2011-02-19

Rouse Garden at Zher The Zoo on 12th Feb & New Mini Album

 
Rouse Garden(ラウズ・ガーデン)をご紹介しよう。


Rouse Garden 2010

高嶋優(b) 永高義従(g) はるか(vo) 仲沢拓(dr)



去年のBURRN!4月号で前田さんが「今月のオススメ」に取り上げていたので、
それとなく目にしたジャケや名前を覚えている方もいるかと思う。

「Live Diary 2010」でも書いたとおり、わたしは去年7回ほどラウズを観ている。
場所は代々木のZher the Zoo(ざーざずー)が6回、渋谷Take Off 7が1回。

夏にはベーシストとドラマーが突然脱退して驚いたが、その後すぐに適任者が加入し、
それまでのラウズ以上にいい雰囲気で活動をつづけ、先日、新作リリースのレコ発ライヴを行った。

今後の活躍を応援したいということもあって、ライヴレポと新作の紹介をしたい。



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初めて知ったのは、実は前田さんと同じ日に、同じ場所で、同じ人物から、だった。


ときは2010年2月12日金曜日、奇しくもレコ発ライヴ当日の、ちょうど1年前である。

HEAD PHONES PRESIDENTTHE AGONISTと共演した代官山ユニット公演の終演後、
会場前の坂道で寒さに震えながら、昨年末の池袋ブラックホール公演以来の再会を喜んでいた。

わたしはといえば、その池袋でやっとこさHPPメンバーやそのファンの方々とお話をすることができた、
言わば「新参者」として、はじっこにちんまりと佇んでいたのがほとんどだったはずである。
(ライヴ自体は2005年から観ているけど、「出待ち」を敢行したのは2009年10月が初めてだった)

そのなかのひとりが前田さんにラウズのCDを手渡し、翌月のB!誌「オススメ」に登場となるのだが、
そのとき「あしたラウズガーデンを観に長野へ行く」と聞いて驚いたことが聴くきっかけとなった。

当時(というほどむかしではないが、隔世の感があるのは事実)は、
ライヴのため「遠征」をする、などという発想はありえなかった。

そこまでひとを動かす力があるのなら、きっと素晴らしい音楽をしているに違いないと思った。
それに、その方とは音楽的嗜好/志向も似ていると感じていた。よって躊躇せず聴くこととなったのだった。


初めて聴いたときの感想はマイスペにあげているのだが、いま振り返ると不備が多くてリンクを貼れない。
以後のライヴ観戦、アルバムの聴き込み、メンバーとの会話などでやっと輪郭が掴めてきた気がするくらいだ。
そこで、簡単なレヴューをしてみた。アマゾンに置いといたので、そちらを参照してほしい。



1st Mini 『追憶の庭』(2007)             2nd Full 『不器用な愛』(2008)


簡単に言えば、90年代以降のオルタナ/UKロック影響下にあるサウンドに、
日本的な情緒・情念を感じさせるヴォーカルがのる、という音楽性のロックをやっている。

ラウズには、おもにポジティヴな「白ラウズ」とネガティヴな「黒ラウズ」の両輪がある。
これは、「白はるか」「黒はるか」と言い換えてもいい。バンドの核は彼女の世界観だからだ。

痛みに敏感だからこそ示すことのできる、わずかに哀しみを帯びた優しさ、温かさを湛えた、
坂本真綾を思わせる「明るい、かわいい、知的な」音像が「白」で、
(ちなみに、声も似ている。初めて聴いたとき、真っ先にその名が思い浮かんだ)

明るくなりきれない感情的なわだかまりや、仄暗い衝動をチラつかせる言葉づかいなど、
鬼束ちひろCoccoを思わせる「暗い、重い、神経症的な」音像が「黒」だ。

「白」が「読書好きな少女」で、「黒」が「恋愛依存症の少女」、というイメージがある。

いずれの場合も、その共通点は「無垢で、美しく、そして儚い」に還元されるだろう。
(もちろんその中間領域もあるのだけど、今回はこの二分法でご容赦願いたい)



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それでは、ライヴレポートからお届けする。


先週の土曜に行われたライヴは、樹海との初の共同企画「evergreen」だった。
tokageヒルノツキを迎えてのダブル・ヘッダーで、場所はもちろんZher The Zooだ。


開場時間に間に合うよう着くはずが、所用に気を取られすぎてチケットを忘れ、
うちまで取りに帰っている間にライヴは始まってしまっていた。

19:45ごろ、やっと会場に着くとヒルノツキが演奏中。
驚いてはいけないのだが、会場には多くのひとが詰めかけていて移動も難しいほど。

少々変わった構造のライヴハウスなので、奥にまで行くとスペースがあった。

ヒルノツキは最後の曲を演奏していたようだ。
アコースティカルな男女デュオで、機会があればじっくり鑑賞したいと思った。
オーディエンスからもあたたかい拍手が送られる。遅刻が悔やまれた。


