2012-01-30

HPP's 3 New Songs

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HEAD PHONES PRESIDENT(以下HPP)の2012年初ライブを観に、名古屋に行ってきた。


HPPについては、これまで何度も何度もライブレポを書いてきた。
ネタ切れというわけではないけど、今回はレポ的なものではなく、
来るべき新作への思いとともに、3つの新曲について書いておきたい。

が、その前に1月27日のセットリストとメモくらいはあげておこう。


HEAD PHONES PRESIDENT
at Apollo Theater on 27th Jan 2012


SET LIST
01. Nowhere
02. Desecrate
03. Labyrinth
04. Light to Die
05. (new song 2)
06. (new song 3)
07. (new song 1)
08. ill-treat
09. Endless Line
10. Sixoneight
Encore
11. Chain


実は、終演後にセットリストを見せてもらったのだけど、新曲3だけはタイトルがあった。
ただ、まだ仮タイトルかもしれないので公表はしないことにした。

あと、セットリストには毎回"I'll-treat"とあって、illではないのかと首をひねるのだけど、
3rd DVDのDELIRIUM のチャプターでもI'llとなっていたので、もしかしてこれが正式?
と混乱するのだったが、それはいまのところどうでもいい。以下、短くメモを。


これは12月の仙台公演やMarz公演でも同様だったのだけど、「Anza語」に日本語が加わったのだ。
要するに、「何を言っているのかはっきりわかる言葉」をステージ上で発するようになったのである。
いや、2005年まではそうしていたのではなかったか。むかし、観た覚えがかすかにある…。

特筆しておくべきは"Endless Line"だろう。かなり様変わりしていた。
漸進的な変化はすでに経ていたのだが、今回は明確な違いがあった。
オリジナルよりも繊細な表現が強調され、前半は別の曲のようだった。

また、ライブにおいては曲間にセッション的な演奏がなされるのが常であるとはいえ、
新作のレコーディング中ということもあってか、聴き慣れないフレーズが出るたびに、
すわ「未知の新曲か?」とこころがはやったことをも、ここに残しておこう。

Hiroさんの、静けさの中で微細に音が震えるタッピングがわたしはとても好きなのだけど、
これは新曲のイントロではないのか、と緊張しながらその短いセッションに見入ったのだった。


それと、新作がリリースされると、おそらくこのセットリストも激変するだろうなと、
一抹の寂しさと、それに大きく勝る期待とが入り混じった思いをもって観てもいた。

"Labyrinth"はここ4年ほどセットリストから外れていないはずなのだが、
LOUD PARK 08以降は冒頭にHiroさんのソロがついたヴァージョンとなり、
驚くべきことにそのまま3年以上経って、今日に至っているのである。

HPPにとって転換点となった曲のひとつであろう"Labyrinth"も、
そろそろお役御免となるかもしれないと、ふとそう思ったのだ。

"I will Stay"がセットリストのラストから外れたとき、HPPの意志/意思を感じた。
それと同じことが、近いうちにふたたびあるだろう、そう予感したわけだ。

こうした「定番」の組み替えは、長年同じバンドを観つづけているひとはわかるだろうけど、
バンドが新たな領域に突入していったという喜びと、新セットの新鮮さを得ると同時に、
いまや過去形となったセットに曰く言い難い哀惜の念を覚えるものだ。


そんなふうにして、ライブ中は未来の哀しみと喜びを先取りしていたのだったが、
メモはこれくらいにしておいて、現時点で判明している新曲について書いてみよう。



すでに書いてあることだが、新曲の登場順に1、2、3と便宜的に名付けている。

1は2010年12月17日(金)の水戸公演が初演。DELIRIUMで見ることができる。
2は2011年7月18日(月祝)の名古屋公演が、3は2011年8月20日(日)の大阪公演が初演。


新作のレコーディングは前後半に分けて進めていることがブログなどから窺える。
Anzaさん曰く「音がもの凄くエグイ」とのことだが、この3曲は正にそんな音だ。

メタルの音作りは、切れ味の鋭い刃や地を轟かす重戦車や岩石を砕く重機など、
まさに「メタル」な鋼鉄関係の言葉やイメージに喩えられることがとても多いし、
古典的なハードロックや、メタルとは一味もふた味も違うヘヴィロックなどは、
「ロック」の名の通り岩石などの自然物(風水火土のエレメントでもいい)や、
鋭利なメタルとは対極の「鈍器」のイメージなどが用いられることが多い。


今回のHPPの「エグイ」音作りは、いずれにも当て嵌まり、かつ当て嵌まらない。

リフの切れ味は鋭いけど、その音にはずっしりとした量感がある。
重機が巌を砕くようにも、岩石が重戦車を潰すようにも喩えられそうだ。

音自体は「粗い」粒子が目に見えるようなささくれかたをしているのだけど、
メタルにおける「軍隊を思わせる規律ないし秩序」的な終始反復されるリフと違って、
より隙間のある(その点、ヘヴィロック的な)リフという(微小にして極大の)差異のため、
精錬された「メタル=鋼鉄」よりは、その原石である鉱物や「ロック=岩石」に喩えたくなる。

ゴツゴツザラザラとした巌の表面を、針金の束で撫でているような音とでも言うか。
その太く重い音の束が、垂直ではなくやや傾いで壁のようにそそり立っているのだ。

Hiroさんは、パワーコードではなくちゃんとコードを押さえて弾いていることが多く、
そのため鳴らされる音が増え、ああした重厚な音の響きを獲得できているのだろう。
(カンのいいひとはVOIVODを思うかもしれない。確かに「音」は近いものがある。)


そんな「エグイ」音作りだが、新作の全編にわたって「そう」だとは思わない。
おそらく、セッション的な音空間で聴かれたような美しい音像もあるはずだ。


では、曲はどうだろう。何が変わり、何が継承され、どこへ向かっているのか。

3曲だけでは判断材料に乏しいが、「順当な発展的進化/深化」というよりは、
むしろ「暴力的な先祖返り」とでも言えそうな荒々しさ/原始性を感じている。

それと同時に、これはPobl Lliw (2010)に収録された"Reset"にも感じたことなのだけど、
近未来的なヴィジョン/イメージとでも言うか、スケール感の拡がりもまた感じていて、
上述した原始性との相反する印象を持ってしまうところが、HPPらしいと思っている。


その"Reset"に近いのは、一応、明るさを湛えてはいる新曲1だろう。
一応、というのは、どこか不穏な影が脳裏を霞めていくからである。

リフ自体は80年代的とさえ言えそうなほど明るいのに、歴然とした違いがある。
ソロもかなりトリッキーで、どうしたらあんなフレーズが出てくるのだろうと訝しく思う。


Hiroさんは、9月のソロ公演で示して見せたように、いくらでもメロディが書けるひとだ。
それなのに、HPPではそのメロディ・センスをほとんど封殺し、奇妙で狂ったソロを弾く。

