルというよりはヘヴィ・ロックなんですけど、
そこにNew Wave的な音飾とゴス的な質感を持たせているところがとても希少でおもしろいです。
パフォーマンスも躍動感があってよかったし、曲もキャッチーかつダンサブル。
ただ、ヘヴィなリフと他のパートが噛み合いきれていないかな、と思う箇所もいくらかありました。
でもそこは、ほとんど前人未到といっていい領域なのでアレコレ言うのは控えねばなりません。

世界的に、いわゆる「New Wave」のバンドたちの遺産を活かしているバンドはあまりいません。
正月休みに、ミック・カーンの訃報の折に改めて気づいたのですけど、
彼らの音楽的な評価が定まっていないというか、忘れられている節があるように感じました。
実際、ほかのジャンルより廃盤が多いし、再発盤も少なく、そもそもCD化されてないものさえあります。
これから再評価されるのは間違いなく、その点SoundWitchはいいところに目をつけました。
彼らの活動がさらに拡大していくことを望みます。


そうそう、五人組の彼らのライブを観ていて、9月のHPPのライブがアタマをよぎりました。
SoundWitchもかなりアクティヴに動きますが、HPPはその比ではありません。そして、動き自体が美しい。
よくもまあこんな狭いステージで(幅もなく奥行きもない)、あんなに動き回ったもんだと思いました。
いや、むしろ「どうやって動いていたんだ?」という疑問すら浮かんだのでした。
SoundWitchも、ステージングに苦労してたように見えましたから…。


さて、やっと本編です。
この日は曲を1曲入れ替えたり、アレンジをさらに変えたり、でした。
ギターと会場の電源が相性悪かったそうで、ギターの音が出ずに"Nowhere"をやり直す、という椿事が。
Anzaさんはとっさに「こうゆうこともある」と言い、ついで「初めてだけど、ある」と付け足しました。
わたしも、こうした不運なミスを観るのは初めてでした。今後はないことを祈ります。

終演後、ほんの少しだけAnzaさんと話をする機会があったのですけど、
この日は気管支炎(!!)を押してのライブだったそうです。
風邪だとは聞いていたけど、まさかそこまで悪化していたとは・・・。
それ以前に、ライブ・パフォーマンスに何も影響がなかったことに驚きました。
ステージでは一切飲み物を口にしないだけに、余計に・・・。


バスの時間が迫っていたので、すぐに会場を出なければならず残念でした。
一夜明けて早朝の新宿に降り立ち、大江戸線のトイレでヒゲを剃って仕事へ。

どうやらガタがきていたらしく、家の鍵を失くしたことにも気づかないまま帰宅してしまいました。
(その後、どう解決したかはシークレットとしておきましょう)


29日(土) 名古屋

15時~17時に所用が入ってしまい、名古屋入りが最速でも19時過ぎとなることがわかっていたとはいえ、
なんだかとても慌しい一日でした。乗った・乗ろうとした電車すべてが運行遅延だったし。

駅構内を走りまくったけど、結局予定していた便には間に合わず名古屋入り。
地下鉄で栄へ。ホテルで着替えて(スーツでは行きたくない)会場までまた走りました。

これが思ったより遠くて参りました。下り坂だったのがせめてもの救いです。
やっとこさ着いたときにはもう20時を回っていて焦りましたけど、間に合っていました。


わたしが着いて10分後くらいに暗転、息もようやく整ってきたなか、ライブは始まりました。


この日は大阪とセットリストは同じでしたけど、
中5日という短い間にもかかわらず、さらにアレンジを変えた曲もありました。
Hiroさんがセッションで、ジョージ・リンチ専売特許のジャックオフ・ヴィブラートを3,4回、
挟みこんでいたのがとても印象的でした。あんなの絶対できない、って言ってたのに。

前回の名古屋公演同様、やはりモッシュピットが今回もできました。首謀者も同じ。
感心できないのは、最前にいた方の服を掴んで横に吹っ飛ばしたこと。あれは酷いです。
ちょうど肩胛骨の上あたり、首に近いところを掴んでいたのが尚更いけません。息が詰まってしまいます。
あの手の暴れ方がライブのデフォルトだと思っているひとが(残念なことに)増えつづけていますけど、
まわりの人間を巻きこむのがおかしいことくらい、考える以前にわかるだろうと思うのですが・・・。
(それがわかる人間ならあんな暴れ方はしない、ということもまた、わかってはいます。)

それはそうとこの日も、毎度のように凄まじいライブで大満足でした。


一夜明けて翌日(昨日とも言う)、ちょっとだけ名古屋散歩をしました。
栄を南下して大須の方へ向かったのですけど、寒いし曇りだし、ちょっと観光気分にはなれませんでした。

なんとなく、萬松寺へ。信長が建てた菩提寺ですね。


すぐそばに民家が。


JR鶴舞駅から名古屋へ行こう、とそちらの方へ。途中、中古CD店や古本屋に立ち寄りつつ。
通りには古本屋がたくさんあって、習性でどうしても一軒一軒立ち寄ってしまいました。

堀田善衛『橋上幻像』蓮実重彦『[増補版]監督 小津安二郎』を購入。これで満足したので駅へ。
公園散策は寒いし雲行きが怪しいのでやめて、すぐに来た電車に飛び乗りました。そしたら晴れました。

名古屋から7分遅れた新幹線に乗って、帰京。くたくたかと思いきや、案外フツーだったのですよ。



これで、遠征はしばらくありません。


そんなこんなで、実は17日(月)から今日31日(月)に至るまで、一日フルで休めていません。
HPPワンマン千秋楽の4日(金)まで、走りっぱなしです。そのせいか、体にガタがきてます。

長時間バスに乗ったせいか、左足の一部に軽微な痺れがあるし、口内炎みたいな歯肉炎(?)も治らないし、
風邪で倒れていたとき痛めた腰も、全快しないままだったのが名古屋遠征でまた悪化してしまいました。

なんかもうボロボロですが、もういい年なので仕方ないとあきらめてます。
鼻毛も白いのを月イチで抜いてますし、白髪も出てきたし。でも、この腰はイカンなぁ・・・。


  

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