もう少しステージ近くに場所を変え、初めて観る樹海の登場を待つ。
不覚にもわたしは知らなかったのだけど、アニメや映画のタイアップなどで知名度は低くないらしい。

大勢のファンが最前列に陣取っていた。奥で背伸びをしているひとも見受けられた。
集客のよさは、単に「三連休の真ん中」というだけではなかったようだと悟る。

ラウズにとってはチャンスだが、果たして彼らが残ってくれるかどうか、と余計な心配をしていると暗転、
出羽さん(g,key)と愛未(まなみ)さん(vo)が出てくる。(ベース、ドラムはサポートなので割愛)


たしか8曲40分弱、といったセットだったと思う。
90年代のJ-POP全盛時を思わせる良質な歌メロを、確かな歌唱力で歌う姿がとても印象的だった。

ラウズが対バンするバンドは歌のうまい女性ヴォーカルを擁したバンド/ユニットが多いのだけど、
樹海はそのなかでもさらにアタマひとつふたつ抜けていた。メジャーで活動できるのも頷ける。

一方で、ロックバンドとは違うものも感じていた。
ユニットだから、というわけではない、もっと根本的な「核」に関わることだと感じた。
(それと音楽的なクオリティ云々に関係はない。「違う」というだけだ。念のため。)


危惧したほどには客の数は減らなかったが、それでも2割近くは減ってしまった。残念なことである。

わたし(と、B!誌の前田さん)にラウズを教えてくれた当人が、ようやく到着。
樹海の後半4曲は観れたとのこと。ゲスト2人を待っていて遅れたのだった。


進行は20分以上押していて、新しいSEに導かれてメンバーが登場したのは21:15くらいだったか。
マイクスタンドには蝶の飾りがついていて、ライティングをうけて花のようにも見える。


つばのないミリタリー調?の帽子を被ったはるかさんが出てきて、"新世界"でライヴは始まった。
1stミニの"daisy"の系統にある、明るいアップテンポの「白ラウズ」な新曲である。

ギターソロの間に帽子を振り払うように落として、帽子は以後その場に鎮座していた。

この曲を初めて観たのはいつだっただろう。メモを見ても当時はタイトル不明で、判然としない。
それでも、12月10日(金)のTake Off 7でやっていたことは確かだ。
単なる新曲ではなく、「新しいラウズ」の曲だと、そのとき思った。

夏のリズム隊脱退には心底驚いたものだった。バンド解体の可能性すらあった。
その難局を乗り切り新たなメンバーを迎えたラウズは、以前よりも「楽しそう」に見えることが多い。
そうした人間関係がいいかたちで曲に反映されたことを感じ、「新しいラウズ」と思ったのだった。


その「新しいラウズ」の"スロウスリープ"はしかし、白とも黒ともつかない淡さが魅力の新曲だ。
傷めた翼をそっと広げていくような、優しくも痛みの伴ったサビのメロディ展開がじつに素晴らしい。

これは11月18日(木)のZher the Zooがたぶん初演で、そのときから個人的にフェイヴァリットである。
この日も、サビで鳥肌が立った。感情表現豊かな歌唱、バンドの音楽への集中力も、一線を画す。


軽快でポップな"Honey"が久々にプレイされる。

のっけから楽しそうな高嶋さん(b)と拓さん(dr)だったが、その演奏の安定感に改めて感心する。
本当にいい人選だったと思う。「核」たるはるかさんのよき理解者、というのは難題だったはずだ。
前任者が悪かったわけではないが、彼らはラウズを「新しいラウズ」にするだけのものを持っていたのだ。


「100年前はみんなここにはいなくて、それで100年後はみんなここには絶対いないわけで。」
「でもいまは、みんなここにいて。」

というMCを挟んで、新曲の"呼吸"に。

これも11月が初演だったと思う。無垢な問いと現実的な認識が交差する「白ラウズ」だ。
「ひとの生き死に」を優しく明るく歌うため、かえって涙腺にくる曲となっている。


つぎは長いMCとなった。話は、電車内ではるかさんが見た光景に始まる。

「優先席のところでケータイをしているお兄さんがいて、こどもがお母さんに質問してるの。」
「《ねえ、どうしてケータイしていいの?》って。お母さんは、でも注意まではできなくて。」
「《いいの、放っときなさい》みたいな誤魔化しかたしてて、まあしょうがないかな、って。」
「ウソついたほうが、ラクってゆうか、丸くコトが収まることもあるし、その方が多いかも。」
「でもそれって、やっぱりなんだかイヤで・・・。そうゆうことを考えながら書いた曲です。」

今回はイントロとして、セッション的なインストにはるかさんのスキャットが絡む、
という短い「つなぎ」からのメドレー形式でプレイされ、より劇的な展開が演出されていた。