もちろん、そこにはHiroさんだけでなくメンバーの方々のジャッジもあるのだろうが、
それにしたって、あそこまで調性から外れたソロばかり弾くひとも珍しいではないか。

試しにProdigium (2009)収録の"Cloudy Face"におけるソロを聴いてみるといい。
わたしたちが慣れ親しんでいる音階から遠く離れた、実にクレイジーなソロだ。
(ホールトーン・スケールだと、どこかの音楽誌で言っていた覚えがある。)


しかし、新曲のソロはさらに狂っている。名古屋公演ではさらにソロが増えていた。
新曲2で、とてつもない速度のフィルイン的なソロが2回ほど挟まれていたのだけど、
あまりの速さと「わけわからない」音の並びに度肝を抜かれて笑ってしまったほどだ。


少し話がズレるが、前回の投票日記で書いたように、今年はDEAD ENDも新作を出す。

このDEAD ENDのYou(足立祐二)さんの、シングル三部作におけるソロが凄まじい出来で、
来年はギタリストの座はYouさんになってしまうかもしれないな、と思っていたのだが、
さすがにHiroさんも別次元のソロを構築してきたぞ、と感嘆し興奮した次第である。

美しさ/流麗さ/滑らかさにおいてYouさんを超えるギタリストは世界的に見ても少ない。
もしくは、いない。それだけのレベルに達したことを、Youさんはギターだけで告げている。
その上、極めてトリッキーなソロにもなっているのだから恐ろしく、新作が待ち遠しい。

一方のHiroさんも、トリッキーでクレイジーであることにかけてはやはりトップクラスだ。
マティアス・エクルンドのようなファニーなそれではなく(そこがマティアスの美点だが)、
シリアスでヘヴィで哀しいHPPの捩れた世界観に沿い、かつそれを増幅するようなギター、
それを追い求めた結果がああした「メロディアスではない」ソロなのだろうと思っている。
(そして、いずれ「メロディアス」なソロが出てくるだろうと予想/期待している。)


さて、その新曲2は、観るたびに少しずつ変化のあった曲だ。

これまた重厚な「エグイ」音のリフと、哀しみが空に満ちてくるかの如きサビが印象的だ。
上述したようにソロも増強され、HPPならではの「美しいヘヴィロック」となっている。


新曲3も徐々に変わってきたが、初めて観たときの「気味が悪い」感触に変わりはない。
また、あの「気持ち悪さ」をなかなか言語化できないままで、どうにも説明しにくい。

Anzaさんによる「Anza語」に起因する言語認知的な違和感に拠るところも大きいし、
痙攣的なステージングを観ていることから「気持ち悪さ」が増幅されてもいるのだが、
曲の構成/進行がそもそもおかしい/わけわからないものであるのが最大の特質だろう。

前回のMarzでのライブではNarumiさんによるドローン調のベースから始まって(?)いたけど、
今回はふつうにリフからのスタートに戻っていた。音源ではどうなっているのだろうか。


ここまで、ギターのことばかり書いてきたようだけど、
最近のライブではNarumiさんとBatchさんのプレイを観ていることが多い。
ただ、ベースやドラムについて書くことはなかなか難しく、課題となったままである。



あっちに行ったりこっちに来たりと、ふらふら落ち着きのない文章になってしまい申し訳ない。
このままでは締まりがあまりになさすぎるので、少し新作への期待を綴って終わりにしよう。


HPPは、毎回こちらの予想も期待も上回るものを作り上げてきたから、新作の出来に不安はない。

名古屋公演のあと、少しだけメンバーの方々とお話する機会があったのだけど、
Anzaさんは「150%自信がある」とまで言い切っていたのだから、尚更である。


最近、Crap Head (2001)やid (2002)など初期作を聴くことが多いのは、
ああいったヘヴィロック的感触を新曲に得ていることによる。

そうしてHPPの作品を振り返ると、1stのVary (2003)が浮いて見えるのはわたしだけだろうか。
いや、それなら2ndのfolie a deux (2007)もその他の作品とは何か違いはしないか。
それならば、3rdとなる新作も「何か違う」ものになるのではないか。
そんな風に思いながら、新作を待ち侘びている。


もちろん、アルバムタイトルやアートワーク、まだ見ぬ曲名などもとても気になっている。
それらは、決して適当なものであってはいけない。その重要さは中身と拮抗し得るほどだ。

というのも、まずはタイトルやアートワークなどが「アイコン」として機能するのであって、
それが示すものが豊かだったり鮮烈だったり謎めいていたりすることによって、
その作品へのイメージ(ときに偏見)が脳裏に懐胎するからである。

似たような曲名や、長くて覚えにくい曲名が多い、というのはマイナスだし、
作品の文字通り「顔」となるアートワークがダメでは目も当てられない。

まあ、これまた心配など一切していないので、単に楽しみにしているだけなのだが。



やはり、どうにも締まりが悪いものとなってしまった。

今回はこの程度の戯言で我慢しておき、退散するとしよう。


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2012-01-15

壬辰睦月投票日記

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早いもので、もう毎年恒例のBURRN!読者人気投票の時期となりました。

去年もここにあげたブログに書いた通り、(今年は葉書の写真撮るの忘れてしまった…。)
わたしは基本的に「ひとつの枠につき1バンドからひとりだけ」という原則を採用しています。

でも、それが崩れた(崩した)のは去年書いた通りで、今年も似たようなものになってます。

要するに、今年もHEAD PHONES PRESIDENTとそのメンバーに票を固めて入れました。
1995年から毎年投票しているのですけど、そこまで応援したくなったバンドはHPPだけです。

ただ、そうすると選から漏れてしまうバンド/ひと/作品が大量に出てしまいます。
HPP以外に言及しておきたい彼らのために、このブログは書かれているとも言えましょう。

各部門で選んだ方を「チャンピオン」とし、その他に10~15くらい、
選外となった方々の名前を順不同でつらつらとあげていくつもりです。
ただし、「B!誌で取り扱うジャンルの範囲内」という大原則の下で、ですが。


それでは、早速書いていきます。


GROUP / HEAD PHONES PRESIDENT



これまで散々書いてきたことですが、2011年はHPPにとって試練の年でした。

Marさん(g)脱退の衝撃を乗り越え、初のワンマン・ツアーを完遂したことは、
まるで自分のことのようにうれしかったし、最終公演は不思議な感動がありました。

また、そのライブのDVD化の際に、録音ができていないというトラブルすら起こりました。
それらすべてと向き合いつつ、DVDの制作や新作の曲作りと並行してライブを行い、
いずれの公演においても毎度のように熾烈なパフォーマンスを繰り広げてくれました。

新作の発表を控えた今年は、さらなる試練の年となりましょう。
わたしはただただ作品を聴き込み、ライブに足を運ぶのみです。


他に票を投じたかったバンドは、以下のバンドです。

『Road Salt』二部作を完成させるも、長年連れ添ったメンバーがふたり脱退してしまい、
その活動履歴に「一区切り」が(残念なことに)ついてしまったPAIN OF SALVATION
(またしてもB!誌のインタビューがなかった、という…。正直、かなり失望しました…。)
人間関係としてのバンド、それがあってこその音楽、というものを感じさせてくれた、
ライブにおいて終始一貫とした「いい雰囲気」を振りまいていたMR.BIG、DEF LEPPARD
解散宣言をしてもなお、素晴らしいライブ(日本最終公演…)をみせてくれたCATHEDRAL
ロック・スターと言って差し支えのない存在感を放っていたMORBID ANGEL、などです。



VOCALIST / Anza (HEAD PHONES PRESIDENT)



HPPでの活動もさることながら5月のソロ公演も素晴らしく、他に考えられませんでした。

今年はとくに、その歌唱に深い情愛を感じずにはいられない場面が多かったです。
それは個人的資質のあらわれであり、同時に表現したいことのひとつでもある。
そう思った次第です。あと、ステージでの表情が増えたのもよかったと思います。

あくまで私見ですが、彼女ほど読み解くべき「因数」の多いヴォーカリストは稀です。
あらゆる領域にわたって論考されて然るべき存在であることもまた、魅力のひとつです。


他に票を投じたかったヴォーカリストは、以下の通りです。

この怪しさ大爆発キャラも観納めか、としみじみさせられたリー・ドリアン(CATHEDRAL)、
ライブで観てあらためてその声に惚れ惚れとさせられたエリック・マーティン(MR.BIG)、
なんだ、まだまだ歌えるじゃないか、と感心させられたスティーヴ・ウォルシュ(KANSAS)、
なんだ、まだまだ歌えるじゃないか、と見なおしたジョー・エリオット(DEF LEPPARD)、
なんだ、まだなんとか痩せられるんじゃないか、と見なおしたチノ・モレノ(DEFTONES)、
おお、デス声もクリーン・ヴォイスも完璧だ、と感嘆したトミ・ヨーツセン(AMORPHIS)、
おお、なんと美しいデス声か、と感嘆したデイヴィッド・ヴィンセント(MORBID ANGEL)、
MCでは声がガラガラだったのに、歌うと問題がなく感心させられた下山武徳(SABER TIGER)、
歌が、言葉が、それ自体が「生き様」として刻まれているのだと思わされた森重樹一
一挙手一動足、存在様式すべてが別世界に属するMorrie(DEAD END, Creature Creature)
などが、ライブで観て感銘を受けたヴォーカリストたちです。順不同。でもベスト10。

音源だけ、というのなら、
怒りや哀しみから愛や祈りへと表現内容がシフトしたジェシー・リーチ(TIMES OF GRACE)、
歌唱における表現力の深みが更に増したダニエル・ギルデンロウ(PAIN OF SALVATION)、
崖っぷちのバンドを救ったと言っても過言ではないステュウ・ブロック(ICED EARTH)、
驚嘆すべき表現力を持ち、パフォーマンスも興味深いダラー・サダース(FAIR TO MIDLAND)、
流石としか言いようのなかった貫録の歌唱を聴かせたD.C.クーパー(ROYAL HUNT)、などです。



GUITARIST / Hiro (HEAD PHONES PRESIDENT)


HPPでの活動のほか、Anzaさんのソロ公演、そして自身のソロ公演において、
いずれも素晴らしい/凄まじいギターを聴かせ/魅せてくれました。

書く書くと言ったまま放置してしまっているソロ公演で聴くことのできた曲は、
大雑把に「アメリカン」と言ってしまっていいような曲調ではあったのですけど、
西海岸というよりは東海岸、もっと言えばニューヨーク的なものを感じました。

多国籍/無国籍な非アメリカ的な場所としてのニューヨーク、という点において、
とりあえず「アメリカン」と言ってしまえる、という程度の「アメリカン」なのです。
(わかるかな?いや、これじゃあムリか。ヴァイが近い…と思うのだけど。)

2012年もまたソロ公演が観たいし、それに何よりソロ・アルバムが聴きたい。
そのメロディ・センスとタガの外れたアレンジ能力が存分に活かされることでしょう。


次点はYouさん(DEAD END)でした。けっこう、いや、かなり迷わされました。
8月に観たライブと、10月に見たストリーミング中継で、その個性に驚嘆しました。

それはもちろん、アルバムの時点でわかっていたことだったのですけど、
完璧なトーン・コントロールとあまりに素晴らしいソロの展開には参りました。

2012年はDEAD ENDも新作を出します。HPPも出します。
来年は今年以上に、HiroさんとYouさんの間で迷うことになるでしょう。


他に票を投じたかったギタリストは、以下の通りです。順不同です。

さすが伝説の「100万ドルのギタリスト」と唸らされたジョニー・ウィンター御大、
これぞギター・ヒーロー、と快哉をあげたトレイ・アザトース閣下(MORBID ANGEL)、
過小評価されてる!と憤慨しそうになったほどよかったフィル・コリン(DEF LEPPARD)、
あんたやっぱり天才だよ、と言いたくなったヴィヴィアン・キャンベル(DEF LEPPARD)、
エレクトリックギターの生音の良さを教えてくれたアンディ・パウエル(WISHBONE ASH)、
刻みもリードも世界トップ・クラスと言わざるを得ないハリー先輩&大谷先輩(UNITED)、
あらゆる面でツイン・ギターの強みを体現していた木下昭仁&田中康治(SABER TIGER)、
素晴らしいメロディを紡いでくれたエサ・ホロパイネン(AMORPHIS)、などです。

音源だけ、というのなら、
あんたみたいなギタリストは二度と出てこないよ、と思わされたロリー・ギャラガー
どうしてこんな素晴らしい曲を遺して逝ってしまったんだ、と嘆いたゲイリー・ムーア
毎度のようにそのギターサウンドだけで幻想境へ誘ってくれるスティーヴ・ハケット師、
よくぞ困難を乗り越えた、と感心したジョン・ペトルーシ(DREAM THEATER)、などです。



BASSIST / Narumi (HEAD PHONES PRESIDENT)


去年の1月に、金沢でのライブを観たときからこの枠は決めていました。

すでに何度も書いているように、Narumiさんの演奏パートはかなり変化しました。
それを(わたしのような古株にさえ)一切の違和感なしに聴かせることができ、
その上、そこから先に拡がるHPPの新たな音楽的地平を感じさせてくれました。

来るべき新作においても、そのベースは決定的な存在感を放っているはずです。
また、ステージにおいて異質なパフォーマンスを「自然に」してしまうその資質が、
わたしなどには考えもつかない「なにか」を開花させるのでは、とも期待しています。