"僕の神さま"は確かに「そうゆうこと」を扱った曲だが、かなり前からある曲だ。

わたしが初めてラウズを観た3月15日(月)にもやっている。しかし、曲調はまったく違っていた。
以前は現ヴァージョンほど「トゲ」がなかった。もっと穏やかだった、とさえ言える。
それが激変したのは、新体制となって最初のライヴである9月14日(火)からだった。
初めは新曲だと思った。後から言われて気づいたのだ。それほどアレンジを変えていた。
(訂正。7月28日の、前ラインナップ最後のライヴから新アレンジになった。)

ラウズのなかでは「激しい」部類に入る曲だが、ライヴだとそこに込められた想いのため、
歌詞にあるような、こどもが抱く倫理的な葛藤を含んである種の「重さ」が生まれる。
(もしくは、倫理的な葛藤は「こども」において最適な表象を得る、とも言えよう。)


さらに、同じく「激しめ」な"COUNTDOWN"がつづき、
「人間って、生まれてくるときに泣いているけど、生まれてくるのが悲しいから。」
「生まれたときから死に向かっているけど、悲しいけど、だけど生きているから。」

というMCで、新曲の"かなしみの国"が、永高さんの印象的なギターに導かれ始まった。

わたしが初めて観たのは7月28日(水)だけど、たしか6月からやっていたのではなかったか。
この曲はそれほど大きなアレンジ変更はなかったが、プレイされるたびにその濃度を高めていった。

いまでは、ラストを飾るに相応しいスケール感を備えた曲にまで「成長」したと思う。
コード感を活かしたソロに長けている永高さんのギターが、いつものように素晴らしい。

あたたかい拍手に送られてステージを後にするメンバーたち。


アンコールでは、「今日は特別なんだから、なんかしゃべって」と拓さんにマイクを渡すはるかさん。
(いや、これはほかのところ、たとえば最後の曲の前だったかもしれない。でもここにしておこう)

手元に用意していた新作を宣伝する拓さんにつづいて、ライヴ告知を命令される高嶋さん。
なぜか永高さんはスルーして、「今日は特別だから、もうひとり呼んじゃいます」と言い、
樹海の愛未さんも出てきてのかるいトーク。


最後は、「白ラウズ」の"ゆりかご"だった。
愛未さんと交互に歌い分けるかたちとなっていて、サビではハーモニーを聴かせてくれた。

アットホームな雰囲気につつまれ、共同企画「evergreen」は無事に終了。
早くも次回の開催を期待したくなった。


SETLIST
1. 新世界
2. スロウスリープ
3. Honey
4. 呼吸
5. 僕の神さま
6. COUNTDOWN
7. かなしみの国
Encore
8. ゆりかご w/ 愛未 (樹海)



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ライヴ終了後、3rd Mini Albumそこにあるひかり を購入するため列ができていた。



列が途切れるまでしばらく待ってから、わたしも購入。
ヴァレンタイン・デイ直前ということで、CDといっしょにチョコもいただいた。
(メンバーによるデコが施されているところが、いかにもラウズらしい)


いつもはかなり遅くまでメンバーの方々と談笑してから帰るのだけど、
ひとも多いし、ゲスト2人もいるので、比較的早めに会場を後にした。


落ち着く間もなくすぐに聴きだした。曲目は以下の通り。


そこにあるひかり (2011)
1. 新世界
2. スロウスリープ
3. 呼吸
4. 僕の神さま
5. かなしみの国


ライヴ版に慣れすぎていたため、多少の違和感があるのは仕方ないところ。

曲についてはライヴレポでお届けした通り。

なお、この新作に収録されなかった曲でタイトルがわかっている曲は、
"風花"、"真夜中"、"燃える空"、"暮れゆく空"、"この瞬間"の5曲。


レーベル関係で色々あったようで、ディストリビューションがおそらく弱くなっている。
新作を購入するにはライヴ会場に来るか、オフィシャルHPから通販で買うしかないようだ。


このブログをみて購入を決意される方がいるとも思えないが(アクセス数という分母が小さすぎるので)、
少しでも興味を持ったら是非とも聴いてもらいたい。


そして、聴けばすぐに思うはずだ。「なんでインディーズで活動しているの?」と。


もちろん、そういったインディーズのバンド/アーティストはいくらでもいるだろう。
この場合、わたしが単にラウズの音楽を気に入り、好きになって、応援したくなっただけのことだ。


彼らの素晴らしい音楽が、より多くのひとに届くことを願ってやまない。


Rouse Garden official
http://rousegarden.com/top/


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追記。

この日のライヴの模様は、BURRN!4月号にも取り上げられた。
前田さんの「今月のオススメ」(P.107)に掲載されている。手元にあるひとは改めてチェックしてほしい。

なお、文中にある「ゲスト2人」のうちひとりは前田さんである。あとひとりは、B!誌で確認されたし。


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