他に票を投じたかったベーシストは、以下の通りです。音源だけ、も含めて。

このひとは本当にOne & Onlyなんだ、と心底感激させられたビリー・シーン(MR.BIG)、
音作りも特異ながらフレージングも非常に個性的なGeorgeさん(JURASSIC JADE)、
強烈な存在感と個性的なベースラインに感銘を受けたCrazy"Cool"Joe(DEAD END)、
華やかでスター性のあるステージングをみせてくれたリック・サヴェージ(DEF LEPPARD)、
「三本弦ベース」なる新兵器のクリアでタイトなサウンドに驚かされた横さん(UNITED)、
クリアな音像の中、溌剌としたプレイを聴かせてくれたジョン・マイアング(DREAM THEATER)、
個性的なベーシストであることを再認識させられたデイヴィッド・エレフソン(MEGADETH)、
幅広い音楽的素養に裏打ちされた技術とセンスが冴えるエディ・ジャクソン(QUEENSRŸCHE)、
などです。



DRUMMER / Batch (HEAD PHONES PRESIDENT)


観るたびに思うのですけど、Batchさんほどのヘヴィ・ヒッターはそうそういません。
それでいて、囁くようなドラミングもこなすところに他にはない個性があります。

元々、HM/HR界隈はパワフルなドラミングを身上とするドラマーはとても多いのですが、
実は、90年代以降のヘヴィ・ロック・バンドのドラマーもそれに劣らぬどころか勝るほどの、
とてつもない「ぶったたき」ドラムを聴かせる猛者が多いのです。しかも、すごく巧い。

代表的なのは元KORNの化け物、デイヴィッド・シルヴェリアでしょう。(引退したまま…?)
あちこちのバンドに偏在するロイ・マヨルガ、MACHINE HEADの太鼓坊主デイヴ・マクレイン、
元AMEN、現GODSMACKのシャノン・ラーキン、TOOLの太鼓巨人ダニー・ケアリーなど、
枚挙にいとまがないほどです。というか、巧くないと潰れてしまうのかもしれません。
もしくは、潰れなかったものだけが巧くなれる、のでしょうか?茨の道に違いありませんが。

その点、Batchさんは順当かつ正統なヘヴィ・ロック・ドラマーなのですけど、
パーカッション的な静かで細やかなドラミングができる(というか求められる)点が、
ほかのドラマーたちとの最大の違いであり、今後さらに強みとなっていくところでしょう。


次点はエイブ・カニンガム(DEFTONES)でした。
彼もまた、ヘヴィ・ロック・ドラマーの典型にして頂点にいるドラマーです。
なんとも言えないしなやかなグルーヴを醸すことのできる不思議なドラマーです。

派手な技巧的プレイはありませんが、彼のドラミングにDEFTONESがどれだけ支えられているか、
2月のライブを観ていてしみじみと噛みしめたものでした。独特なグルーヴが心地よかったです。


他に票を投じたかったドラマーは、以下の通りです。音源だけ、も含みます。

やっぱりこのひとは何でも叩けるんだ、と感銘を受けたパット・トーピー(MR.BIG)、
ハードロック的なパワー感とプログレの技巧を併せ持ったフィル・イハート(KANSAS)、
もっとも称賛されてしかるべきドラマー、向日葵が似あうリック・アレン(DEF LEPPARD)、
ユーモアを交えた超絶技巧に笑うしかなかったマルコ・ミンネマン(THE ARISTORATS)、
長丁場をものともしない、パワフルなショットがひと際冴えていたAkiraさん(UNITED)、
パワフルかつグルーヴィーな孤高の太鼓坊主、デイヴ・マクレイン(MACHINE HEAD)、
多彩な「歌う」ドラミングを身上とするスコット・ロッケンフィールド(QUEENSRŸCHE)、などです。

繊細を極めた表現豊かなプレイに感動するほかなかったスティーヴ・ガッド(Kate Bush)も、
2011年でもっとも素晴らしいドラミングを聴かせてくれたので、畑違いでもその名を出しておきます。



KEYBOARDS PLAYER / Fredrik Hermansson (ex-PAIN OF SALVATON)



原則として「ライブで観たプレイヤーのなかから選ぶ」のが投票の常なのですけど、
とうとう脱退に至ってしまったフレドリック・ヘルマンソンに感謝を込めて一票です。
(フレデリック/ハーマンソンなどの表記もあった気がするけど、これで通します。)

わたしは長年、まだ見ぬ強豪としてPAIN OF SALVATIONの来日を待ち侘びていましたが、
とうとう、わたしがよく知るメンバーは中心人物のダニエルだけになってしまいました。

孤高の鍵盤坊主、フレドリックは地味ながらもセンスの光るプレイで作品の質を高め、
POSのコンセプト/世界観をより豊かに、より深くすることにずっと貢献していました。

どうやら「情熱を失って」しまったらしく、脱退に至ったようです。残念でなりません…。


他に票を投じたかったキーボード・プレイヤーもいるのですが、
ここはフレドリックにその場を譲ってもらうことにしましょう…。



LIVE PERFORMANCE IN JAPAN / DEF LEPPARD



毎年思うのですけど、「来日アーティスト」とあるのが引っ掛かってなりません。
それじゃあ、国内バンドのライブが最高だったらどうしたらいいのだ?と思うわけです。

ただ、国内バンドに入れて「死に票」になっても嫌なので、いつも国外バンドに入れてます。

すでにブログに長々と書いてあるので、今更どうこう言いません。素晴らしいライブでした。

他に、DEFTONESCATHEDRALMR.BIGKANSAS(チッタ公演)、MORBID ANGELも素晴らしく、
どれにしたらいいか迷いもありましたけど、貫録勝ちのDEF LEPPARDと相成りました。


BEST ALBUM / Road Salt Two (PAIN OF SALVATION)



すでに2011年の作品から25作品を選んでいて、メタル編でも10作ほどあげました。
ただ、ベスト3は決まっていて、ツイッターではその名をあげてもいました。
(いっさい反応のなかったのが、かなしいというか情けないというか…。)

でも、ここではその順位を変えました。POSへの手向け、とでも言いましょうか。
アルバムについてはすでに書いてありますから、とくにここでは言葉を連ねません。


BEST TUNE / "Musical Chair" (FAIR TO MIDLAND)


徹底してアルバム単位で聴くため、ここは毎回テキトーに選んでいます。

2011年もたくさんのPVをネット上で見ましたけど、これがいちばん好き、
というただそれだけの理由で選んでみました。このブログに貼ってます。



BEST SONGWRITER / Adam Dutkiewicz (TIMES OF GRACE)



ここもまた毎年悩みどころなのですが、今年はパッと思いついたこの人にしました。
TIMES OF GRACEは基本的に彼のソロ作だったし、アルバムも素晴らしい出来でした。



BRIGHTEST HOPE / FAIR TO MIDLAND

(しかしまあ、なんちゅうルックスかましたアー写であることか…。)

まったく迷いがありませんでした。今年は彼らしか考えられなかったです。

ただ、いくら日本デビューとは言ってもすでにキャリアのあるバンドなので、
その点、去年のBIGELF同様に「選外」とすべきでは、と思いましたけど、
彼らに感じた「なにか大きなもの」のため、一票を投じた次第です。



BEST ALBUM COVER / The Beginnings Of Times (AMORPHIS)



とくになにも思い浮かばなかったので、これにしました。

わたしは「メタルメタルした」ジャケにも愛着はあるけど、
アートワークとして好きかと訊かれたら、そうでもないのです。

レコードゆえ「選外」にしたけど、いちばん惹かれたのはこれでした。


The Vinyl Collection (DEFTONES)



ハッとさせるものがあり、同時にそのバンド/作品の世界観が反映されていて、
さらに、その音楽への想像力を掻き立てる、それがアートワークの本懐でしょう。
そう考えると、DEFTONESはさすがでした。見習っていただきたいものです・・・。



BEST DVD / DELIRIUM (HEAD PHONES PRESIDENT)



これまたすでに書いているので、今更くどくどと書くのはやめにします。
ロックバンドのライブDVDの在り方を考えさせられる作品となりました。


SHINING STAR / Anza (HEAD PHONES PRESIDENT)



なにも書く必要を感じません。



PLEASURE / MR.BIGの震災直後における来日公演



あのタイミングにも関わらず長期の来日公演を行ったMR.BIGへの敬意と感謝は、
すでにライブレポのなかに書いたつもりですので、そちらを参照してください。

うれしいニュースはいくつもあったけど、ここはMR.BIGにありがとうと言いたいです。


BORE / DIR EN GREYのWacken Open Airにおけるパフォーマンス


去年も書いた通り、わたしはこの枠で訃報や解散/脱退などは選びません。
それはわたしにはどうしようもないことなのだとあきらめるしかないのだから。

それで、なにかおもしろいことを書こうとしたのだけど何も思い浮かばず、
じゃあ「PAIN OF SALVATIONのインタビューがまたなかったこと」にしようか、
と思ったのだけど、そんな当てつけをするのもいかがなものかと立ち止まり、
結局、もっともガッカリさせられたもののひとつである、これにしたのでした。


もちろんわたしはヴァッケンになど行ってなくて、これはストリーミング配信されてた、
現地ライブの生中継(いや、録画したものの放送、だったかも)のことです。

日本時間は深夜2時前後で、いまかいまかと待ち侘びた挙句に目にしたのが、
彼らの散々たるパフォーマンスだった、というわけなのでした・・・。

わたしはディルのライブに何度も足を運んでいるので、とても歯痒かったです。
本当はこんなものじゃないんだ、もっと凄いバンドなんだ、誤解なんだ、と…。

でも、曲間になるたびに観客に背を向けチューニングしたり水を飲んだり、
肝心のステージングもほとんど動かずプレイにも熱の籠ったものを感じず、
また京のヴォーカルも不調で、観客がどんどん減っていく様を見ていたら、
さすがにわたしも弁護する気を失ってしまい、冷(醒)めてしまいました。

メンバーたちもかなり落ち込んだようで、京がツイッターで謝罪していたほどでした。
その後の欧州ツアーは軒並み好調だったようですけど、あの配信は痛かったと思います。

期待していただけに困惑しました。でも、元々ライブに「波」があるそうです。
わたしはたまたま、調子のいいときばかり観ていただけだったのかもしれない。
そして、多くのファンが熱狂状態のため、曲間の「間」に気づいてなかった…。

わたしはいまだに彼らのファンですが、あれから一線を引くようになってしまい、
新作にも左程入れ込めず、ライブにも行かず(これはチケットが取れなかっただけか)、
『Uroboros』のリマスター盤にも手を出す気になれず、今日に至っているのでした。

そんなこんなで、わたしのディル熱を再燃させてくれる「なにか」を待っている昨今です。


2012-01-01

Music 2011 pt.2 - my best METAL & another 5

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それでは、メタル系ベスト10をつらつらとあげていきます。
10選に漏れた次点数作についても、ついでに書いてみます。
なお、順番は適当です。最後にプラス5枚もあげます。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


2011年は、このアルバムで幕を開けた、という思いがことのほか強いです。



TIMES OF GRACE / The Hymn Of A Broken Man

KILLSWITCH ENGAGEのアダム・デュトキェヴィッチのプロジェクトで、
バンド名はNEUROSISの1999年の名盤と同じ、TIMES OF GRACEです。
元KsEのヴォーカリスト、ジェシー・リーチと組んだことが話題になりました。

それもそのはず、あの名盤 Alive, Or Just Breathing (2002)以来のタッグでした。
わたしも『Alive~』は相当聴きました。あれが、メタルコア浮上の最大の契機でした。
それだけの作品だったし、以後、あれを超える同系統の作品はほとんどありません。

本作は、そうしたメタルコア成分が年季を経た音楽的成熟度によって多少減退し、
よりオーガニックでエモーショナルな、そして「慈愛に満ちた」ものとなりました。
歌われる内容も、「怒りや悲しみ」から「祈りや愛」へとシフトしています。

ある種、気恥ずかしいまでの「青さ」を持った感動作、と言えます。(揶揄ではなくて。)
でも、その倫理性に説得力と切実さを感じます。メロディ派にも聴いてもらいたいですね。


次の作品に参りましょう。北欧ものを、3点ほど。



BAD HABIT / Atomosphere

スウェーデンのメロディアス・ハードの雄、BAD HABITの6thアルバムです。

今年はメロディアス・ハード勢の秀作が目立ちました。これはレーベルの頑張りでしょう。
TEN、THE POODLES、LIONVILLE、WORK OF ART、GRAND ILLUSION、
SHADOWMAN、OUTLOUD、HOUSE OF LORDS、KIMBALL/JAMISON、
THE MAGNIFICENTと、バンドもプロジェクトもとても質が高かったです。

基本的に、音楽性の定まっているこの音楽では、冒険的なことはあまりできません。
だからこそ、定型を極限まで煮詰め、いかに質を高めるかに焦点が絞られるのです。
その点、本作に勝るものはいくつかありました。帝王JOURNEYの新作すらありました。

並みいる強豪のなか本作を選んだのは、ヨナス・レインゴールドによる音作りのためです。
他の作品はほとんど標準的な音作りで、言うならば「ハードなAOR」と呼べそうなもの。

一方、こちらは現代的な力強さと鋭さがあり、かつ煌びやかさ/華やかさがあります。
そこがとても新鮮でした。作品自体、復帰作となった4th以降でベストの出来です。
ただ、ヴォーカルに好みが分かれるかもしれません。傑作3rdでは気にならないんだけど…。




AMORPHIS / The Beginning Of Times

フィンランドのAMORPHISは、トミ・ヨーツセンが加入してから絶好調で外れなしです。
その記録をさらに伸ばしました。ここまでハイレベルをキープしているバンドは稀です。
ARCH ENEMYCHILDREN OF BODOMも健闘したけど、このクオリティは敵わない。

70年代ハードロックやプログレの咀嚼力が高く、そこに民族性を塗す手法も発展してます。
さらに、デス・メタル時代の凶暴性もうまいことブレンドしていて、脱帽するしかないです。

個人的に前作が大好きだったので、そちらほどには聴き込まなかったのですけど、
あらためて聴き返すたびに感嘆します。(ただ、デス色は少なめでいい気もします。)

歌詞も素晴らしく、知的なSFファンタジーが好きな方にも聴いてもらいたいですね。
(ジーン・ウルフやジョン・クロウリーのファンに受けそうなのですけど…?)




PAIN OF SALVATION / Road Salt Two

スウェーデンの元プログレ・メタル・バンド、PAIN OF SALVATIONの8thアルバムです。

かつてはDREAM THEATER型プログレ・メタルでしたけど、すでに独自路線を切り開いていて、
毎回コンセプト作を発表している通り、本作も前年のRoad Salt One の続篇という体裁です。

この『Road Salt』二部作はストーリー・アルバムというわけではないようなのですけど、
映画で言うなら「グランド・ホテル形式」の、群像劇的な構成となっているようです。
(残念ながらBURRN!誌がOneもTwoもインタビューなしだったため、詳細が…ああ。)

前作が山や森を思わせたのに対して、本作は海や岸辺といったものを想起させられます。

郷愁を誘う民謡調の旋律や、ジャジーと言うよりはR&B的なギターなどを取り入れつつ、
前作で提示した「70年代的なオーガニックな質感のロック」という新機軸を進化させ、
かつ、ダニエル・ギルデンロウ一流の感情表現豊かなヴォーカルに磨きをかけています。

世界でもっとも個性的なバンドのひとつだと信じて疑わないわたしですが、
残念ながら、長年連れ添った「筋肉ギタリスト」(?)のヨハン・ハルグレンと、
「孤高の鍵盤坊主」フレドリック・ヘルマンソンの脱退が決定したようです。

こんなことなら、海外までライブを観に行くんだった…。残念すぎて鬱になりそうです。
とっつきにくいバンドですけど、この二部作は聴きやすいので是非聴いてほしいです。



過去のヴォーカリストが復帰して素晴らしい作品を届けてくれたバンドを紹介します。
ひとつは賛否両論の作品、もうひとつはだれもが諸手を挙げて歓迎した作品です。




MORBID ANGEL / Illud Divinum Insanus

原初のデス・メタル・バンドの一角、フロリダのMORBID ANGELの8thアルバムです。

ヴォーカルにデイヴィッド・ヴィンセントが復帰しての新作は、賛否両論となりました。
どうやら「否」の方が多かったようで、世界中のデスメタラー諸氏の怒りを買いました。

でも、生粋のブルータル・デス系が苦手なわたしにとって、本作はとても聴きやすく、
「キャッチーなヘヴィ・ロック」と言えそうなほどのノリの良さ(!!)が気に入りました。

もっとも「これぞ帝王」なブルータル極まりない邪知暴虐ナンバーも健在で、
正統派メタルを独自に解釈し再構成するその手腕には感心させられます。

それと、はっきり歌詞を聞き取れるデイヴィッドのヴォーカルも特筆ものです。
ここまで声を歪ませながら「歌える」強靭な喉に驚嘆します。美しいデス声とはこのこと。
トレイ・アザトース閣下のわけわからないフラッシーなギターも魔闘気全開ですし、
ヘルプのドラマー、ティムもピート・サンドヴァル不在という大穴を埋めています。

スラッシュ/デス/ブラック方面に特化した方よりも、そうでない方に聴いていただきたい。
アメリカのヘヴィ・ロック勢が好きな方は、本作が気に入る可能性大だと思うのですが…?
(9月末の来日公演も素晴らしく、いずれどこかに書いておきたいです。)




ROYAL HUNT / Show Me How To Live

デンマークの様式美ハードロック・バンド、ROYAL HUNTの11thアルバムです。

アメリカ人ヴォーカリストのD.C.クーパーが12年ぶりに復帰したこの新作は、
彼が在籍時の音楽性にその後の各自の成長を刻みこんだ、理想的な「再結成」作でした。

ロブ脱退後のJUDAS PRIESTが新ヴォーカリストのオーディションをしていたとき、
その最終選考に残っていたことからも窺えるように、D.C.の歌唱力はズバ抜けてます。
ロウ~ミドル~ハイのコンビネーションは強力で、衰えないどころか深みが加わりました。

近年の成果を反映して7曲43分となってますけど、曲は長くてもキャッチーで聴きやすいし、
なにより、D.C.の歌が秀逸で、クラシック・バレエのような豪奢な音楽性がより映えます。

ある意味「西洋歌舞伎」とも言えそうな大仰さではあるけど、彼らはどこか垢抜けていて、
その洗練されたアレンジ能力も相まって、今年最高のハードロック作になったと思います。
5月の来日公演が決まりました。D.C.のヒーロー戦隊的パフォーマンスが、再び…。)



国内勢は例年になく活発だった気がします。ベテランから新人まで、とても精力的でした。

LOUDNESS、EARTHSHAKER、ANTHEMが新作を発表し、DEAD ENDも三ヶ月連続リリース中です。
VOLCANO、DEFILED、CONCERTO MOONなど中堅(もうベテランかな?)も体制を整えました。

彼らのように、コンスタントに活動することの困難さを知り尽くしているバンドが、
後続を活気づけてくれることは素晴らしいことなのですが、ファンに世代の壁があります。

新生DEAD ENDはその壁を克服しつつありますが、日本人にとって「世代」は大きな壁です。
ここで日本人の心性における社会学的講義をする余裕はないのだけど、どうにかならないかな。


この世代だと、わたしにはSABER TIGERの新作『Dicisive』がもっとも印象的でした。超攻撃的かつテクニカル/メカニカルなリフと、猛々しく雄々しいヴォーカル。そして、「看板」と言うべきメロディアスなギターソロとハーモニーも強力。

ただ、もう少し「引き」の部分が、「怒」だけでなく「哀」が欲しかったです。わたしはその「哀」の部分に強く惹かれていたので、ちょっと疲れちゃったのでした。



Versailles、lynch.、MERRY、NoGoD、the GazettEなど、所謂「ヴィジュアル系」にこそ、
良質で現代的なHR/HMは求められる、という意見も徐々に増えてきたように思います。
DELUHIの解散は残念でした。作品発表も中途半端だった。音楽はよかったのに。)

やり方は違えど、確かに彼らの音楽にはメタルの要素が多く「まんまメタル」なのもあります。
残念なことに、メタル系リスナーはそれを歓迎していないようです。理由は様々でしょう。

もっと虚心に聴いてほしい、とバンド側も思っているのでしょうけど、
V系ではないバンド側の反発も根強いようで、なかなか難しい問題です。


この界隈では、今年最大の作品はDIR EN GREY『DUM SPIRO SPERO』でしょう。とうにV系から遠く離れたディルです。2010年のLOUD PARKも好評だったようだし。
元々、かなりクセのある楽曲展開を施すバンドでしたが、本作でそれは頂点を迎えました。
それが、わたしにはちょっと着いていけなかった。奇を衒いすぎでは、と思ったのです。当人たちにそのつもりないかもしれないけど、本当に楽曲が「その展開」を求めたのか?そう思う場面が多かった気がします。
作品自体は、とても個性的で完成度の高いものでした。


まあ、この作品を聴く前に、ヴァッケンでの彼らの醜態をネット生中継で見て、
冷めてしまったことにも一因はあるのかもしれません。また聴いてみます。


Pay money To my Pain、CROSSFAITH、coldrain、TRIBAL CHAIRなど、
ヘヴィ・ロック~スクリーモ~メタルコアなどを横断するバンドも増えました。

わたしはメタルコア的な音楽に批判的なので、彼らの音楽にもそれほど入れ込めません。
それでも、日本的(歌謡曲的)歌メロや、海外の同系バンドに並ぶライブパフォーマンスなど、
見るべき/聴くべきところがあることは大いに認めますし、実際彼らには力があります。
でも、国内ならともかく世界という枠で考えると、決定的な個性に欠けると思うのです…。


女性をフロントマンに立てただけでなく、全員女性からなるバンドもかなり増えました。
「嬢メタル」という言葉はもはや定着してしまったようですけど、音楽を示していないし、
それに「嬢」にはどこか蔑称に近い嘲りや軽視といったニュアンスを含んでいる気がします。

ですからわたしはその言葉は使いませんが、ムーヴメントとしての「女性中心バンド」は、
耳目を引くものとして暫く取り沙汰されることは間違いなく多いのでは、と思いました。

Aldiousがその筆頭でしょう。玄人界隈ではTEARS OF TRAGEDYの評価が高かったようです。
春に2ndを発表したLIV MOONも前作から進歩し、早くも今月に新作が控えているのだとか。
LIGHT BRINGERのメジャー移籍も話題となりました。これまた新作は今月リリースですね。


他に、特記すべきバンド群としてSUM RIZE、LIGHTNING、DRAGON GUARDIANをあげておきます。

いずれもギタリストのKoutaさんが関わっているバンドないしプロジェクトで、
メロディアスかつテクニカルなギターと、情熱的なヴォーカルが売りの正統派メタルです。

SUM RIZEはこれからのバンドだったのに、もう活動休止になってしまって残念です。
やや似た曲が多かったかもしれないけど曲の質は高く、次作を期待していたのですが…。
LIGHTNINGは再録盤、パリ公演、新ヴォーカルを迎えての新作と、大忙しでした。
Iron/Kouta両ギタリストの違いも魅力ですが、新体制となったまさにこれからのバンドです。
DRAGON GUARDIANだけは、まだ未聴です。でも、今回も素晴らしい仕上がりだとか。


この系統では、GALNERYUSの人気が決定的となった年だったように感じました。

小野正利さんが加入されてからそれまで以上に右肩上がりの景気のよさでしたけど、
新作『Phoenix Rising』の評価もよく、多くのファンのかたの呟きを見た覚えがあります。

ただ、曲は素晴らしいと思ったものの、英語に違和感がありました。わたしだけなのでしょうか?
文法や発音がおかしいというよりは、英語らしい「リズム」が失われているように感じたのです。

日本語で歌うべきメロディを、英語で歌っているというか…。英語なのに、日本語に聞こえるというか…。
日本語のパートはまったく問題なかったので、むしろ全編日本語詞にしてほしかったです。
といっても、そんなことを気にする人間は稀でしょうから、あれはあれでいいのだと思います。
実際、曲の完成度は高く、歌唱も演奏も申し分ない出来です。さらに人気が出ることでしょう。


さて、ここを「日本人枠」にするつもりではなかったのだけど、そうなってしまいました。
わたしはとくに「洋楽至上主義者」ではありません。そもそも「主義」を持てない人間です。
たまたま、今年は10選に国内バンドがひとつだけだったまでのことです。他意は御座いません。

今年、もっとも凄みのある作品でわたしを圧倒してくれたのは、これでした。



UNITED / Tear Of Illusions

新ヴォーカルにクウェート人のKen-Shinを迎えたUNITEDの9thアルバムです。
結成は1981年にまで遡ります。オリジナル・メンバーはすでにいません。

去る12月2日(金)に、結成30周年を祝うライブがO-Westでありました。
歴代メンバーを交えてのステージを観ながら、現編成の凄まじさに感じ入りました。

その音楽性は基本的にスラッシュ・メタルです。それ以外の何ものでもないとさえ言えます。
でも、90年代後半のヘヴィ・ロック的なそれや、2000年代初頭以降の同時代的な質感から、
そう一概に「スラッシュ」とも言えない、密度の高いヘヴィ・ミュージックとなっています。

常に「現役バンド」であり、そのためにあらゆる同時代的な音を呑み込んできたため、
パッと聴く分にはスラッシュだけど、よく聴くとプログレやヘヴィ・ロックなど、
メンバーの音楽的素養が透けて見えるようなものを感じる場面が多々あるのです。

それにしても、ハリー/大谷両先輩のギターには鳥肌が立ちます。世界屈指のレベルです。
これまでも絶え間なく成長してきましたけど、今後もそうでしょう。脱帽せざるを得ません。


それでは、残り3枚をつづけて紹介しましょう。順不同です。




Steve Hackett / Beyond The Shrouded Horizon

元GENESISのギタリスト、スティーヴ・ハケット御大の新作です。たぶん16thアルバム。

ハケット師は、2010年にライブを観てその音のあまりの美しさに感銘を受けました。
淡くも分厚いコーラスワークも素晴らしく、非の打ちどころがありませんでした。
ライブとほぼ同じ布陣で制作したのがよかったのか、本作も素晴らしいものとなってます。

彼は、何をやってもファンタジックになります。幻想派の巨匠と勝手に呼んでるほどです。
メロディアスであると同時にミステリアスな感触もあり、情景喚起的でありつつキャッチー。

前作以上に多くの楽曲を取り揃えてきました。(ホントは2枚組の輸入盤がお薦めです。)
ロック、プログレ、クラシック、ブルーズ、ワールドミュージック、なんでもござれ。

この瑞々しさ、そして柔軟な表現とアイディア量は、還暦を過ぎたギタリストとは思えません。
枯淡の境地には分け入らず、自身の幻想境にてきょうも悠々自適の活動をする…。敬服すべし。




ICED EARTH / Dystopia

新ヴォーカルにステュウ・ブロックを迎えた米国産メタル、ICED EARTHの10thアルバムです。

正直に言って、ティム"リッパー"オーウェンズ時代の彼らにはピンときませんでした。
Glorious Burden (2004)はよかったけどその後の作品がいまいちで、こころが離れました。
マット・バーロウが戻った前作も同様で、この新作にも期待していたわけではありません。

でも、これが素晴らしかったのです。ヴォーカルはマットにそっくりで、しかもさらに歌える。
ダークなアメコミ調の世界観をパワーメタル化した音楽性も、焦点が定まったのかブレません。
大作主義的な作風からもっとコンパクトなそれに戻ったことで、リフやソロがより活きています。
ところどころ、メロウな曲やパートが出てくるところも彼らならでは。久々の快作でした。

彼らは、来日公演を行ったことがありません。この新作を機に、是が非でもライブが観たいです。




FAIR TO MIDLAND / Arrows & Anchors

なんとも形容し難い米国産ヘヴィ・ロック・バンド、FAIR TO MIDLANDの4thアルバムです。

SYSTEM OF A DOWNのサージが運営するレーベルと契約したことで浮上してきたバンドで、
ヘヴィ・ロック、今風メタル、スクリーモ、民族音楽など、その音楽因数が多いバンドです。
歌詞も、寓話的/象徴的/抽象的なもので、要するに「なんだかヘンテコ」、なのでした。

ふたつ前のブログでビデオを貼ってあるのでそちらもご覧になってほしいのですけど、
一種独特なスケール感のあるバンドで、わたしはすぐさまその世界に引き込まれました。

とても豊かなバックグラウンドのあるメンバーなのでしょう。そして、どこか狂っている。
そうでなければ、こうも個性的な音にはなりません。いま、いちばんライブが観たいバンドです。


では、残りの次点作を、箇条書きでさらっと書いていきます。

QUEENSRŸCHE --- とても面白い。とくにリズム隊は必聴です。無名バンドなら応援したかも。
DEVIN TOWNSEND PROJECT --- 四部作その三と四。この四作を一枚に濃縮していたら…。
CHTHONIC --- 10選に入れたかったです。ラスト10秒が尻すぼみでもったいなさすぎる!
DREAM THEATER --- ブログに書いた通り秀作でした。でも、傑作が聴きたい。そうゆうことです。
OPETH --- デス声を封印しての一作。ミカエル流のプログレでしたが、それなら70年代のを聴く、と。
MASTODON --- コンパクトな作風になったら元々奇妙なヴォーカルが際立ってしまい違和感が。
MACHINE HEAD --- 前作の後篇的な。となると、前作が上かな、と。もちろん出来は素晴らしい。
MEGADETH --- これは「熱い」メガデスなのかな。冷やかなムードがもっと欲しかったのかも。

さらっとしすぎたかな。これにサーベルディルを入れて20選としてもよかったのですけどね。
少し捕捉すると、この内どれも作品の出来はわたしの10選と交換可能なものだったと思います。

まあ、QUEENSRŸCHEだけ「違う」かな…。クリスが抜けてから、歌メロ壊滅したままですから…。
でも、曲自体は面白かったです。CHTHONICMASTODONは最後まで悩んでから落としました。
デヴィンも、作品はよかったけど四部作すべてにどこか「水増し」パートがある感じがしまして。

PROTEST THE HERO、VICIOUS RUMORS、HELL、SEPTICFLESH、WISDOM、RIOT、
THE ANSWER、RIVAL SONS、SYMPHONY X、Neil ZAZAあたりもよかったけど、買ってなくて…。

そんなこんなのメタル系10選でした。触れてない作品が多くて恐縮ですが、こんなとこで。



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では、プラス5です。ここでは、選定の除外対象としていた①②③から選びます。
輸入盤、発掘盤/ライブ盤、ライブ盤、EP、DVDの五つです。これは外せなかった。

まず、輸入盤のこれから。しかもジャズです。



Ken Peplowski / In Search Of... [Jazz/Import]

ケン・ペプロフスキーはアメリカのクラリネット/テナーサックス奏者です。1959年生まれ。
契約上の都合なのか、ヴィーナス・レコード以外のものは国内盤が出ないようです。

金管楽器が苦手で、ジャズはあまり聴きません。むかしよりは聴けるようになりましたが。
ピアノものやギターものは聴くし(地味だけど)、少しずつだけど領域を拡大しています。

クラリネットの柔らかな音が好きで、これはその魅力がたっぷりと味わえる好盤です。
1~9、10~12で録音の編成が違うので、そこで趣きが変わります。前半が好きです。
上品に紡がれていく音はあたたかみがあって、のんびりした夜ふけに最適かと思います。




Rory Gallagher / Notes From San Francisco [Unreleased/Live]

ブログに散々とあれこれ書いたので、そちらを参照してください。
熱き血潮の故アイリッシュ、発掘音源とライブ盤の好企画です。




DEF LEPPARD / Mirror Ball [Live]

これまたライブレポであれこれと書きましたから、そちらを参照されたし。
あの素晴らしいライブのように素晴らしいライブ盤。新曲3曲もDVDもよい。




Rouse Garden / そこにあるひかり [EP]

Rouse Garden (ラウズ・ガーデン)の通算3作目となるミニアルバムです。
これまたブログで書きましたけど、念を押してここでも少しだけ。

わたしは基本的にコンポで音楽を聴いているのですけど、外出中はiPodで聴きます。
で、iTunesの再生回数だけで今年の音楽を測ると、ダントツでこのEPが一位でした。
これがもう圧倒的で、それだけ何回も聴いたのです。これからも聴いていくでしょう。

ただ、音源の入手には能動性が求められます。ここから注文しなければなりません。
いちばん簡単なのは、ライブに行って旧作もろとも三枚まとめて買うこと、ですね。
次回のライブは1月12日、代々木Zher The Zooです。お待ちしています。(←何者や)




HEAD PHONES PRESIDENT / DELIRIUM [DVD]

HEAD PHONES PRESIDENTの、3rd DVDです。2枚組となりました。
ブログには書いてないけど、アマゾンのレビューに言いたいことは書いてあります。

なんだかんだで、ライブDVDというものはそんなに何回も見るものではありません。正直な話。
でも、これは相当見ました。何回も見たくなるほど、ここにはいつものHPPが収められています。
ショット数が多く、撮り方も特異なので疲れるかと思いきや、むしろ浄化されているのです。

このライブが収録された日についてはライブレポも書きました。それも前後篇にわたって。
たしかに、不思議なカタルシスのあった日でした。その浄化の過程を、是非ご覧いただきたい。



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以上が、わたしの20選プラス5枚でした。いかがでしたでしょうか。

「作品の小粒化」が言われるようになって久しい昨今ですけど、
いい作品がなくなったのではなくて、その様相が変わってきたこともあるでしょう。

もちろん、わたしだって60年代~70年代の傑作群を前にしたらひれ伏してしまいます。
クラシック・ロックを聴いたあとで最近の作品を聴くと、その差に戦慄することさえあります。
どうしてこうなった。この豊かな(痩せた)音楽はなんだ。技術が進んでもセンスが衰えてどうする。

そう思うこともあります。むしろ、その方が多いかもしれない。

それでも、わたしは現代の音楽にも素晴らしいものがあるとわかっています。
DEFTONESのライブレポでも書きましたけど、そこはこちらが感度を「チューニング」して、
その作品の持ち味を最大限に味わうことができるようにしておかねばならないと思うのです。

そんなわたしが選んだ20選(+5)は、いずれも味わい深いものばかりだと自信をもってお薦めします。


長くなりました。これで終わりにします。





あ、そういやWITHIN TEMPTATIONANTHRAX陰陽座、聴いてねえや…。

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